Beton Bond 情報局

2014年11月 2日 (日)

再起動 その1

こんにちは,BetonBondⅢ世です。

初代Bondが筆を休めてから数年経過し,時代背景が大きく動きました。
これからはBetonBondⅢ世が,機会のある都度,本ブログで声を上げることにします。

さて, 「レディーミクストコンクリート」 に関連する JIS規格 が改正され, JIS A 5308 : 2014, JIS Q 1011 : 2014 となりました。
猶予期間が過ぎる,2014年9月20日には移行は完了されたと思います。

ここで,分野別認証指針 JIS Q 1011:2014 について再確認してみましょう。

Jisq1011_a31101_2

Jisa5308_51101

   表はクリックすると拡大します。 

なお,虎の巻欄として抜粋した生コンの規格である JIS A 5308 5.容積に関する規定 は,何ら改正されていません。
にもかかわらず,JIS Q 1011 A.3  製造工程の管理の改正は,多くの課題が発掘できるため順を追って記述したいと思います。

 

Ⅰ. JIS Q 1011 A.3 製造工程の管理

表A.3 『3.練混ぜ』 注(3) 4) の要約      製造工程の管理として,強度・スランプ・空気量等の品質試験を実施すると,その試験に要した試料の分だけコンクリートが減ります。

試験用試料採取分だけ減る 』  ことで, トラックアジテーター が 荷卸し地点に 到着したとき,積載容積が納入書記載量を下回る心配 (または可能性) がある場合は,対処せよと規定しています。

ちょっと待った ! 余った試料戻せばえーやん ! そう書いてあるやん。
おっしゃる通りです。
でも,強度試験用の供試体を作製した場合は,その分は残念ながら戻せません。

品質特性の各項目試験と必要な試料量を参考表Ⅰに示します。
(表中の青字部分は,戻すことができない試料量です)

                             参考表Ⅰ.   品質特性の各項目試験と必要な試料量
11101

   表はクリックすると拡大します。 

 

Ⅱ. 何故,今,このような基準が JIS Q 1011 で規定されたのか?     【背景の考察】

雪が深いエリアの経済産業局が実施する立入検査が,発端だと言われています。
そのエリアの生コン会社の 「社内規格」 は,『工程管理としてトラックアジテータから試料を採取した場合は,採取分だけ割増して製造する』  趣旨 の文章が入って (規定されて) いた とのことです。
当該エリアの生コン会社は,何故このような基準を 「社内規格」 に規定したのでしょうか?
どうも原因は,『生コン工場 品質管理ガイドブック』の初期版にあるようです。
このガイドブックは全国生コンクリート工業組合連合会が発行しています。
ガイドブック 平成4年版の P.204 に 『 3.4.4 サンプリングの重要性 』 の(3) に,運搬車からの生コン試料の採取に関して次の記述が確かに存在します。

41101

※1 JIS A 5308 : 2014 の条項ではありません。

表はクリックすると拡大します。 

このためか, そのエリアの 生コン会社だけでなく, 老舗の生コンJIS工場の 「社内規格」 にも同様の記述があったように記憶している という話をされた方もいました。
初代Bondから聞いたお話です。
初代は,師匠マスターO.A に工程試料採取の容積保障について伺ったことあったそうです。


Bond   『工程検査で試料採取するとその分容積が減りますが,わざわざ割増ししなくても 
       いいですね。』

O.A    『あのね。昔,K地区のJIS改正説明会の会場で同じような質問があったよ。
        工程検査は品質管理するための試験なんで,このような質問はナンセンスでしょ
        といった内容の回答があったように記憶しているよ。』 ※2

※2 おそらく平成4年頃の JIS改正説明会会場での質疑と思われます。
        内容を詳細に記憶している方は本ブログ (info@hirac.jp) まで情報を提供ねがいます。
(マスターO.Aがどんな方が興味のある方は同ブログの BetonBond情報局 道標シリーズを参照ください)

ところで, 工程管理用試料採取するトラックアジテータの生コン製造は, 採取試料分の割増しをおこなうと 「社内規格」 に書いてあるだけでしょ。
それが何で問題になったん?

そうです。 本件は 「社内規格」 に規定してあったことが問題になったのではありません。
当該エリアの一部の生コン会社は, 「社内規格」 に規定しているにもかかわらず,実際にこの割増しをおこなっていないことが,経済産業局の立入検査で発覚したのです。
前回の JIS A 5308 と JIS Q 1011 改正(2009年版)のトピックスは,コンクリート製造における材料計量値を一定期間保存しなければならなくなったことでした。
当該エリアの経済産業局は立入検査の際,工程管理用品質特性試験をおこなったアジテータの材料 計量記録を照査した模様です。
この結果,対象の生コン会社が, 実際には  「試料採取分の割増し」  を行っていなかったことが 判明しました。
JIS Q 1011(2009年版)は,工程管理用試験試料を採取した後のアジテータの容積については何も記述していません。
このため本件は,JIS違反ではなく 「社内規格」 違反(「社内規格」を遵守していなかった)として処理されたと伺っています。
さらに,工程管理用試料採取時 の 容積保障に関するこの問題 は,その地域のみに留まらず  JIS Q 1011(2014年版)に規定することで処置されました。

現在, レディーミクストコンクリート JISマーク表示認証 に関連する規格は, 皆さんお馴染みの JIS A 5308 と JIS Q 1011の 2つで特徴は以下の通りです。

1101

   表はクリックすると拡大します。 

ここで重要なのは, 生コン規格 JIS A 5308 は,私たちと係わりのある ZENNAMA (全国生コンク リート工業組合連合会) が原案を作成していますが,生コンの JISマーク表示認証に関する運用について定めた JIS Q 1011 は経済産業省(公) であるということです。

平成17年3月30日付けの令第6号  『日本工業規格への適合性の認証に関する省令』  により JIS認証業務は,公の経済産業局から民間に移管されました。
この現行制度下において経済産業局は,立入検査のみの担当となりましたが, JIS Q 1011 を整備する権利を有していますから注意しなければなりません。
JIS A 5308 と JIS Q 1011 の改正に関して,改正説明会で募集した質疑には, 前者については ZENNNAMA が, 後者については経済産業省が回答しています。
ZENNAMAは長年に渡り,加盟する傘下生コン会社に対して独自の基準による監査(全国生コンクリート工業組合統一監査)を実施し続けています。
私達は,いつかこの監査基準が JIS Q 1011 として運営されるようになる等,JIS表示認証運用の規格についても自ら決定できるよう,自律した業界を目指すべきではないでしょうか。

ここで少し休憩します。


次回は,容積を保証するための具体的な措置について語ろうと思います。
以上,バスクリン (ジャスミンの香り) の湯をこよなく愛するBondⅢ世でした。

See You Next, Soon !

2010年6月17日 (木)

『 道標 その3 』

ボンド。ベトン・ボンド。
初夏となり,いよいよ梅雨の到来です。
例年は蒸し暑い季節ですが,今年はまだ肌寒い日が多いため,何十年ぶり冷夏ではないかと密かに期待しています。

忘れてもいませんし,挫折もしていません。   Photo
工程の管理編の最終章です。
道標 その2 』 に引き続き,キーワードは “ 事業仕分 ” です。

この 『 道標シリーズ 』 は,優劣を紹介しているのではありません。
ただ,ボンドが好むのは マスター O.A の考え方ですから,こちらの方を褒めちぎるか のような表現が多くなっているかもしれません。

何を今更とおっしゃるかもしれませんが,O.A 及び M.K は共に大変優れたマスターです。

コンクリート技士試験は,こたえとして正解・不正解のどちらかしかありません。

しかし,“ シゴト(仕事) ” には正解がなく,あるいは一つではなく,ウマくいったかいかなかったかを問うことで判断されます。
このため,あのときウマくいった方法が,今回もウマくいくとは限りません。

この 「社内規格」 の作成方法に関するこれまでの内容から,
『 あれっ。俺んトコ,こんなこと書いてへんぞ !?
 この表現はウチの「社内規格」にはあるけどな ! 』
 等と感じた方がいらっしゃることと思います。
ここで良く考えてみてください。
その表現には,何か深い思慮や先人の智慧が隠れているかもしれません。

先人がご在籍の場合は,その理由をうかがってみては如何でしょうか?
えっ? もういない?

では,貴殿自身が想像して考えてください。
そして,今後どうするのかを決定してください。

それがウマくいくかどうかは,「サーベイランス,立入検査,統一監査」 を経て証明されます。
よく考え,要求事項への対応を検討するプロセスが,人員が少なくても負けない体制を作ることになります。

さて,本題に戻ります。

まずは,おなじみになりました!? 練混ぜ工程と運搬工程の組立説明図とパーツです。
表はクリックすると拡大します。 
Kikaku52  
ある県の統一監査のお話です。
それは,限定された地域のルールなのかもしれません。
『 海砂を使用する場合で塩化物量の測定頻度は,JIS Q 1011〔分野別認証指針〕で 1回/日と定められているから,毎日試験しなければならない 』

?????
・ ?  ・
 『 ! 』

ひょっとして,
海砂使用の場合のコンクリート中の塩化物含有量の測定頻度と勘違いしているのでは・・・ ?

JIS Q 1011 〔分野別認証指針〕 で,「原材料の管理」の 表A.2.1-「骨材の受入検査方法」 を見てください。
砂の塩化物量(NaCl として) の欄には,『W-a・b(3)(塩化物量の多い砂)』と記載されています。

さらに,JIS Q 1011を1頁めくって下さい。
表A.2.1(続き)のとなりには凡例(試験頻度)の説明があります。
『 W:1回以上/週』との記載があることから,塩化物量の多い砂=海砂の塩化物量は,受入検査として週1回測定が必要と判断できます。

組立説明図とパーツでは,「コンクリートの塩化物含有量」の検査頻度について,海砂の場合は1回/日としています。

これは,“ しょっぱさ ”  を計る検査ですが,食材 (海砂) そのものの味見は週1回であり,カレーライス (生コン) の味見は日1回なのです。

次は両マスターの比較です。 表はクリックすると拡大します。 Hikaku03 Hikaku04 Hikaku05  
マスター O.A 方式は,「社内規格」だけを眺めるとやや不恰好ですが,分野別認証指針と対比すると,これを意識して編成してあることが分かると思います。

マスター M.K 方式も,分野別認証指針をかなり意識しています。
しかし,分野別認証指針の工程名には存在しない “ 品質 ” を創作したり,限りなく “ 感覚 ” であり数値化できないワーカビリティの管理基準がある等,ボンドは個人的にうなずけないのです。

あくまでも個人的な見解ですが・・・。

JIS規格は最低の基準といわれています。
生コンは各材料を練り混ぜているだけという方もいますが,管理項目を数多く設定しても意図する状態に作り上げることが困難であり,均一な状態を得易くなるものではありません。

故に,行き過ぎの法律(「社内規格」)を整備するのではなく,JIS規格に定める最低限度の項目を管理するためのルールを設定するべきであると思います?

現在,神奈川県が再度,大揺れに揺れているようです。
例のM社が加入していた協同組合で,今度はB社という生コン会社がある期間に出荷したコンクリートで強度発現性に異変が発生しました。
大阪エリアでは,B社の強度異変の情報を受けたあるゼネコンが,各生コン工場に現状の報告を要求した模様です。
(要求内容:ロードセルの写真,プラント計量器静荷重検査記録の写し,圧縮強度について材齢7日強度と材齢28日強度の関係式など)

強度発現性の異変の原因や程度について,B社は公式に発表してないようですから真相は未だに不明です。

この問題については,真偽のほどは確かどうか判断できませんが,コンプロネットコンクリート技術者のネットコミュニティー で情報を確認できます。

B社の場合は,ロードセルがキーワードとなっているようです。

今年 4月,コンクリート納入書に配合表を記載しなければならなくなりました。
このシステムが運用されて 2ヶ月強。
以前は,呼び強度・スランプ・骨材の最大寸法・セメントの種類を明記していただけでした。
食品偽装等の社会背景から,製造の透明性を主眼として,配合表を記載しなければならないという新たな基準が追加され,少しも規制緩和にならない私たち生コン業界です。

「 道標シリーズ 」 を再度閲覧下さい。
製品の基準だけでなく,それをつくる過程についても,細かく 管理規定 が設定されていることが判ります。

『 2度あることは 3度ある』といいます。
M社やB社は,遠い国の出来事ではありません。

今こそ,レコンキスタ〔生コンの信頼回復活動〕です。
この活動を推進して,私達の内部に存在するM社やB社を克服しましょう。

最後に・・・。
最近,記事の執筆に時間がかかります。
特に「社内規格」シリーズとなって顕著となりました。
次は無いのか ? と思われる方がいらっしゃるかもしれません。A_rain
そこで予告です。
次回から 「設備」 の話をします。          
タイトルは “ 色鉛筆 ” です。
   
                   乞うご期待!!
                  by ベトン・ボンド

2010年4月11日 (日)

『 道標 その2 』

ボンド。ベトン・ボンド。
今年は桜が咲くのは,例年より遅かったように感じましたが,満開になり散りつつあります。

少し間延びしましたが,工程の管理の続きです。
今回も2人の 『マスターO.A と マスターM.K 』 の「社内規格」に対する思想を紹介しながら説明します。
 
さて,前回の 『 道標 その1 』 もそうでしたが,実はこの「道標」シリーズは共通のキーワードがあります。
そのキーワードは “事業仕分” です。

生コンJIS工場各社の製造工程の管理に関する 「社内規格」 を眺めると,規定事項,検査関係そして作業項目を混沌とした内容となっている場合があります。

JIS規格に適合するために「標準化しなければならない項目」と, Nikonmomo
生コン製造上「標準化すべき項目」があります。
「 品質管理」 において,JIS規格で規定する項目は,最低限遵守しなければなりません。
両マスターとも,このように解釈していました。   しかし,・・・   「社内規格」を作るうえでのアプローチが異なっていました。

マスター M.K は,JIS規格で規定する項目は最低限であるから,生コン製造上「標準化すべき項目」をすべて製造工程の管理として記載する「社内規格」を好みました。

一方,マスター O.A は,JIS規格で規定する項目は最低限であるから,「標準化しなければならない項目」だけは製造工程の管理に記載し,生コン製造上「標準化すべき項目」は,作業標準として他の章で規定する方法を好みました。

そうです。
マスター O.A は,JIS規格に適合するために「標準化しなければならない項目」と,生コン製造上「標準化すべき項目」を “事業仕分” したのです。

何を使って “事業仕分” したのか?
みなさん分かりますか・・・?
それは,これまで組立説明図として取り上げてきた 「JIS Q 1011」 です。

適合性評価-日本工業規格への適合性の認証-分野別認証指針 「JIS Q 1011」 は,模型を完成させるために導いてくれるための 「道標」 なのです。

では,材料計量に関する組立説明図とパーツの関係をご覧下さい。 クリックすると拡大します。

Kikaku51
 
『 あのさぁ~・・・。
 マスターの思想の違いを文字で言われてもわかれへんねんけど。
 絵で書いてくれへんか!』  ペルー・ボンド

そうですね。
では,つぎの “え” をご覧下さい。
まずは,前回の配合工程に関する “え” です。 表はクリックすると拡大します。 
Hikaku01  
 
次に材料計量に関する“え”です。   表はクリックすると拡大します。 
Hikaku02  
『 え~っ。
 マスター O.A の方がコトバ少ないやん。足れへんのちゃう !
 オペレーターは,計量器のゼロ点見てるし,
 材料計量値もオーバーしてへんかどうかも見てるやん。』   尼西の虎

では,組立説明図(JIS Q 1011〔分野別認証指針〕)をもう一度よく観ましょう。
「管理項目」として記載されているのは,計量方法・計量精度(動荷重)・計量値及び単位量の記録の 3つです。

計量器のゼロ点 や 計量値の確認は,生コンを製造する上では実施しなければなりませんが,工程の管理としてではありません。

マスター O.A は,JIS Q 1011 〔分野別認証指針〕に規定されていないが,生コン製造上必要なこの種の事項を 「製造作業標準」 と位置付けをして,「社内規格」で 「製造工程の管理」 を規定している箇所とは別の章で規定しています。

ここで,審査員になってみましょう。
審査員のシゴトは,JIS Q 1011 に規定する項目が,申請者の「社内規格」に規定されているかどうかとその規定に基づく記録の確認です。

“ 配合工程・計量配合の指示方法 ” などの規定しなければならない項目が他のページにあり, “ 材料計量・計量器ゼロ点確認 ” などの求められていない作業標準が入り交じって規定されている「社内規格」は,審査員にとって “大変見にくい” ものではないでしょうか。

何度経験しても,審査を受けるのは楽しくありません。
審査官に少しでも早くお引取り願うためにも,マスターO.A の思想を取り込むべきです。

このブログのトピックスで発信されているように,生コンJIS工場では 4月より新しい5つの規定が施行されています。
それらと注意事項を以下に示します。   表はクリックすると拡大します。
20100401  

この 5つのうち最も重要なのは,計量に関する記録の保存です。
これは,先に掲示した材料計量についての組立説明図とパーツでも赤字で書きました。

購入者から要求に関わらず,5年間はバッチ毎の計量記録を保存しなければなりません。
製造工場として要求される文書や記録といった書類は,いままで一部の部署によって記録・確認・処理されてきたように思います。

購入者の要求を受けた物件に関する提出書類は,提出前に技術課の方や試験担当者あるいは品質管理責任者が確認しました。

それでは,購入者から要求のない物件はどうでしょうか ?

出荷量が減少している昨今では,各生コン会社は,ギリギリの要員で運営しています。
今までのように,品質管理責任者や技術担当者だけで対応できる時代ではなくなっています。

特にこの計量記録の管理は,品質管理責任者や一部署である試験係だけで対応すべき項目ではありません。

JIS認証は,品質管理責任者や技術課に与えられたものではなく,「工場全体の責任」として,統一した認識の基礎で,要求する内容を維持することを求めています。
 
新しいシステムには,若い力で結束して立ち向かうことが必要です。

初夏のカゼを感じながら,   Sx
結束を象徴した「サザンクロス」旗を思い浮かべています。
記事をアップする速度は大変衰えましたが,3年目の春を迎えました。

                         by ベトン・ボンド

2010年2月 7日 (日)

『 道標 その1 』

すっかり年も明け,冬至も過ぎやや日が長くなったように感じる今日この頃です。
将来の展望が立たない私たちの業界ですが,静かにそして平和に1月が過ぎ去りました。
静かな月でしたが,ボンド自身は少し忙しく,このブログの執筆を怠けてしまいました。

さて,今回からは 「製造工程の管理」 についての社内規格編成方法について紹介します。
ボンドは, この 「製造工程の管理」 に関して,どのように社内標準化しているかが,生コンJIS工場の能力,すなわち規格を如何に解釈しているか等を推し量れる部分と思っています。

皆さん,出鼻をくじかれたことがありませんか?

199x年9月 オリンピック開催を数ヵ月後に控えたとある街,        201002071
残暑もおさまりおだやかな日の午後3時。

「 なんだよ ! これっ !? 全然だめじゃん。
   こりゃひどいな !
 ・・・ 作り直しだなっ」

りんごのようにシャリシャリした食感の桃を食べている最中,
突然,怒号が浴びせかけられました。

そうです。
この時,生コン工場がJISを取得できるように 「社内規格」 を作成する使命を帯びており,“良い社内規格” を作ろうと集中していた頃の出来事です。
 
ただし,ボンドは未熟だったためワープロ作業を行い,マスターO.A に指導を受けていました。
この頃,すでに 「原材料の管理」 に関する社内規格は完成していました。
この 「原材料の管理」 に関して,特にマスターから間違い等の指摘はとくにありませんでした。
内心,マスターの意に沿った内容であったことに喜んでいました。

ところが, 「製造工程の管理」 についてマスターの反応が全く反対でしたので驚くと同時に頭に血が上りました(笑 当時は若くてトンガっていたため)。
・・・その結果,「この部分は,何があっても絶対に変更しません! 」 と言い返したのを鮮明に記憶しています(若気の至りということでご理解下さい)。

“ 良い社内規格 ” とは何か ?
この問いの答えは一つではありません。
『造る側が使いやすい』,『造る側が分かりやすい』,『審査する側が分かりやすい』等々。
 
もちろん考え方のひとつに過ぎませんが,この当時から現在まで 『審査する側に分かりやすい』 内容ならば造る側にとっても分かりやすい 「社内規格」 になると信じています。
 
とにかく,マスターO.A は分野別認証指針(当時は個別審査事項)通りに作成する 「社内規格」 は,審査側から好まれるということを掴んでいました。201002072
定規に沿って線を引くように, 分野別認証指針 に基づいて標準化する
ということなんでしょうが,「製品の管理」や 「原材料の管理」 に比べて,
「製造工程の管理」 は複雑な形をした定規です。

ここで,いつものように組立説明図とパーツの関係を 表3-1 に示します。
「製造工程の管理」 もいくつかのパートに分けて数回にわたる説明となります。

表3-1.「製造工程の管理」〔配合〕   表はクリックすると拡大します。
Kikaku041

「製造工程の管理」 は工程名を 「配合」 と称する内容で幕を開けます。
特に表3-1 左側の組立説明図を見てください。

管理項目の中には,例えば,検査頻度,試験方法,判定基準及び不合格の処置を規定しなければならないもの(例 細骨材の粗粒率)とそうでないもの(計量配合の指示方法)が混在しています。
 
201002073 製品の管理 = 製品検査,原材料の管理 = 原材料受入検査とすると,
 工程の管理は工程検査というコトバが連想されます。
 「○○検査」 というコトバを聞くと,すぐに何か試験をしなければならないと
 思うのは,ボンドだけでしょうか ?
 例えば “細骨材の粗粒率” は,注に検査頻度〔1回以上/日〕や試験方法
 〔JISA1102又はこれに代わる合理的な方法〕が明確にされています。

一方, “現場配合(現在では,計量配合) の指示方法” は,注書きも特にないため,指示方法をどのようにすればよいかを各工場で決定し,それを 「社内規格」 で文書化しておけばよいことになります。
 
“製造工程の管理=工程管理である” との固定概念から,検査頻度,試験方法,判定基準及び不合格の処置ができない管理項目は無視して, 「社内規格」 をつくったため,マスターO.A から反感をかったのでした。

さて,ボンドにはもう一人M.K というマスターがおります。
当時,マスターM.K の方がマスターO.A より場数を踏んでいました。
マスターM.K は,当時のボンド同様,検査として規定しにくい管理項目は,別の頁に記載する 「社内規格」 を好みました。

つまり, 「社内規格」 は JIS A 5308や JIS Q 1011の内容がどこかに規定されていればよいのですから,その編成方法に正しいか間違いかはありません。
また,どちらが優れているかという問題でもありません。

コトバは悪いかもしれませんが, “よりマシなのは ? ” という観点で 「社内規格」 の編成を判断していきます。

マスターO.Aは,審査する側にとってより審査しやすい 「社内規格」 はどのようにしたらよいかという視点を持っていました。

審査する側は,やみくもに審査を行うわけではありません。
審査する側は,JIS工場の 「社内規格」 が JIS A 5308や JIS Q 1011 の内容を満足しているかどうかの調査をします。

皆さん,どのように考えますか ? 

モヤっとしている方も,しばらく,焦らずにお付き合いください。
マスターO.Aの描く 「社内規格」 は,審査する側とされる側の両者に配慮した,やさしい傑作品です。 皆さん,この傑作を 『 道標 』 シリーズ 「製造工程の管理」 でご堪能下さい。

「この部分は,何があっても絶対に変更しません ! 」 と言い返したものの,冷静に考えてみると,分かりやすい 「社内規格」 を目指す,マスターO.A の考え方は大変優れています。
このとき作り上げた思い出の 「社内規格」 の抜粋です。

Sample011
Sample021

===========================================================================================================

マスターO.A へ 〈懐かしい日を振り返り,横川の窯飯を思い出しました〉。
教えていただいたコトはすべて,
グループHiRACの方に,そしてこのブログを読んでいただいている方に伝えます。

201002074  

ほんとに年があっという間に明け,
春が近ずく気配がします。
花粉のいやな季節が到来です。
            by ベトン・ボンド

    <横川名物 “釜飯” です>

2009年12月25日 (金)

『 咖喱 〔その3〕 』

ボンド,ベトン・ボンド
引き続き  “ 骨材 ”  に関する 「社内規格編成」 のウンチクです。

===========================================================================================================

今回は,砂利と砂のお話です。
前回,骨材はカレーライスの米と申し上げました。
阪神地区では,古くは川砂利を使っていましたが,現在ではすっかり砕石が普及しています。
環境問題等から採取が出来なくなったのか,関西では砂利を使用している生コン会社は地方にしかありません。
米で例えるなら,玄米に該当します。   200912251

この “ 玄米 ” には, 山砂利 ・ 川砂利 ・ 海砂利 があるようですが,ボンド自身は “ 海砂利 ” にお目にかかったことがありません。
 
なお,砂利を標準化している生コン会社は,舗装コンクリートの曲げ強度は注意しなければなりません。
なぜなら,気が遠くなるくらい長時間にわたり河川等を流れて “ まるみ ” を帯びた砂利は,砕石に比べてモルタルとの付着が悪くなるからです。
 
旧JIS制度では,普通コンクリートに関して,製品試験が JIS A 5308 に適合していれば表示認定取得となり,もれなく舗装コンクリートもセットで付いてきました。

200912252 ところが, 新JIS制度 の場合 ,舗装コンクリートを
標準化するならば,舗装コンクリートの製品試験を
行って,JIS A 5308 に適合しなければなりません。

一般に,舗装コンクリートは普通コンクリートに比べて出荷頻度が高くありません。
このため, 砕石や砂利を使用しているかに依らず,舗装コンクリートの製造に慣れている生コン会社は多くありません。

そこで,新JISへの移行審査やサーベイランスを受審する際には,試作等を実施してフレッシュ性状や曲げ強度を十分に把握しなければなりません。
フレッシュ性状は,試作回数を重ねれば十分に把握することができ,よい生コンを造るコツを掴むことができます。
 
曲げ強度も同様に,試作回数を重ねれば強度発現性を把握できます。
ところが砂利を使用する場合,所要の曲げ強度が得られないことがあります。
水セメント比を小さくしても,付着強度の問題から曲げ強度値が改善しないことがあり,骨材を再選定しなければならないかもしれません。
何度もいいますが,砂利を使用する場合,舗装コンクリートの曲げ強度には,十分注意し,性状を把握しておかねばなりません。
 
海砂 ・ 山砂 ・ 川砂 ・ 陸砂 等を総称して,『 砂 』 とします。
このうち阪神地区では,現在,海砂と山砂が普及しています。
川砂は,中国福建省で採取された輸入川砂が一時普及しましたが,現在は廃れています。
 
えっ ?  はい ! 
「 社内規格 」 の作り方でしたね。

ここで,アルカリシリカ反応性について考えてみましょう。
前回の復習ですが,砕砂のアルカリシリカ反応性評価は,同一産地・同一製造業者であれば,砕石の試験結果で判定が可能でした。
その生コン工場では,同一産地,同一製造業者の 山砂利・山砂 を標準化しています。
砕砂と同様,山砂利のアルカリシリカ試験成績表で評価してもよいのでしょうか?

・・・残念ながら,山砂利の試験成績表で,山砂を評価することはできません。
なぜなら,山砂の生成過程は,砕砂と大きく異なるからです。
砕砂 は, 岩石を破砕機にかけて砕き, 砕石を製造するときに発生する細かい粒を, 粒度調整して製造されます。
一方の 山砂は, 色々な岩石が風雨にさらされて堆積したり, 地殻変動の影響を受けながら,気が遠くなるほどの恐らく数万年という膨大な時間を経て,現在使用している状態(粒度)になったものです。
つまり,天然骨材と称される砂利や砂は,粒度構成が異なると,岩種も異なると判断しなければなりません。
従って,天然骨材を使用する場合,同一産地・製造業者であっても種類毎にアルカリシリカ反応性試験を実施する(製造業者から試験表を入手)必要があります。
 
その他,天然骨材は,“ 粘土塊 ”・“ 塩化物量 ”・“ 密度1.95g/㎝3の液体浮く粒子 ”,“ 有機不純物 ” を試験しなければなりません。
なお,JIS Q 1011:2009 では,天然骨材の “ 密度1.95g/㎝3の液体浮く粒子 ” と “ 安定性 ” 試験の頻度が変更されました。
JIS Q 1011:2005 や個別審査事項の頃は,両試験とも試験頻度は 『 購入者の指示の都度 』 とされていました。
ところが現在は,12ヶ月に1回に変更されていますので,社内規格においても頻度を変更すると共に試験を実施しなければなりません。    
    200912253
組立説明図は,咖喱〔その2〕 表2 を,
骨材の受入検査方法は,
JIS Q 1011 表A-2-1 を参照して下さい。

 

表2-3.天然骨材の基準値等   表はクリックすると拡大します。

Kikaku0309
 
 
さて,コマを進めます。
骨材に関しては,組立説明図(JIS Q 1011)よりパーツ(JIS A 5308)に引っかかる箇所があります。
骨材を混合して使用する場合についての記述です。
まずは,『咖喱〔その2〕』表2. をご覧下さい。
 
関西では,骨材枯渇問題が深刻です。
瀬戸内海の海砂採取禁止,中国砂輸出禁止,・・・ etc
このため,複数骨材を混合して使用する生コン工場が多いです。
 
骨材を混合して使用する場合は,混合の仕方によって受入検査方法が異なります。
つまり,何と何を混合するのか,いつ混合するか,が重要になります。
混合の例を表2-4 に示します。
 
表2-4.骨材を混合して使用する場合の制約   表はクリックすると拡大します。

Kikaku0310

 
“ いつ混合するか ” についてです。
つまり,『 あらかじめ混合したもの 【骨材業者が混合したもの】 を購入する 』 か,『 コンクリート製造時別々に計量する【別々に購入して生コン工場計量器で混合する】 』 かです。
 
前者は,品質を含む混合の責任は骨材業者にあります。
以前 『 折衝 』でもお話しましたが,骨材業者のJIS取得は増加しているものの,数は決して多くありません。
砕石・砕砂は固有のJIS規格がありますが,山砂・海砂・川砂・砂利にはそれがありません。
JIS A 5308 の附属書として規定されています。
JIS工場でない骨材業者が,混合方法や混合率の保証をするとしても,何を根拠にしてよいか分かりません。
この場合,残念ながら混合品質の担保等は,直接骨材の製造に関与していない生コン会社が負担しなければならないのではないでしょうか。
規格としては少し矛盾を感じます。 200912254

JIS A 5308 の附属書A には,異種類混合・同一種類混合で
あっても,混合前に確認しなければならない品質項目が規定
されています。
しかし,生コン工場には混合された骨材が納入されるために,
混合する前の骨材を入手して,品質の確認を実施しなければ        骨材製造プラント
なりません。
ただし,骨材を保管するサイロやヤード,バッチングプラントの貯蔵ビンに余裕がない場合は,これらのことを踏まえて,『 あらかじめ混合した 』 骨材の購入を検討しなければなりません。

同一種類混合,異種類混合について受入検査で必要な項目を表2-5 に示します。
 
表2-5  受入検査として必要な項目   表はクリックすると拡大します。

Kikaku0311  
 
 
 
同一種類混合の特徴をキーワードで表すと “ 二人三脚 ” です。
絶乾密度・吸水率,安定性以外の項目が,混合前は基準に不適合であっても混合後に適合していれば使用できます。
 
異種類混合のキーワードは “ 切磋琢磨 ” です。
混合前の品質は,粒度と塩化物量以外はすべて,それぞれの種類の基準に適合していなければなりません。
 
混合後の試験結果は,混合前の試験結果から計算で推定することができます。
つまり,同一種類混合の場合も混合前の骨材について,それぞれ(表2-6では海砂と川砂)試験し,混合後の試験結果を計算して評価します。
このためボンドは,同一種類混合であっても混合前をそれぞれ試験評価する方法を推奨します。
 
塩化物量試験は,同一種類混合・異種類混合ともに混合後の試験値が必要です。 200912255
塩化物量は,JIS A 5002 〔構造用軽量コンクリート骨材〕 5.5 の試験方法 で測定
します。
試料の量は,普通骨材の場合,JIS A 5308 附属書Aに 1,000g と規定しています。
試験は,図に示す手順で行います。
ポイントは,試料をはかりとって広口ビンにいれて乾燥するという箇所です。
 
乾燥は試料をはかり取った後に実施します。 Kikaku0312
湿潤状態の細骨材を 1,000g はかります。
つまり,図1.試験手順の ⑤では 乾燥前の1,000gより少なくなるはずです。
乾燥後の試料を 1,000g 採取して,塩化物
試験を実施する生コン工場がありますが,
これは誤りです。
 
細骨材の塩化物量は,0.15㎜以下の粒子に多く含まれるといわれています。
絶乾状態になった細骨材をはかりとる操作を行うと,この粒子が飛散し,正確な試験結果が得られなくなる可能性があります。
このため,試験手順では湿潤状態の試料を
計量し,広口ビンに入れて乾燥するのです。
 
おい ! コラっ !
ほれやったら,混合後には試料の調整すらできひんやないか !
【ロン毛のペルー・ボンドさん 久々登場 ? 】
 
そのとおりです。
〔海砂+山砂〕であれ〔海砂+砕砂〕であれ,塩化物量試験をおこなうために混合状態の
試料を調整することは大変困難です。
混合前にそれぞれ試験を実施し,混合後を
割合に応じて計算するほうが合理的です。
 

かなり紙面を使いましたので,そろそろ筆をおきましょうか。
 
200912256  おいおい,ちょっと待ったれや!
 まだ粒度の説明してへんやないか!!
 咖喱〔その2〕表2. 観てみぃ
 うちも,海砂と砕砂を標準化して材料計量時
 混合してつこおてるけど,混合後の 0.15㎜
 粒度範囲は 0~10 にしてるで・・・
 これは間違いなんか ?
 「社内規格」変更せんとあかんのか ?
 【ロン毛のペルー・ボンドさん 再登場】

 

大変するどい質問です。
海砂と砕砂を混合した骨材の,0.15㎜粒度範囲を,0~10 と 「社内規格」 に記載してあるのは間違いではありません。
答えは “ 規制緩和 ” です。
実は,1996年版 JIS A 5308 附属書1 には以下のように記載されていました。

Kikaku0313

そして,1998年版 JIS A 5308 で,現在の記述となりました。
『0.15㎜ふるいを通るものの質量百分率(%)は,コンクリート製造時に各骨材を別々に計量して用いる場合は,混合後の細骨材に対し 2~15% とする。』

1996年までは,混合骨材〔海砂+砕砂〕の 0.15㎜粒度範囲を 0~10で管理していたのです。
規制が緩和されても,十分に適合する品質項目の場合は,社内規格値をわざわざ緩和するための改正をする必要はありません。

このため,海砂+砕砂の 0.15㎜粒度範囲は,0~10で管理可能と判断し, 「社内規格」 を変更しなかったのです。
けっして,改正し忘れではありません。
ペルーさん,納得していただけましたか?

===========================================================================================================

今回の『咖喱〔その3〕』は,作成に 1ヶ月かかりました。
結果,胸焼けするようにくどい文章になったことをお詫び申し上げます。
いよいよ次回から,製造工程の管理のお話になります。 どうかお付き合い下さい。200912257

 

                  メリー,メリークリスマス!      

                         by ベトン・ボンド

2009年11月21日 (土)

『 咖喱 〔その2〕 』

ボンド,ベトン・ボンド
引き続き “原材料の管理” のなかの “骨材” に関する 「社内規格編成」 のウンチクを続けたいと思います。 

===========================================================================================================

特に生コンでは,粗骨材の占める割合が高いことから,これがカレーライスの米に当ります。

ファーストアプローチは,前回同様,JIS Q 1011 欄外の記載内容からです。
早速,表1をご覧下さい。

表1.JIS Q 1011 附属書A 「表の注記」と「表の注」   表はクリックすると拡大します。
Kikaku0305

組立説明図(JIS Q 1011)は,“骨材の製造業者又は納入業者と産地” を 「社内規格」 に規定するよう注記されています。

しかし,何故骨材だけ,“ 納入業者 ” を認めているのでしょうか?
それは,2つの理由があります。
・ 骨材の受入検査は,製造業者が第三者試験機関に依頼した成績表で確認してもよい
・ 骨材製造業者が第三者試験機関に依頼できない場合がある

さて,“ 納入業者 ” は比較的歴史が新しく, JIS A 5308 :2003 版 が制定されたときの呼称で,個別審査事項のなかに初めて登場しました。

当時,関西地区において細骨材は “ 中国産川砂 ” が流行していました。
瀬戸内海が海砂採取禁止となり,その“ 海砂 ” の代替として,中華人民共和国の福建省などで採取された “ 川砂 ” が注目されました。

“中国産川砂” の製造業者は,中華人民共和国の国営企業です。
中華人民共和国にある国営企業が,日本に川砂を輸出するために,日本の第三者試験機関に試験を依頼してくるかといえば,その可能性は大変低いと言わざるを得ません。
この場合,日本の輸入業者あるいは骨材納入業者が,試料を採取して第三者試験機関に依頼するほうが自然です。
しかし,過去の個別審査事項(1998年版以前)は,第三者試験機関(当時は外部試験機関)に依頼するのを,骨材製造業者だけに限定していました。
つまり,個別審査事項自身が時代に合わなくなり,2003年版から,試験を依頼するのは骨材に限っては 納入業者 でもよくなったのです。
なお,2007年3月中華人民共和国商務部が,自然環境保護を理由に,天然砂を輸出禁止としたことなどから,現在は “ 中国産川砂 ” の輸入は途絶えています。

骨材の受入検査項目のうち,骨材製造業者(納入業者を含む)が第三者機関に依頼した成績表で確認しなければならない代表的なものは,アルカリシリカ反応性試験です。
生コン会社が骨材を購入する場合には,製造業者から直接購入する場合と,商社あるいは土場管理会社などの販売業者を介在して購入している場合があります。
ところが JIS Q 1011 が要求する “ 納入業者 ” は,購買形態を指しているのではありません。
生コン会社が入手している “ アルカリシリカ反応性試験成績表 ” は,誰が試験機関に依頼しているのかを重要視しているのです。

つまり, “ アルカリシリカ反応性試験成績表 ” を販売会社が依頼していれば,その販売会社を “ 納入業者 ” として 「社内規格」 に明記しなければなりません。
この場合,骨材の納入経路をあらかじめ把握しておく必要があります。

ここで,骨材に関する組立説明図とパーツの関係を 表2に示します。
JIS Q 1011 で骨材の受入検査方法は,規格の表A.2.1 を引用しています。
JIS A 5308 は数種類の骨材使用できますが,関西地区で使用している骨材は,ほとんど天然砂(海砂),砕砂,砕石,砂利(地方等)と思われます。

今回は,砕石・砕砂について述べます。(表2-2 参照)

 

表2.骨材   表はクリックすると拡大します。

Kikaku0306

 

表2-1.骨材の受入検査方法   表はクリックすると拡大します。

Kikaku0308

 

表2-2.砕石・砕砂の基準値等   表はクリックすると拡大します。

Kikaku0308

 

JIS A 5005 は,JIS A 5308 と同様に,今年の3月に改正されました。
改正内容については,『 氏変更 』,『 折衝 』,『 春一番 』,『 急告 』 をご覧下さい。

JIS A 5005 によると砕砂・砕石のふるい分け試験 は,通常のふるい分け試験と異なり,微粒分を取り除いた試料て実施するよう規定しています。
そこで,砕石・砕砂に関する “受入検査規格”  でふるい分け試験は,砂や砂利と区別するために,試験方法を JIS A 5005 5.5 と記載しておきます。

微粒分量は,基準値と範囲を定めて規定しなければなりません。
関西地区の砕石・砕砂は,JIS A 5005 改正に対して製造工程を変更する等して,微粒分量を高くしたということは聞こえてきません。
このため,微粒分量は,砕石・砕砂ともに,それぞれ改正前の基準値(1.0%以下,5.0%以下)で管理できると判断できます。

ここで 『 模型 』 の表3 をご覧下さい。
製品の管理において,次の記述があります。
砕石及び砕砂を用いる場合には,微粒分量の範囲の「基礎となる資料」を備える
基礎資料等で,微粒分量の範囲を決定した経過に関する記録を残しておく必要があります。
このように 「基礎となる資料」 というと,コンクリートに与える影響を把握するような試験練り等を実施しなければならない,と考える方が少なからずおられます。
しかし,骨材製造業者が製造工程の変更を行わず,JIS A 5005 改正前の基準値で管理できる場合は,骨材製造業者との購買契約書や,過去の受入検査結果をトレースしたデータ等も基礎資料になりえるのではないでしょうか。

舗装コンクリートを標準化している場合,すりへり減量は JIS A 5005 の基準値よりも厳しい値で管理しなければなりません。
また,砕砂の微粒分量は 5.0%以下で管理しなければなりません。
なお,舗装コンクリートに砕石を使用する場合,JIS A 5005では基準そのものがない “ 軟らかい石片 ” も 5.0%以下で管理しなければなりません。
同じ産地や製造業者の砕石・砕砂を使用していても,「社内規格」は,舗装コンクリートを標準化しているか否かで管理基準が異なります。

砕石・砕砂は,大きな岩石を人工的に破砕しながら粒度調整を行って製造されます。
つまり,製造業者と産地が同じであるならば,製造される砕石は,粒度区分が何であれ,同じ石質の母岩から製造されています。
この性質からアルカリシリカ反応性試験は,ひとつの粒度区分の結果を,他の粒度部分の砕石や砕砂に適用することができます(2009年版)。
不思議なことにアルカリシリカ反応試験は,JIS A 5308:1993年版以前は,「 砕石2005の試験結果を他の粒度区分や砕砂に使用できる 」 と限定されていましたが,2009年度版から合理的に変更されました。

近年,砕石・砕砂のJIS工場が増えてきたような気がします。
生コンJIS工場にとってJISマーク表示の骨材を購入できることは,大変よろこばしいことです。

JISマーク品の砕石・砕砂を購入している生コン工場は,入荷の都度,骨材納入書に JISマークが附されていることを確認する他,月 1回,骨材製造業者の試験成績表で品質を確認するだけでよく,自社で試験することを省略できるからです。

なお, JIS A 5005 は骨材試験成績表の書式を定めていますが,“ 軟らかい石片 ” を記載するよう規定していませんから,舗装コンクリートを標準化している場合は,砕石 JIS工場に試験表を要請する必要があります。

砕石・砕砂を製造する JIS工場によっては,“ 密度1.95g/㎝3 に浮く粒子 ” や “ 有機不純物 ” について第三者試験機関に依頼している場合があります。
登録認証機関の審査官の中に,砕石・砕砂の外観検査として,どのような確認ポイントがあるか力説する方がいたと伺っています。

その審査官曰く,つぎに示す 2つの観点があるとのことです。
① ごみ,泥,有機不純物,その他コンクリートに有害なものを有害量含んでいるかどうか ?
② 薄い石片又は細長い石片を有害量含んでいるかどうか ?

この内容は,JIS A 5005にも記載されています。
しかし,有機不純物が有害量含んでいるかどうかについて,外観で如何に判断すればよいのでしょうか ? <大変疑問です !!!>
“密度1.95g/㎝3 に浮く粒子” や “有機不純物” を試験依頼している砕石・砕砂JIS工場も,この疑問がぬぐいきれなかったため,試験をおこなったのではないかと勝手に考察しています。

JIS Q 1011 表A.2.1(表2-1参照)で,“ 砕石の粒形判定実積率 ” は,“ 砕石2005となるように粒度調整して試験する ” との注意書きがあります。
JIS Q 1011:2005 や個別審査事項では,“ 2005だけに適用 ” と記載されていました。
このため,関西地区では長い間,粒度区分が 2005 を購入している場合に限って,受入検査で “ 粒形判定実積率 ” を試験すると解釈されていました。
しかし, 2009年版は 2005 に粒度調整して実施するよう規定していますから,2010 や 1505 といった単粒度砕石を購入している場合であっても,受入検査で “ 粒形判定実積率 ” の試験を実施しなければなりません。
この “ 粒形判定実積率 ” については,精密試験は実施しているが,「社内規格」で規定することを忘れている生コン会社が多いとようですので,再度確認してください。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

砂・砂利についてや,骨材を混合して使用する場合まで説明したかったのですが,・・・。
あと少しかかりますので,次回に改めて説明します。

===========================================================================================================

関西でもようやく生コン工場に対する立入検査が開始されました。
経済産業局が実施した関西以外の立入検査では,根本的な不祥事から JIS表示停止処分となった生コン会社があり,生コン会社に対する信頼が低下しています。 

時代が悪くなりました。
オーバーかもしれませんが,
          油断していると立入検査で JISマーク表示停止になるかもしれませんぞ!

 A0001_010362                       by ベトン・ボンド

2009年10月25日 (日)

『 咖喱 〔その1〕 』

ボンド,ベトン・ボンド
今回より “ 原材料の管理 ” に関する「社内規格編成」のウンチクを語りたいと思います。 

===========================================================================================================

Br1    さて,今回のタイトルは何と読むかご存知でしょうか?
カリーと読みます。

また,何を指しているかわかりますか ?
そう,ハウス食品社で発売している レトルトカレー のひとつです。 Kikaku030

冒頭にも言いましたが 「原材料」 のお話です。
この 「 原材料 」 というワードを 「 食材 」 と考えるとイメージしやすくなるのではないでしょうか。

原材料が食材なら,レディーミクストコンクリートも何かに・・・。
レディーミクストコンクリートは最も普及した工業製品です。
ここでは,レディーミクストコンクリートを,
子供から大人まで広く好まれる “ カレーライス ” に例えます。

本コーナーは,漢字のタイトルがこだわりです。
そこで,漢字の付いたレトルトカレーがあったのを思い出し,それを拝借しました。

コンクリートは,どのような材料かをあらためて考えてみましょう。

その前に “ 城の石垣 ” をご覧下さい。 Kikaku0301
石垣は大きな石を適度な大きさに切り出して積み上げた
強固な土台です。
コンクリートは,石垣に類似しています。
それは,ある大きさの桝,例えば型枠に骨材を敷き詰め,
骨材のすき間を接着効果のあるセメントペーストで充填
して,ある強度を持たせた材料です。

一方,カレーライスは,米粒と米粒を味の付いたルーで繋いだ食べ物ですから,レディーミクストコンクリートと似ています。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

Br2   さあ,前置きがすっかり長くなりましたが,・・・
私たちの “カレーライス(レディーミクストコンクリート)” を 製造 ? する手順を綴った 「社内規格」 の作り方です。

カレールーをモルタルに,ご飯を骨材に例えて,お話を展開します。

レディーミクストコンクリートは,工事の内容や打設部位に応じて様々な “味” が要求されます。
激辛,辛口,中辛,甘口・・・。
それでは,味さえよければすべてヨシか ? というと,そういうわけではありません。
やはり,使う材料について JIS Q 1011 に管理方法(組み立て説明図)が, JIS A 5308 にそれぞれについて規格(パーツ)があります。

カレールーの材料は,セメント,水,化学混和剤,細骨材です。
細骨材については,次回骨材のところでお話をします。

表2 ,表3 ,表4 は,セメント,水,化学混和剤の解説表です。
表1 は,JIS Q 1011 の附属書A の「表の注記」と「表の注」です。

表1.JIS Q 1011 附属書A 「表の注記」と「表の注」   表はクリックすると拡大します。
Kikaku0305

表1 には,重要な事項が記載されており,納入伝票にJISマークを附して出荷する生コンに使用する材料については 「社内規格」 で規定するよう要求しています。

例えば,混和材料のなかには 「膨張材」 があります。
時折,「膨張材」 入りの生コンの引き合いがありますが,多くの JIS工場では,この生コンに JISマークを附さずに出荷します。
それは,現状では,その出荷頻度が比較的低いからです。
このように出荷頻度が高くない生コンを標準化し JISマークを附すと,生コン工場は管理が複雑となります。
需要や出荷量を考慮して標準化する生コンと,使用する原材料は十分検討しておく必要があります。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

Br5 カレー粉に該当する 「 セメント 」 について説明します。
もう一度,表1 をご覧下さい。
理解に苦しむ記述があります。
セメントの製造業者とは “ その品質に責を負う製造業者 “ という記述です。
分かりにくいですが,セメントのOEM を容認しているような表現です。
近年,セメント会社はセメント需要の低下に対応し,セメント製造工場を閉鎖しています。
このため,自社生産が追いつかない場合や,自社生産から撤退し低コストで市場への製品供給を試みた場合に導入する手法に関する記述なのかもしれません。

一方,表2 では,保管方法として “異なるセメントの製造業者のセメントを貯蔵する場合・・・” ,つまり,トイレ洗浄剤の注意事項 『 混ぜるな危険 』 に類似した記述もあります。

セメント製造業者自身がOEM をおこなう場合は,責任はセメント製造業者にありますが,生コン工場のセメントサイロで複数の製造業者のセメントを保管する場合には,品質に係る責任の所在がかなり曖昧となる気がします。

表2.セメント 表はクリックすると拡大します。
Kikaku0302  

いずれにせよ,複数のセメント製造業者のセメントを,同時に標準化する場合は,商流問題等に加え,セメントサイロの保有数等の設備条件を十分考慮しなければなりません。

さて,具体的な 「社内規格」 はどうするのかについてです。
一般にセメントの受入検査は,月 1回,セメント製造業者が発行する試験成績表を確認します。
セメント試験成績表は,品質項目に対して,平均値・標準偏差・最大値・最小値等の様々な数値が記入されています。
「社内規格」では,「原材料規格」や「受入検査規定」として,セメント試験成績表の何を確認するのかを規定します。

確認する品質項目は,セメントの規格 『JIS R 5210 ~ JIS R 5214 』 をそのまま適用します。
代表的なセメントの規格を表2-1 に示します。
表2-1 に示す項目に関して,セメント試験成績表の平均値が適合しているかどうか確認します。

おやっ? 組立説明書には,次の不思議な表現があります。
“ 品質及びそのばらつきにを確認する ” 〔表2 下線〕

このため,標準偏差や最大値(または最小値)についても基準を設定しなければなりません。
セメント試験成績表で標準偏差は,「比表面積」・「圧縮強さ」に数値が記入されています。
管理基準値は,セメント製造業者と協議等をして決定します。

旧JIS制度の公示検査で,ある検査機関は,「圧縮強さ」は,平均値と標準偏差から圧縮強さの最低値を推定し,その最低値が JIS R 5210 ~ JIS R 5214 の圧縮強さに適合することを確認するよう要請していました。

このため,関西地区では,セメントの「圧縮強さ」に関して,平均値・標準偏差及び最低圧縮強さに,それぞれ受入基準値を設定しています。

また,「圧縮強さ」は,製造業者が発行するセメント試験成績表で確認する以外に,6ヶ月に1回及び製造業者変更の都度,第三者試験機関に試験を依頼して確認しなければなりません。

この試験は,セメントの種類及び出荷基地毎に実施しなければなりません。
ただし,特例措置(?)が用意されています。

セメントは,ひとつの出荷基地から複数の生コン工場に出荷されています。
この特性を利用できるように,JIS Q 1011では “同一セメントの製造業者の同一出荷場所から供給を受けている 複数のレディーミクストコンクリート の工場 の間では, 代表的試料について共同で確認してもよい ” と記載されています。

ただし,この記述があるために,セメントは製造業者だけを規定するだけでなく,出荷基地も 定めておかなければなりません。
ところで,セメントの出荷基地ですが,セメント製造工場も出荷基地としての機能があるために,セメント製造工場を記載している生コン工場が存在します。
このため,生コン会社の「社内規格」には,セメント製造工場も規定しなければならないと勘違いをされている方があります。
繰り返しますが,規定しなければならないのは,セメント製造工場ではなく,「セメント出荷基地」です。
この第三者試験機関は,セメント協会や生コンクリート協業組合協同試験所等が該当します。

また,生コンの配合は,所要品質に対して各材料の容積割合を変えて設計しています。
このため,セメントは種類に依らず,品質基準として密度の基準も規定しておく必要があります。
この密度の基準値は,同様にセメント製造業者の推奨する数値で決定します。

最後にセメントは意外と多くの種類が規定されていますが,関西で標準化の対象となるセメントは,ポルトランドセメントの 3タイプ(普通,早強,低熱)と高炉セメント B種の合わせて 4つです。
なお,高強度コンクリートの表示認証を受けている場合,登録認証機関によっては, セメントの基準値を, 高強度コンクリート製造マニュアル と整合させなければなりません。

表2-1.代表的なセメントのJIS規格 表はクリックすると拡大します。
Kikaku03021

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

Br4    次に水のお話です。
カレーライスは食べ物ですから,作る際に使用する水は,飲料水だけが使われます。
ところが,レディーミクストコンクリートの練混ぜ水は,「上水道水」以外に各種の水を使用することができます。

飲料水として一般家庭で使用される 「上水道水」 は,試験をせずに使用できますが,この旨を 「社内規格」 に規定しておかなければなりません。

「スラッジ水」を標準化している場合,「あらかじめ定めたスラッジ固形分率」を確保するために,「上水道水」や「上水道水以外の水(地下水,工業用水等)」で希釈して使用します。
このため,JIS A 5308 附属書Cでは,「スラッジ水」の品質試験に使用する試験試料の条件が定められているため,この部分を 「社内規格」 に規定しておく必要があります。

表3.水 表はクリックすると拡大します。
Kikaku0303

やはり,カレールーのお話は長くなりますね。
ここまでで目が疲れてしまった方は,少し休憩してください。

Br3 最後に化学混和剤についてです。
この化学混和剤は,カレールーでは,にんにくやペッパ等の香辛料に該当します。
香辛料は決して大量に使用されませんが,使わないとモノ足りない味になります。

セメントと同様,化学混和剤は JIS A 6204 としての規格が存在し, JIS A 5308 もこれを引用しています。

化学混和剤の受入検査は,セメントと同様,製造業者が発行する試験成績表の確認となりますが,その頻度は 1回/ 3ヶ月です。
JIS Q 1011 ではこれ以外に,入荷の都度,銘柄(種類)を確認するよう規定しているため,この旨を, 「受入検査規定」 で明記しなければなりません

混和材料は,化学混和剤以外にも,多数 JISとして規格化されていますが,市場に十分安定した量で汎用していないため,これらを標準化している生コン工場は少ないように思われます。
なお,2009年に改正された JIS A 5308と JIS Q 1011では,共に JIS規格で規定されていない混和材料についての記述が追加されました。

JISで規定されていない混和材料は,例えば,「収縮低減剤」が該当します。
怒鳴り声が聞こえます。
『ちょっと待った ! 「収縮低減形」の高性能AE減水剤があるやんけ ! 』

残念ながら,「収縮低減剤」 自身は JISとして規格化されていません。
そこで,化学混和剤メーカーは,高性能AE減水剤のJIS基準に適合する条件で,「収縮低減剤」を高性能AE減水剤に添加して商品化しました。
このため,「収縮低減剤」 と高性能AE減水剤(収縮低減タイプ)を比較すると,収縮低減効果は前者のほうが圧倒的に大きいと言われています。

近年,コンクリートの乾燥収縮に対する関心が大変高くなってきており,「収縮低減剤」 を使用しないとコンクリートの収縮率が,要求事項を保証できない地域がでてくると思われます。
特に建築工事は,建築基準法第37条により,構造体に使用するコンクリートは, JIS製品若しくは大臣認定を受けたものとされています。
このため,地域によっては 「収縮低減剤」 を標準化する生コン会社が現れるかもしれません。
JIS規格のない混和材料の使用は,購入者から指定を受けなければならないという条件がありますが,いずれこの種の混和材料を標準化しなければならない時代が訪れるような気がしています。
従って,実際には具体的な商品を標準化していない工場であっても, JIS規格のない混和材料の概要を 「社内規格」 で規定しておくほうが良いと考えています。

表4.化学混和材 表はクリックすると拡大します。
Kikaku0304

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

長い文章にお付き合い下さって誠にありがとうございます。
次回は,骨材についてのお話をします。

言い忘れましたが,セメントのJIS規格が近々改正される模様です。
興味のある方は,日本工業標準調査会第25回土木技術専門委員会配付資料 をご覧ください。

===========================================================================================================

この文章を書く間に,日没はますます早くなり,季節は確実に冬に向かっています。 

 Kikaku0306   世の中はそろそろクリスマス商戦に突入か?
                                  by ベトン・ボンド

2009年10月11日 (日)

『 色調 』

ボンド,ベトン・ボンド。
今回は,前回の延長です。
このブログに初めてアクセスした方や内容を忘れた方は 『 模型 』 からご覧下さい。

===========================================================================================================

さて, 『 模型 』 の表2. 「社内規格」の項目例を見てください。
A1. 製品の管理の項目の中には,
「製品規格」 と 「製品検査規格」 以外に 「配合設計標準」 ,「標準配合変更及び修正基準」 , 「アルカリシリカ反応抑制対策の方法」 の 3項目があります。

これら 3項目は組み立て説明図(JIS Q 1011)〔『 模型 』の表3〕 のどの部分から発生したのかを説明します。

4. 配合には,注(3)があります。
これに該当する 注(3)を穴が開くほど眺めると,次の文字が目につきます。

Ⅰ) 標準配合を規定する
Ⅱ) 配合設計基準を規定する
Ⅲ) 標準配合の変更及び修正の条件・方法を規定する
Ⅳ) アルカリシリカ抑制対策の方法を明示

な~るほど!
Ⅰ)とⅡ)が「配合設計標準」に,
Ⅲ)が「標準配合変更及び修正基準」となり,
Ⅳ)が「アルカリシリカ反応抑制対策の方法」となるのか。
でも,どのような内容にすればいいの ?

そうですね。 「製品規格」 と 「製品検査規格」 には,JIS A 5308 というパーツがありました。

3項目のうち 「アルカリシリカ反応抑制対策の方法」 だけは,JIS A 5308 附属書B に該当するパーツがあります。

では,この 附属書B を丸写しにすればいいかというとそうはいきません。
例えば, 附属書B には,抑制対策の中に混合セメントを使用する方法が記載されていますが,高炉セメントC種やフライアッシュC種は販売されているかどうか不明です。
実際に,これらを常時製造販売しているセメント会社は聞いたことがありません。

混合セメントを使用する方法のうち, 1番現実的なのが高炉セメントB種の使用であり,可能性がゼロではないのが,フライアッシュセメントB種の使用ではないでしょうか。
「社内規格」 に高炉セメントC種やフライアッシュC種の使用を,「抑制対策」 として記載するのは如何なものかと思います。

その他の抑制対策(アルカリ総量計算,安全である骨材の使用)については, 附属書B の表現をそのまま 「社内規格」 に規定します。

さて,すこし脱線します(得意の悪口の始まりです)。
ある省の通達によると,アルカリシリカ抑制対策は以下の順位で行います
1) アルカリ総量による抑制
2) 混合セメントによる抑制
3) 安全である骨材の使用

土木工事では,高炉セメントB種を使用するコンクリート工事が,建築工事に比べて多いように感じます。
また,管理を任された役人のなかには,先の通達を遵守しようと躍起になる方が出現します。
高炉セメントB種を使用することが,既に抑制対策となっているにも拘らず,アルカリ総量計算の提出を求める方がいます。

あれっ? セメント試験成績表に高炉セメントB種の全アルカリ量は数値があったかな?
いいところに気がつきました。
高炉セメントB種 はベースセメントの全アルカリ量しか記載されていません。

そうか ! スラグの混合率で補正して計算すればええねん !
高炉セメントB種 のスラグの混合率は,試験成績表に40~45%と記載されてますね。
アルカリ総量は,確かにこの方法で計算できます。
しかし,意味のある計算結果なのでしょうか ?

混合セメントである高炉セメントB種やフライアッシュB種は,普通ポルトランドセメントに高炉スラグやフライアッシュを添加しています。
元のポルトランドセメントの全アルカリ量は,添加材によって薄められますが,これが抑制対策となっているのではありません。

『 コンクリート技術者のためのセメント化学雑論 』 (社団法人セメント協会発行) には,スラグやフライアッシュの 「ポゾラン反応が,アルカリシリカ反応を抑制する効果がある」 と書かれています。

つまり,高炉セメントB種を使用するコンクリートについて, 「アルカリ総量計算を要求すること」 はナンセンスなのです。
役人が管理を行ううえで実施すべきことは,書かれた内容を理解することなく,通達どおり実行することなのでしょうか ?
私たちはこのような場面にでくわしたときには,説明する努力をしなければなりません。

随分長く,道を反れました。
Ⅰ) と Ⅱ) を含まなければならない 「配合設計標準」 の話に移ります。
この分野は,JIS Q 1011 に組み立て設計図に要求事項はあるものの,パーツは JIS A 5308 には存在しません。

さて, 「配合設計標準」 では,コンクリートの配合設計手順等を規定します。
もっと解りやすく言うと,例えば  24-18-20 N  などの標準配合表が出来上がるまでの,手順を示します。

表.配合設計方法と準備事項
 
Kikaku0201  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
現場に 「配合計画書」 を提出する際には,よく 「配合計算書」 も添付します。
この 「配合計算書」 を文書で説明すると 「配合設計標準」 となります。

「配合計算書」 を眺めてください。
各々の計算過程の中に  “当工場の実積による”  と言った類のコトバが点在していませんか ?
このコトバが使用されている項目は,生コン工場の責任で決定しなければなりません。

複合材料であるレディーミクストコンクリートの諸品質は,使用材料の影響を大きく受けると言われています。
「製品規格」 は JIS A 5308のなかにパーツがあると説明しましたが, 「配合設計標準」 ではパーツ自身も生コン工場が造らなければなりません。

レディーミクストコンクリートの標準配合は,室内試験の結果を目安にして単位水量,かさ容積表(s/a法の場合はs/a表),セメント水比と圧縮強度の関係式を決定します。

なぜ室内試験の結果を目安にするかというと, 『 健忘 』 の最後にも書きましたが,生コンの使用材料の品質は一定ではなく変動するため,室内試験結果は,準備した材料の結果にすぎません。
そこで,室内試験結果と想定した材料変動から,安全を見込んで諸設計値を決定します。

例の公団は,室内試験により配合を決定していますが,事前に過去の実績 (同じあるいは類似の使用材料) を照合して,ある程度の単位水量や s/a を想定しています。
室内試験も重要ですが  “ 実績に基づく諸設計値 ”  が最も精度がよいと思います。

阪神地区の生コン会社は,協同販売上の理由から大阪兵庫生コンクリート工業組合の標準配合表を使用しています。
たとえば, 「配合設計標準」 では,大阪兵庫生コンクリート工業組合の 「標準配合設計」 を使うこともひとつの考え方です。
なお,建築学会仕様書(JASS5)等の仕様書は,標準的なかさ容積表や単位水量表を掲載していますのでこれらを参考にすることも,もちろん有効です。

次に
Ⅲ) 「標準配合の変更」 及び 「修正の条件・方法」 を規定するについてお話しします。
ここでは, 「変更」 と 「修正」 の定義を考える必要があります。

「変更」 とは,設計値の変更に伴い標準配合表をすべて変えてしまうことであり,これを実行すると操作盤に登録する配合(出荷管理装置に記憶させる配合)の更新(再度インプット)が必要となります。

「修正」 とは,例えば使用材料の特性値(密度,実積率,粗粒率等)が一時的に基準を外れたこと等により標準配合表自身の変更は行わず暫定的に配合を変更することを意味します。
このため,修正中に出荷する配合についてのみ暫定的に配合を変更します。
ただし, 「修正」 が慢性化すると標準配合変更を検討しなければなりません。

どのような現象が発生したときに標準配合を修正するか,または変更するかをよく検討しておく必要があります。
修正(変更)方法は,土木学会コンクリート標準示方書(RC)や建築学会仕様書(JASS5)を参考にします。

いずれにせよ,配合設計や修正・補正として規定する事項は,基本的に制約がなく,“ 模型造り ” というより “ 模型の色塗り ” という意味合いが濃いように思います。

皆様の 「社内規格」 に規定してある 「配合設計標準」 や 「標準配合の変更及び修正の条件」 は,色調が皆様の工場にマッチしていますか?

===========================================================================================================

Kikaku0202

 運動会の季節です。
 HiRAC応援団長
 帽子が飛びそうになるのを
 かぶりなおして疾走しましたが,
 残念ながら 1位では なく 2位でした
 (左から 2番目の白帽子)。
 
Kikaku0203 

 

  幼いわたちも
  HiRACの一員
  でちゅ!

 

                     今回の写真は少し照れています。
                            by ベトン・ボンド

2009年10月 4日 (日)

『 模型 』

ボンド,ベトン・ボンド。
今回より, 「社内規格」 の編成の仕方について偏見を語りたいと思います。

===========================================================================================================

さて,JIS工場は品質管理を行ううえで,まず 「社内規格」 を整備しなければなりません。
生コンは JIS取得の歴史が比較的深く,生コンJIS工場の 「社内規格」 は既に形態が完成していることから,1から作るという経験を積むことが困難となっています。

例えば,JIS A 5308が改正されたとき,改正箇所に該当する頁を探して変更することはあっても作り直すことはまずありません。

さて,あのナゾナゾを思い出して下さい。
JIS工場が遵守しなければならない項目は 5つありました。
氏変更 』,『 折衝 』,『 春一番 』,『 急告 』,『 残渣

これら 5項目と 「社内規格」 の係わりを “ 絵 ” にして見ましょう。

Kikaku0101 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり,品質管理された生コンを製造するための準備とその審査方法は以下の通りです。

表1.準備内容と審査方式

Kikaku0102  

 

 

 

 

「社内規格」 の内容を大きく分類すると, 「 統括的事項 」 と 「 個別事項 」 の 2つの分野から成立しています。
統括的事項は,いかに工場を運営するかといったシステム的な色が濃いため,よりましな内容はあっても完璧な状態はないと考えられます。
そこでこのシリーズでは,まず個別事項から進めて行きたいと思います。
個別事項は,JIS Q 1011の附属書Aとして 6つに大別されて記載されています。
それぞれから出現する 「社内規格」 の項目例を表2に示します。

                                     表2.個別事項と社内規格項目例

Kikaku0103 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて,次になぜこのような 「社内規格項目例」 となるのかも含めて説明します。
今回は,A1.製品の管理から始めます。

その前に……。本日のキーワードです。

模型(プラモデル)を憶えていますか?
男性の方々は子供の頃に経験があり,あるいは大人になっても趣味にしている方がいるかもしれません。

Kikaku0104 ボンド自身,小学生の頃に “ガンダム” のプラモデルを作った記憶があります。
 その記憶によると,プラモデルは紙箱に入っていました。
 箱の表面には,船,車,ロボット等の,模型の対象となったモノが描かれて
 います。
 箱を開けると,各パーツと組み立て説明が入っています。
 組み立て説明図に従って,各パーツを組み立てて色を塗ると完成します。

実は,個別事項に関する 「社内規格」 の作成は,模型(プラモデル)作りとよく似ています。

JIS Q 1011 付属書A の各項目は,ガンダムにたとえると,顔や胴体等に相当する,各部分毎の組み立て説明書です。
対応する JIS A 5308 の諸内容が各パーツとなります。

模型は色を自由に塗ることができます。
社内規格作成で模型の色に該当するのは,内容の記載方法等です。
図や表を活用してもよいし, 「社内規格」 を社内の法律と位置付けをして六法全書のように文字ばかりで表現してもかまいません(ボンドは前者を支持します)。

そのようにして完成した 「社内規格」 を遵守すると,品質管理された生コンが完成します。

では, 「製品の管理」 に関する 「社内規格」 を編成する方法を表3に示します。

表3.製品の管理―組み立て説明図とパーツ―   表はクリックすると拡大します。

Kikaku0105

赤字部分は 「製品規格」 に,青字部分は 「製品検査規格」  になります。
JIS Q 1011 に該当する項目は,それぞれ 「社内規格」 で規定しておけよという項目です。
JIS A 5308 の該当する部分には,規定すべき項目に該当する内容です。

あれっ? 「製品規格」って JIS A 5308 の本文を丸写しするんじゃないの?
確かにそのように考えている登録認証機関や審査官もいます。
しかし,表3 を踏まえると「製品規格」に,原材料や設備などに関する記述が必要でしょうか?
また,すべて丸写しすると,次のリスクを背負うことになります。

原材料や設備に関連する内容は, 「製品規格」 以外の章,すなわち 「原材料規格」 や 「設備規格」 でも同じ内容を記述しているはずです。
つまり,今年(2009年)の 3月のように JIS A 5308 や JIS Q 1011 が改正されたとき,該当する項目について 「製品規格」 は改正したが, 「原材料規格」  の方は忘れていたなんていう 事態に,おちいる可能性があります。

正しいのはどちらかと問われると答えに窮しますが,ボンドは JIS A 5308 本文のなかから,JIS Q 1011 の製品の管理で品質項目に該当する部分を 「製品規格」 としているタイプを好みます。

なお,表3には分類すらされておりませんが,JISマークの表示に関する告示事項(生コンの場合,納入書に外径10㎜のJISマークを附す等)について規定する必要があります。

さて, 「製品検査規格」 についての注意事項ですが,購入者と協議のうえ指定した(受けた)事項の検査について,規定しなければならないことを見過ごすケースをよく見かけます。

また, 「製品検査規格」 は検査を行うための試験方法について定めていますから,JIS A 5308 9.試験方法の内容を注釈等で記載しておくとよいでしょう。

今回はかなり紙面を使いました。
ここまで読まれた方も大変疲れたと思います。

お読みくださった貴方が生コン JIS工場に従事しているなら,ご自分の会社の 「社内規格」 を開いて,今一度, 「製品規格」 と 「製品検査規格」 を眺めてみてください。
そして,左側に JIS A 5308 を右側に JIS Q 1011 をおいて,よく見比べてください。

「社内規格」 は,ただ JIS規格 を丸写ししただけのものではありません。
たとえ誤字があろうとも,作成者たちが, 「 よりよい製品を製造するために 」 想像力を働かせ, ひと文字ひと文字を 刻んだ傑作なのです。

表2の 「社内規格項目例」 をみると, 「製品規格」 と 「製品検査規格」 以外 に 3つの項目が
あります。
何故か ? ,そしてそれらはどこから生まれたか ? については,次回とします。

===========================================================================================================

001481_m  

 

 

 

 最近,文章を創るのに大変時間が掛かるようになりました。
 深まりつつ秋とともに,トシを感じます。
                          by ベトン・ボンド

2009年9月 1日 (火)

『 健忘 』

ボンド,ベトン・ボンド。
なんて言いながら,いつもの調子は出ません。

まずはお詫びします。
民営化 』の最後では,あの特殊法人について再度レポートしますといったメッセージでくくっていました。

一方,あの記事を書いていたのが 盆休み前であったことと, 盆休みをこころゆくまで満喫したためか,『 終夏 』を書き終えるまですっかり忘れていました。

普段,子供には“ウソつきはドロボウの始まり” と諭していますが,言った本人が一番怪しかったようです。

************************************************************************************************************************************************************************** 

さて,元公団の▲験課の話の続きです。
前回は,「吹きつけコンクリートの配合作成」でしたが,今回は「通常のコンクリートの配合作成」です。
ひとつの配合を作成するための手順は以下の通りです。

  1. 試験練り用に準備された骨材の確認(表乾状態,粒度分布)
  2. 配合設計値の確認(目標スランプ・空気量,目標強度値の検証)
  3. フレッシュ状態の最適な単位水量・s/aの決定
  4. C/W-σ 関係式,水セメント比の決定

それでは,順番にご説明します。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

1. 試験練り用に準備された骨材の確認
   ここでは,次の試験により準備した骨材を評価します。
   細骨材: ① フローコーンによる表乾状態確認
② JIS A 1111 『 細骨材の表面水率試験 』
③ JIS A 1102 『 骨材のふるい分け試験 』
   粗骨材: ① 目視による表乾状態の確認
② JIS A 1102 『 骨材のふるい分け試験 』

 

200909011

 

細骨材表乾状態の評価は,フローコーンとチャップマンフラスコで表面水率を測定します。
民営化以前の約10年ほど前には,細骨材の表乾密度も測定していました。
現在では,フローコーンで表乾状態を確認したあと,チャップマンフラスコで想定した表面水率が ±0.2% を超えている場合にかぎり,表乾密度を測定するとのことでした。

さて,砕砂を使用する場合に何か疑問が湧きませんか?
氏変更 』 をご覧下さい!
JIS A 5005 が改正されて,砕砂のふるい分け試験は試料の調整方法が改訂されています。
▲験課によると,砕砂のふるい分け試験は JIS A 1102 で実施します。

細骨材のふるい分け試験を実施すると,ふるい目に粒が詰まりやすくなる寸法のふるいがでてきます。
これを放置して,試験の前後の試料の質量差が 1% を超えると再度試験をしなければならなくなりますから注意が必要です。

また,細骨材では 5㎜ふるいに留まる粒(5㎜オーバー)がある場合,粗骨材では 5㎜ふるいを通過する粒(5㎜アンダー)がある場合には,試料の再調整が必要となるますので,これまた注意が必要です。

砕石を使用する場合,砕石1505は 5㎜ふるいでふるって試験練り用としますが,砕石2010について同様で,この作業を怠って試料再調整となる生コン会社がありますのでまたまた,注意が必要です。

天然砂と砕砂や砕石2010と1505等,骨材を混合して使用する場合,細骨材と粗骨材のそれぞれの混合比率は,ふるい分け試験結果から決定します。

この混合比率は,生コン打設の都度,事前に工場でふるい分け試験を行って適正な比率にしなければなりません。

さらに, 5㎜アンダーと 5㎜オーバーについても補正しなければなりません。
この補正は,過大粒・過小粒の補正と呼ばれています。
操作盤の機種によって,操作盤の演算機能で対応できるものがあります。

生コン会社の大半は,この過大粒・過小粒の補正を行っていませんが,これは “かさ容積法” という配合設計方法を採用しているためです。

2. 配合設計値の確認(目標スランプ・空気量,目標強度値の検証)

これは,書面の確認です。
目標スランプ・目標空気量は,生コン会社から打設現場までの運搬時間や,ポンプ圧送距離によって決定します
(特殊法人の仕様書にある程度規定されています)。
また,目標強度を決定するための変動係数の設計値も仕様書に定められています。
通常は,JISコン(工場がJISマークを表示している製品)で使用している変動係数と異なりますので,仕様書をよく読んで対応する必要があります。

3. フレッシュ状態の最適な単位水量・s/aの決定

ここから,試験練り作業を開始します。
ここでは,中心となる配合の単位水量と最適 s/aを決定します。
あらかじめ▲験課には,中心配合の暫定配合を提示しなければなりません。
また,この暫定配合としては,JISコンの配合は採用してくれません。

JIS標準配合の単位水量やs/aは,所定の品質(特にスランプ)を保証するためにかなり安全に設計されています。

暫定配合の提示では,あらかじめ試験練りをおこない安全に設計された部分を削減しておく必要があります。

民営化されたとはいえ▲験課は,程度はともかく “ガサコン” を好みます。
この暫定配合を決定する試験練りは,施工者の立会いで行って,生コンの状態を見せながら,▲験課立会試験の作戦を練るのが理想的です。

さて,▲験課立会試験では,目標スランプが得られる単位水量を決定し,練りあがった生コンの状態(スランプ値,形等)から中心配合の最適 s/a候補をさがします。

中心配合について最適な単位水量と s/aが確立すると,その単位水量を固定して中心配合の s/a候補値から ± 3% 生コンの状態を確認して最適 s/aを決定します。

JIS A 1101 によるスランプ試験は,スランプ値は 0.5㎝単位としています。
ところが最適 s/aをさがすことが目的であるため,スランプ値は 0.1㎝単位で測定します。

s/a候補値から ±3%をおこなうと,
大抵図のように右下がりの結果と
なります。

図をご覧下さい。
これは,s/a候補値を 41%として
います。
ところが,スランプが最大になる
s/aは39%付近です。

 200909013

民営化前は,この試験結果に基づき有無を言わさず,最適s/aを 39%としていましたが,民営化後は,曲線からだけでなく施工者の意見も聞きながら,妥当なs/aを決定しているようです。
あるいは,民営化の理由ではなく,担当者によるのかもしれませんが,以前の考え方は最適 s/a を ピンポイントと考えていたようですが,最近はある範囲に存在していると考えているように感じました。

4. C/W-σ 関係式,水セメント比の決定

最適s/aが決定すると,暫定値と差がない場合でも,再度中心配合を試験練りして,再現したフレッシュコンクリートの性状が所定の品質にあるか確認します。

この再現試験で,フレッシュ性状が所定の品質であると,供試体を採取します。
なお,この再現試験からスランプは,JIS A 1101に従って 0.5㎝単位で報告します。

次にC/W-σ 関係式を作成するために水セメント比を ±5%とします。
このとき,フレッシュコンクリートの品質を一定にする(スランプを合わす)ために,中心配合の粗骨材量はそのままスライドして使用します。
一般に生コン工場は,施工者・運搬距離・季節等の影響下でも所定強度を確保できるよう安全を見込んで配合設計を行います。
このため,目標より高い圧縮強度が得られた場合,それほど神経質になりませんが,そうは問屋がおろしません。

目標強度(配合強度)に対して 10%を超える場合は,C/W-σ 関係式から適正な水セメント比に変更しなければなりません。

強度はともかくとして,最適 s/a や単位水量をスムーズに決定するためには,準備している細骨材と粗骨材を如何に均質にしておくかが重要となります。

配合決定のための試験練り手順を纏めると以下のフローとなります。

      200909012

実際の出荷を考えるとき,生コンの配合設計は以下の理由で,JISコン のように過剰な安全を見込んでいるほうが合理的であると思います。
骨材は分離しやすい(1m程度の高さから落下するだけでも分離すると言われている)。
ゆえにサイロやストックヤードで保管された骨材を均質に保つことは不可能。
標準配合は,必ず所定の品質が得られるのではなく,所定品質が得られやすい配合。

************************************************************************************************************************************************************************** 

000875

 

 

 『健忘』を払拭するために,今回も !? 力を込めました。
 多少偏見が加わっていますが,
              何かの参考になれば幸いです。
              by ベトン・ボンド

 

2009年8月24日 (月)

『 終夏 』

お盆を過ぎると暑さは弱まるといわれていますが,今年はまさにその通りで夏が終わろうとしています。
盆休みが明けて,朝晩が涼しくなってきたことやセミの声が遠くに感じてきたことから夏の終わりを感じます。

日本は,春夏秋冬とすべての季節を味わうことができます。
いずれの季節も始まりと終わりがありますが,ボンドは “夏の終わり” が最も嫌いです。

なぜなら草木が急速に減退し,セミ等に代表される賑やかな虫達が息を潜めることから, “宴の終焉” あるいは, “祭りのあと” のようなさびしくて虚しい気分にさせられるからです。

関西では春と秋が短いために,夏と冬の2つしか季節がないように思えるときさえもあります。

24904628_org
 
 

 

 

 

 晩夏残照(フォト蔵) 

************************************************************************************************************************************************************************** 

さて,1ヶ月ほど前の 7月20日のことですが,JIS 表示認証の根幹となる規格のひとつ である
『 JIS Q 1001 適合性評価-日本工業規格への適合性の認証-一般認証指針 』 が改正されました。
この JIS Q1001 は,現行の JIS 制度が始まる直前の平成17年8月20日に制定されました。

旧JIS制度は,製品規格としての JIS規格はあるものの 「JISマーク表示制度のない工業製品」 (JISマーク表示したくてもできない製品)が指定品目として規定されていました。

現行のJISは,指定品目が解消され,製品規格のある工業製品は,JIS認証取得の審査を受けることと,登録認証機関との契約に基づいて JISマークを表示できるようになりました。

従って,現行JIS制度への移行に伴い,指定品目毎に存在した 『個別審査事項』 は廃止となりました。

ところが,生コンやコンクリート二次製品は,住居や社会資本整備などに使用され,ヒトの生命にかかわる重要な材料との位置付けから,個別審査事項(レディーミクストコンクリートとプレキャストコンクリート)が JIS化されました。

JIS表示認証工場,そして恐らくは登録認証機関にとっても,個別審査事項が JIS化されているほうが便利です。
なぜなら,これらの規格は JIS工場として何をしなければならないかを具体的に定めているからです。

逆の例ですが,家屋のプロパンガス設置場所などに使用される 「建築コンクリート用ブロック」 は,現行の制度では生コンでいう JIS Q 1011 に相当する規格が存在しません。

たとえば,生コンの場合,JIS Q 1011 の製造工程の管理で細骨材の表面水率の測定頻度は,2回以上/日と規定されています。

一方,分野別認証指針が存在しない場合,製品の管理・原材料の管理・製造工程の管理等の管理項目や方法等について,申請工場が考えなければなりません。

20090824  これは大変大変困難な作業です。
 それでは,建築コンクリート用ブロックの JISを取得している企業は
 どのようにしているかというと,かつての個別審査事項に準拠して
 社内規格を編成しています。

現在,分野別認証指針は,生コン,プレキャストコンクリート製品及び鉄鋼製品第一部の3つしかありません。

JISマーク認証      適合性評価―日本工業規格への適合性の認証―
  JIS Q 1001 :2009      一般認証指針
  JIS Q 1011 :2009      分野別認証指針(レディーミクストコンクリート)
  JIS Q 1012 :2009      分野別認証指針(プレキャストコンクリート製品)
  JIS Q 1013 :2005      分野別認証指針(鉄鋼製品第1部)

少し回り道をしました。
次の理由から,JIS Q 1001 の改正によって,「社内規格」 を改訂する必要はありません。
   ● 表現の修正や文章の一部追加などで軽微なこと
   ● 生コンの認証指針は JIS Q 1011 によること

**************************************************************************************************************************************************************************

生コン出荷の激しい減少のダメージを受けたためか,最近このコーナーが業界再建と共に信頼回復への想いのあまり,精神論的なタッチになりがちではないかと心配しています。
そのあたりを何とか解消しようとしたために,纏まりの悪い文章に仕上がってしまいました。

次回は,『 民営化 』 (7月30日)でお約束していた,旧D公団が民営化した N社の「試験練り」についてお話ししたいと考えています。
そのあとは,社内規格の編成の仕方について,自由気ままにウンチクを述べる予定です。

                    残暑や季節の変わり目ですからお体を大切に。
                    そして,お互いインフルエンザの感染に注意しましょう!
                              by ベトン・ボンド

2009年8月12日 (水)

『 超克 』

ボンド,ベトン・ボンド。
コンクリート工事の激減が継続し,各地の生コン協同組合は,工場数を減らす施策を模索していると伺います。

こんな最中,JIS表示認証の取下げ処分を受けた生コン工場が増えている様子です。
処分は,何度もこのコーナーに登場したM社(1年前)を筆頭にして,長崎県 ・ 東京都 ・ 長野県 ・ 神奈川県で連続しています。

取り下げ処分に至ったのは,臨時認証審査や立入検査の結果,管理書類等の改ざんや,各種試験をJISで定める頻度で試験を実施していないなどが発覚したからだそうです。

このうち,“ 管理書類等の改ざん ” の発覚については大変な疑問があります。
約1年前の 『 性善説・性悪説 』 で,JIS認証審査は性善説に基づいて実施されているということを紹介しました。

例えば,国税局の立入検査はその企業が脱税しているかどうかを判断することが目的ですから,企業の経理関係書類を疑って検査すると聞いたことがあります。

しかし,JIS工場に対して実施される臨時認証審査や立入検査は,JIS表示認証取得者がJISの要求事項に適合しているかどうかを判断するための行為です。
このため, “ 管理書類の改ざん ” が発覚するケースは大変めずらしいのです。

過去の事例では,旧JIS制度のころ,ある工場が公示検査だったと記憶していますが,圧縮強度管理図で “改ざん” が発覚したことがあります。

200908121発覚した理由は,ある呼び強度の最新の管理図が,3回前の管理図と全く同じだったためです。

この工場は,この行為を顕著に受け止めましたが,再起を図るのは大変困難であったようです。

ちなみに,この会社は関西地区ではありません。

3回前の管理図と最新の管理図が全く同じであったのは,当時の生コン出荷が大変な旺盛であり,管理書類の整備にかける時間がなく,過去の管理図を再度使用したとのことでした。

ときの通商産業局の担当者の言葉です。
『あのねぇ……,事情は理解しますけど,お宅の書類は何一つ信用しませんよ。
 つまり,残された記録類はすべて信用できませんから!』
この生コン工場は,社長が顛末書を作成して事態収拾をはかりましたが,JISマーク表示一時停止処分を受けたと聞いています。

一方,先のJIS取下げ処分となった生コン工場が立入検査に至ったのは,どうやら元社員の内部告発らしいと伺いました。

これから想像すると,辞退が発生した経緯は概ね次の通りではないでしょうか。

生コン出荷量は減少傾向 が加速し,下げ止まりの感がありません。

生コン出荷量がどんどん減っていますから,会社経営上固定費の削減を行う必要があります。
そこで,長年勤めてきた “あの人” に白羽の矢が立ちます。
感覚の古いオーナであるとなおさらです。
“そういえば,あいつ,生コンの出荷が急がしかったときも生コン車運転もせず,現場に行くわけでもなく机に座ってパソコン見てたな。引退してもらおか”

あの人は,涼しい顔で聞いていましたが,内心は炎が赤々と燃えています。

“ 誰もせえへんかった記録を整備し,工場を守ってきたんや !
  それを不要扱いしやがって。目にモノいわしたる。”

炎は黒い煙をあげながら, “タレコミ” へと発展してゆきます。

長年,工場を守ってきた “あの人” の行為は感情的には理解できますが, “タレコミ” は残念ながら自己否定です。
それは,改ざん作業をおこなった張本人だからです。

現在,生コン出荷量はオイルショック時まで減少しています。
土木・建築業界は,公共事業の発注により,国や政治から仕事を保証され,インフラ整備や雇用確保対策として貢献してきました。

ところが,少子化により将来の財源が心配されるようになると,保全費用の問題もあり,税金を公共事業に投資しなくなってきました。

私たちの業界は,従来の形では存続しにくくなってきており,従来の仕組みを変えるようなアイデアが必要になっています。

そのアイデアを導けるかどうか分かりませんが,“チームワーク” がキーワードとなるのではないでしょうか。

危機艱難を乗り切るのは,特定のヒーローが実施するのではありません。
やはり,組織力が重要なのではないでしょうか。

7月下旬,ある研修会に参加しました。
その研修会で “チームワークがとれている状態” とは,「メンバーが方針(目標)を共有していること」と定義していました。
つまり,メンバーが気心知れている仲の良い状態を指すのではなく,同じ目標に向かって心を合わせていることとしています。
それはまるで,円錐を指すのではないでしょうか。
底面の円が個々のメンバーです。その頂点には共通の方針があります。

200908122かつて,私たち HiRAC が創ったカヌーは,すべて完走し,体力・知力とも勝る学生達を相手に上位入賞をはたしました。
チームワークの勝利でした。

今度の相手は,現在置かれている諸環境です。
新しい仕組みを創造してゆきましょう。
先日,子供とポケモンの映画を観に行きました。
その映画のタイトルのなかに“超克”という文字がありました。

“ 超克 ”とは, 『 困難や苦しみにうちかち,それを乗りこえること 』 という意味だそうです。
まさに私たちの今の状況を表すぴったりの文字です。

200908123  今週から,お盆休みとなります。
 お盆を明けると,
 暑くても残暑というように夏が弱まります。
 今年は,梅雨が長かったせいか夏が短く感じます。
 皆さん,お休みを満喫してください。
                by ベトン・ボンド

2009年7月30日 (木)

『 民営化 』

ボンド,ベトン・ボンド。

2005年に民営化されたある「特殊法人」のお話しです。
この企業が,特殊法人(以下 Dとします)であった頃,
D 内のS 課に対して大変苦い思い出があります。
D が発注した工事では, S 課は工事開始に先立ち
出荷予定の生コン会社の材料の評価と生コン配合の
作成を行います。
かつて,このS課が好んで設計したのは,単位セメント
量や単位水量及び細骨材量を極力小さくした生コン,
すなわち  “ガサガサした”  状態の施工性を軽視した
コンクリートでした。
当時のS課は,生コンの施工性は施工者の技能問題
であるとしていました。 コンクリートの欠点は,当時も
今も大きく変わっていません。

000004_m

耐久性という観点からは,コンクリートに発生しやすい “ ひび割れ ” の発生をいかに少なくするかは永遠のテーマです。
このS課は,ひび割れ発生の主因は“生コンの配合”であると考えていた模様で,ガサガサした生コン配合を好んだようです。

-平成10年頃のS課立会いの配合決定試験練りの様子です-

S課職員は生コンのスランプゲージを細目で見ながら,とにかく首を縦に振りません。
このため,練り落とす生コンがどんどんガサガサになっていき,施工者は生コン会社の技術者と目くばせしながら,青白くなっていきます。
コテで生コンを撫ぜながら,施工者がつぶやきます。

200907301  

 

 

 

 

 

 

「こりゃ……打てへんがな……」

意を決した施工者は訴えます。
「この生コンでは施工できません。」

これを受けたS課職員は,表情を変えることなく淡々と講義を行います。
『よいコンクリートとは,ウンチク・ウンチク………………』

一方,施工者と生コン会社の技術者たちは,時計と講義する S課職員の顔を見比べながら,頭を クルクル回転させ,落としどころを思案します。
   “ こんなことしてたら,試験練り,今日中に終わらへんかもしれへん。
     ガサコン配合を一旦飲むか。打設するトキに対応は考えよっ “
そうです。現場を預かる両者は “ 段取り力 ” が極めて優れているのです。

施工者と生コン会社の技術者は,おだやかさを繕って言います。
「分かりました。S課の指示に従います。」

すかさず,S課職員は淡々と答えます。
『はい。しかし,生コンを製造する方と施工する方の責任で配合を決定しなければなりません。』

「………,さぁ次のバッチでも計量しよか……」

DのS課立会いのもと,理想の配合を決定したにも拘らず,実構造物は供用開始後にひび割れが発生しやすく,その補修に莫大な費用が必要になっているとのうわさでした。200907302

Dは,小泉政権時代に民営化され,「特殊会社」となり社名が新たになりました。
10年のトキを経て,民営化された新たな会社Nの立会いで,コンクリートの配合を決定する機会を得ました。

以前と同様,配合作成の手順は同じでした。
その手順は次の通りです。

  ①使用骨材の確認試験
      細骨材:表乾状態の確認 (表乾コーンによる)
             表面水率測定,ふるい分け試験
      粗骨材:表乾状態の確認(目視),ふるい分け試験

  ②試験練り
   a) 暫定配合の検証     -単位水量の決定
   b) 中心配合の決定     -最適単位水量,S/aの決定(最適候補 S/a ± 3%の確認)
   c) 水セメント比の検証  -圧縮強度とセメント水比の関係把握
                                                 (最適候補 C/W ± 5%の強度確認)

このときに決定する予定のコンクリートは,“吹き付けコンクリート“でした。
このコンクリートは,掘削したトンネル内部や,法面の固定に用いられます。

文字通り,急結剤を添加しながら,壁面にコンクリートを専用の機械で吹き付けるために,ワーカビリティ等の評価が通常のコンクリートと異なり,N社職員立会いで配合を作成するには,特殊なコンクリートです。

配合は,最小セメント量が規定(370kg/m3以上)されていることや,吹き付け時に“ダレ”が発生しないように配慮する必要があります。
このため,上記の b) や c) は実行しましたが,配合決定の説明上行ったに過ぎず,配合決定上あまり意味のある行為ではなかったように思います。
一般のコンクリートの配合決定については,別の日に試験練りを行う予定ですが,民営化してからも,基本的な作業は変わっていないようでした。

**************************************************************************************************************************************************************************

次回の試験練りでお伝えしますが,旧D公団が民営化した現在,“ ガサコン “ を作ることだけに力点を置いているわけでないように思いました。

200907303  一体,梅雨は何時明けるの?
  祝! プロジェクトM 京都通過!
  by ベトン・ボンド

2009年7月23日 (木)

『 黒電話 』

ボンド,ベトン・ボンド。
近畿地方は,まだ梅雨は明けていないようですが,子供たちは “ 夏休み ” を迎えました。
ここ数回にわたり,大変固いお話が続きましたので,今回は夏休みのお話です。

皆さん,“ 黒電話 ” を覚えていますか ?

そうです。文字通り “ 黒い電話機 ” で,現在の電話機のようにFAX機能はもちろん,留守番機能さえもありません。ダイヤルと通話の機能しか持ち合わせていない電話機です。

ボンドの実家でも,20年くらい前まではこの黒電話でした。
今の多機能型電話機は,便利な機能のせいか電話線の他に,電源のためのコンセントが必要です。

懐かしい黒電話は,電源がなく電話線だけでした。
また,黒電話は消耗するような部品もなく故障することがなかったように感じます。

さて,子供たちは先週末から夏休みに突入しています。
そこで,海の日を含む連休を利用して子供達と故郷に帰省しました。

ちょうど1年ぶりの帰省となります。
このときの様子は,『 懐古 』 でも紹介させていただきました。

今回はその続編です。
昨年,いまも変わらない,おばあちゃんとおばあちゃんの家を紹介しました。
このとき,その写真がないことを惜しむ方の声を聞きました。

そんなことも手伝って,今回もまたおばあちゃんとおばあちゃんの家を訪れました。

おやっ !    この黒電話は,未だに故障することなく機能しています。

2009072001 2009072002

また,懐かしいモノがほかにもあります。
ボンドが幼少の頃から,壁に掛かっていた無名画家の静物画はいまもそのままです。

残念ながら,現在は稼動していませんが,おばあちゃんが内職で使用していた繊維用のトヨタ製ミシンもあります。
電源を入れた際に発する,重たい音はいまも耳に残っています。
ボンドの故郷は,繊維産業が盛んです。
また, トヨタは元々織機からスタートしました。

2009072004 2009072003

近年は,変化が激しい時代です。
家電製品等は 3ヶ月毎に新製品登場します。
例えば,DVDレコーダーはビデオデッキに変わって急速に普及しましたが,今ではブルーレイにその地位を奪われています。

また,価値観でさえも次々変化しています。
例えば,多くの国民から圧倒的な支持を受けた “小泉改革” は,当時の評価がいまは覆されているように思います。

このため,常に変化し続けることや新しいモノが重要視されがちですが,不変のモノも必ず存在します。
永遠不滅は不可能かもしれませんが,おばあちゃん と おばあちゃんの家は,さらに長生きしてほしいと強く願っています。
 

2009072005  

 

 

 

 

 

 

1年前,ボンドの実家のベランダからは,お城がのった山が見えたと報告しましたが現在の様子とお城の写真をご覧ください。
今や向かいの大きな家に阻まれていますが,・・・ かつては確かにそれが見えたのです。

2009072006 2009072007

                いったい梅雨は何時になったら明けるのやら……。
                東京の神田にて。
                             by べトン・ボンド

2009年7月17日 (金)

『 蛇口 』

ボンド,ベトン・ボンド。
生コンの出荷量が激減しています(全盛期の約半分くらいまで落ち込んでいます)。
また,その量は落ち込んだまま,回復する兆しがありません。   〔 全国生コン出荷量推移

もはや,生コンは不要な材料なのでしょうか ?
いやいや。生コンは出荷量 “ ゼロ ” とはなりえない材料です。

大阪市内では,数は少ないかもしれませんが,建設用クレーンを目にすることができます。
しかし,生コン需要は明らかに減少しています。
「生コン工場数」が,「生コン需要」に見合っていないと言われています。

生コン工業組合連合会は,この状況を重要視しており,来年 2010年から 5年かけて 1,200の生コン工場を廃棄すると発表しました。  〔 生コンクリート産業の構造改革の基本方針(案)

一方,この発表を受けて “ 経済産業省 ” も JIS規格の運用状況の検査や環境規制を強化する等を検討し,各種施策を後押しすると表明した模様です。   〔 セメント新聞記事

生コン工業組合連合会の発表はうなずけますが,経済産業省の表明はあまり快く思いません。
解釈が間違っていなければ,JIS 制度は高い壁を築くことが出来る性格ではないからです。

JIS製品とはどのような製品であるか御存知ですか?
それは,ある品質について不良率が一定の値以下となるように管理された製品を意味します。

例えば,生コンはスランプや空気量の製品検査結果について,ヒストグラムを作成して管理しています。< br />ヒストグラムは,製品を造りこむ工程が安定状態にあるかどうか判断するために作成します。
安定状態は,視覚的にデータの分布に偏りがないかどうかや,工程能力指数を算出して総合的に判断します。

一般に JIS 工場の工程能力指数は, 1.0 以上が望ましいといわれています。
工程能力指数が1.0 であるとき,規格の上下限を超える確率は 0.54% となります。
つまり,JIS工場に生コンを注文すると,例えばスランプは,地域や工場が違っても規格上下限を外れる確率が 0.54%以下に品質管理された製品を購入することができます。

JISマーク表示制度は,製造工場のランク付けではなく,このように品質管理された工業製品を広く普及することが目的でした。
このため JIS取得を申請する工場は,一定の条件,すなわち,「製品試験が JIS 規格に適合し,将来にわたり組織的な品質管理ができること」を満たしていれば,製品等にJISマークを表示できる権利を取得することができます。
特に生コンのJIS工場は,昭和50年代に爆発的に増殖しました。

新JIS制度になってから,新規取得件数は把握していませんが,旧JIS制度時代,官は生コン工場へのJIS認定をし続けたため,生コンJIS工場数は増え続けました。

あの省庁は,生コン工業組合連合会の方針の後押しを表明するまえに,事態の経過説明を行う必要があるのではないでしょうか?

お話しついでにもう一つ。
平成17年10月より,JIS認証制度が 「工場審査」 から 「製品認証」 に変更され,表示認証に関わる審査等の責任は,官から民に移行されました。
認証審査は,民であればどこでも JIS認証を行えるかというとそうではなくて,国に登録した機関のみが実施することができます。

生コンのJIS規格への適合性を認証できる登録認証機関は,4社程度だったように思います。
国が認可しているにも拘らず,各登録認証機関で認証審査等に必要な料金(審査,変更届等)は,大きく異なっています(7万円~120万円)。
このため,4つ登録認証機関の認証審査数(契約数)は均等にならず,審査費用の安い機関に集中しています。
この省庁から,未だに登録認証機関で審査費用が大きく異なることに関する説明がなされていません。

先にJIS制度は, 「工場審査方式」 から 「製品認証方式」 に変わったと言いましたが,これにより原材料を変更する場合の報告や製造設備変更後の臨時認証審査等の煩わしい手続きがかなり増えて大変混乱しているように感じます。

平成16年頃からその省庁は,新JIS制度に関して,IQCブロック会議や品質管理標準化大会等で盛んに説明を実施してきました。
どの説明会でも「工場審査方式」から「製品認証方式」に制度が変わることを強調して説明していましたが,何故変わるのかについての説明はなかったように思います。

何故変わったのか?
それはTBT協定において,戦略的に日本工業規格(JIS)が国際規格(ISO等)に敗北したためであり,国際規格が日本工業規格より勝っていたわけでないと聞きました。

日本工業規格は大変よく出来た規格ですが,国際競争の波に勝つことができず,日本はJISの運用を変えなければならなかったのです。
制度が変わった背景の主因は,標準化の戦略的な敗北なのです。
説明会で講演した方たちは,経緯を明確にしたうえで,敗北のお詫びをすべきではなかったのでしょうか?

ITは何の略がご存知ですか?
それは, “ インターネットタブ ” の略です。

私たちは,インターネット接続環境が整ったパソコンがあれば,あたかも水道の蛇口をひねるかのようにあらゆる情報を目にすることができます。

かつて,最新技術情報は省庁を通じてしか知ることができませんでした。
ところが,このインターネットの普及により最新技術情報は,省庁より早く入手できるようになりました。

このコーナーの 『 暗黒面Ι 』 に登場したあるゼネコンの技術者は吐き捨てるように言いました。
「 本当は,マンション建設はあんまり受注したくないんですよ。
   だってねぇっ。……
   例えば,マンションを購入した方のなかには,室の不具合をみつけると,
   施工会社名を明らかにして,インターネットで配信するヤツがおるんですよ。
   こうなったらネット上で散々悪口が広がって,本当に販売件数が減ってしまう。
   そうするとディベロッパは,施工者に空き部屋を買わすんですよ…。
   だからあんましマンション建設を受注しないようにしてるんですよ………。」

情報不足で従来の役割が果せなくなっているあの省庁は,JISのハードルを高くして生コン工場の集約を促したり,新規参入を制限しようとしています。
過去に散々増やしておきながら,何故いまさらこのような活動をするのか理解できません。
工場集約等は官より市場に委ねる方が効果があるように思います。

私たち生コン会社は,建物建設を請け負う方々だけを意識しているように感じますが,エンドユーザーとなる,例えばマンションの購入者の目線も視野にいれて仕事すること大切ではないでしょうか(油断するとインターネットであることないこと色々たたかれてシゴトが無くなりますぞ)。

 

Kisetunatu3

 

 

   そろそろ梅雨明け!。
   子供たちは夏休みを迎えます。
   兵庫県出身のBOXING世界チャンピオン
        長谷川穂積選手 祝V9

          ベトン・ボンド

2009年7月 3日 (金)

『 暗黒面Ⅲ 養成 』

ある会議の模様です ( ただし,フィクションです )。

**************************************************************************************************************************************************************************

「我々のエリアは,過当競争地区である。勝ち残るためには,原価対策が必要である。」
「工場としては,極力最小人数で運営しておりますし,固定費の面からも精一杯です。」

「その部分は十分理解している。だから,例の砂を使用してほしい。」
「あの砂を使用した生コンは,JISマークを表示できないと思われますが……。」

「その件は,先方に確認した。最近あらたにJISになったと聞いている。」
「その砂は,生コンの規格で使ってよいと書いてありません。
  また,使用実績も少ないため,生コンへの影響を鑑みて使用したくありません。」

「JIS化された砂を生コンに使えないのはおかしいじゃないか。
  いいか,この砂は無料なんだぞ!
  仮に生コンの規格で使えないとしても,固まってしまえば文句ないし,同じじゃないか!
  少しづつ混ぜて使っていけ!
  それで慣れてきたら全量使え! ○○部長,最高の原価対策じゃないか。いいな」
「………。」

溶融スラグ骨材を原価対策のために使用したあのM社で,このようなやり取りがあったかどうかは分かりません ( しつこいようですがフィクションです ) 。

そのM社の実態は,社長が会社を失い,従業員が職場を失いました。
そればかりか,私たち生コン業界は,信頼を失いました。

M社事件は,レディーミクストコンクリート,プレキャストコンクリート等の,コンクリートに関連するJIS規格が改正される際の説明会で,必ず話題に上がります。

M社が,過当競争による生コン価格の下落に対して,販売価格を是正しようとしたかどうかは,定かでありません。

しかし,“ 固まってしまえば分からない ” との暗黒面のささやきを信じ,無料ではあっても,JIS表示違反となる骨材を使って生コンを製造出荷するという安易な手法を取りました。

そうです。
私たちの生コン業界では,この “ 固まってしまえば分からない ” という概念こそが,最も危険なダークサイドなのです。

ここで再び,タイトルである 「 暗黒面 」 の元になった『 STARWARS 』 のお話です。
この映画のエピソードⅢのストーリーです。

主人公は,最愛の人の死を予見し,これを回避する方法を模索し路頭に迷っています。
これに対し,フォース(理力)のライトサイド(ジェダイ)は, “ 失うものを恐れるな ” と諭します。
一方,ダークサイドは “ 過去に生命を創る 「秘法」 があったから,一緒にこれを編み出そう ” と囁きます。

主人公は,心を迷わせた挙句,最愛の人を死から救うために,ダークサイドに転落します。

欲望のまま力を解放した結果……。
この主人公の行為は,最愛の人の心をつかむことができず,死から救うことができなかったうえに,体の大半がサイボーグ化されてしまいます。

一方のライトサイド(ジェダイ)側は,生命を創る 「秘法」 こそありません。
しかし,ラストシーンでジェダイの老師 “ ヨーダ ” が,冥界に旅だった者と交信する術の存在を明らかにします。

<なお,詳しくは映画をご覧下さい( エピソード III / シスの復讐 Episode III)>

結局ダークサイドという安易な道には解決方法がなく,ライトサイドにこそ,それを補う術があったのです。

安易な道におぼれてはいけません。
これを回避する方法は,ありふれたコトバですが,それは “教育” ではないでしょうか?

教育とは,コンクリート工学を暗記することだけではありません。
折衝する力をつけるような人材を養成する教育が必要です。

ひとつひとつの生コン会社は,大変微力です。
このため協同組合や工業組合を結成しているのではないでしょうか?
これらの組合は,政治力を駆使したシェア割や形骸化した監査を淡々と継続しています。
この 不況の時を 乗り切るためには,人材の育成に主眼を置いた活動をする必要があるのではないでしょうか?

折衝力のある人材。
私たち HiRAC も,人材をはぐくむ努力を惜しむことなく継続していきます。

**************************************************************************************************************************************************************************

20090608  

                                 梅雨が終われば……
                  暑い暑い空が顔を出します
                       by ベトン・ボンド

2009年6月15日 (月)

『 暗黒面Ⅱ 思考停止 』

ボンド,ベトン・ボンド。

トゥルルッ・トゥルルッ【電話が鳴っています】

「はい。○○生コンですが。」
『明日の生コン,ポンプで打つのよ。
40㎜やとポンプ押せへんからね。悪いけど中身20㎜でお願いできる ? 』

「生コン納入書も20㎜になりますがいいですか ? 」
『えぇ ? こまるよ ! だって役所に通らへんもん。ほんじゃ,××生コンに頼むよ ! 』

ガチャン・ツー・ツー………

Aaah

      心の叫び1……<キャンセルかよ ! 庸車キャンセルできへんがな>
       心の叫び2……<応じてるんは,どのプラントや ! >

時折り(?)見かけるシーンです。
40㎜のコンクリートを打設しようとしていますから恐らく,土木工事でしょうね。

**************************************************************************************************************************************************************************あの地方のお話です。
皆さん,覚えていますか?(憂い地域格差無回答天佑 )
この地方にも,数名の賢人がおいでになり,賢人たちは「レディーミクストコンクリート納入書」の単位量記載に関して真っ向から勝負しようと画策しています。
そうです。
上記の電話が頻繁にかかる地方なのです。

先の賢人たちは,自体の元凶に立ち向かうべく,役所の土木工事を管理している部署に,粗骨材の最大寸法を40㎜から20㎜にしてもらえるよう,設計変更を訴えました。

応対した役所の担当者は,すました表情で冷たく答えたそうです。

「前例がありません。
  また,40㎜では圧送できない等の報告は1件も上がってません。
  従いまして,仕様を変更する理由がありません。                           」

長年,“ 施工のしやすさ ( あるいはしにくさ ) ” という課題についてどのように解決してきたのでしょうか?

電話の例のように私たち生コン会社が涙を呑み,怒りをこらえて対応してきました。
心ある施工会社の場合,役所に設計変更を申請する場合もありましたが,役所の裏技 “ 特例処置 ” 対応等で巧みに処理され,設計変更に至らないようです。

この裏技は,前例を認めないための手法で,次のように処理されるとのことです。
たとえば,最大寸法20㎜の生コンを使って工事を進め,工事完了間際に設計変更を申請します。
すると,設計変更するのに十分な工期がない等の理由から,本工事の生コンを特例として処理するのです。

つまり,仕様書が実態に即していないことを明確にするよりも,仕様書を守るためにダークサイドな手法がとられているようです。

生コンを使う場合, “ 打設する ” や “ 打込む ” と表現されますが,何故だかご存知ですか?
1900年代の生コンは,橋台や橋脚等の断面の大きな部材で無筋コンクリートとして利用されていました。
この時代の生コンは,非常に硬練りの生コンを木蛸等で叩きこんで施工していました。
叩きこんで施工していた名残りで,今でも “ 打設する ” や “ 打込む ” といった表現が使われています。

200906151200906152

 

 

 

 

 

 

写真 日本最古のコンクリートダム(布引五本松ダム 1900年)

現在,耐久性200年のコンクリート構造物を目指そうとしている次代です。
「五本松ダム」 のように108歳となっても,なお供用できるすばらしい コンクリート構造物 もありますが,お役人の方々は思考停止(意味のない前例の踏襲)を止め,前例のない事象や提案を積極的に検討し,仕様書を創り替える努力を心からお願いします。

私たち生コン会社は,型枠に生コンを納めるだけがシゴトではありません!
このシリーズは,もうあと一回継続します。
次は,私たち “ 生コン業界 ” のダークサイドを洗い流します。

001279

 

 

 

 

  今回は土木工事に関してと “ お役所 ” に対してでした。
                     by ベトン・ボンド

2009年6月 8日 (月)

『 暗黒面Ⅰ 』

ボンド,ベトン・ボンド。
生コンの受領書に使用材料の単位量記載にまつわるお話です。
このお話は大変な誤解を招く危険性がありますが,勇気を振り絞ってペンを取ります。

**************************************************************************************************************************************************************************平成7年に発生した阪神大震災は,例えば,阪神高速道路の一部が倒壊したことや,崩壊したマンションがかなりあったように,私たちが携わる生コンが使用された鉄筋コンクリートが大きな打撃を受けました。

特に細長い部材(建築物の柱や梁)に使用された鉄筋コンクリートは座屈 が発生しました。
この現象は,むずかしい用語で “ せん断破壊 ” と呼ばれ,建物に深刻なダメージを与え人命にも大きく影響するといわれています。

阪神大震災以降,建物の設計は,鉄筋コンクリートの座屈せん断破壊)を防止するための対策が行われるようになりました。

梁部材には,あばら筋(スターラップ),柱には帯筋(フープ)を細かく配筋して補強するようになりました。〔なぜ鉄筋をいれるのか

つまり,以前に比べて内部の鉄筋が細かく(鉄筋と鉄筋の間隔を狭くして)配置されるようになり,いわゆる,生コンが打設しにくい設計になっています。

5月のある日,数社のゼネコン技術者と食事する機会がありましたが,この技術者たちは口をそろえてこう言いました。
“ 施工しにくい,つまり,打込みにくい生コンは,良い生コンとは言わない。 ”

そこで透かさず,くちばしの黄色い “Mr.ロボット刑事k” が口をはさみます。
“ でも,ゼネコンは打てないスランプのオーダーを止めませんよねぇ。おかしいですよねー ”

その技術者達は,声を絞って寂しそうに応えます。
“ うん。でも,こんなスランプじゃ打てないと設計に言い返すと,工事を止められるんだよねぇ。
 工期延長は現場の責任なんだよ・・・。ヤツらは現場のこと,解ってないんだよ! “

Eeeh

 心の叫び……<だから上限いっぱいのスランプを要求すんのかよ!!!!>

 

ゼネコンさんの内情は詳しく解りませんが,どうやら建物を「造る側」よりも「設計する側」のほうが権限が大きいようです。
あるいは,「造る側」が「設計する側」にうまく説明できないのかもしれません。

しかし,このギャップに対して,生コン工場が安易に 「スランプ上限出荷」 で対応することが問題の解決策になるとは思えません。

STAR WARS ” は,ジョージルーカス監督の有名な映画です。

この作品に,フォース(理力)という不思議な力を,理性で制御する 『 ライトサイド(ジェダイ) 』 と感情のまま開放しようとする 『 ダークサイド(暗黒面) 』 との争いが描かれています。 
全作品(2部6作品)を通じて,安易な道とされている暗黒面に取り込まれた哀れなオトコの物語です。

私たち生コン業界は,土木建築業界の 「施工側」 と 「設計側」 の隔たりを目の当たりにして,ダークサイドな解決法(スランプ上限出荷)を是としてはなりません。

平成22年4月から JIS A 5308 が規定する “ 納入書への単位量記載 ” は,設計側と対話する機会になるかもしれません。

今回は,主に建築工事のお話でした。
次回は,『 暗黒面Ⅱ 』  として土木工事でお話したいと思っています。

**************************************************************************************************************************************************************************

20090608

 

 

 そろそろ梅雨かな?

 過ごしにくい季節を迎えます。

         by ベトン・ボンド

2009年6月 1日 (月)

『 月見草 』

ボンド,ベトン・ボンド。JASS5,軽量骨材についてです。
 現在,JIS A 5308  レディーミクストコンクリート と JIS Q 1011 改正に対応した 『社内規格』 を整備しています。
 その  「社内規格」  の整備は, 用語 の変更などの細かい部分までを対象にしていますので,「修正-印刷-点検」のサイクルを繰り返し実行しています。
 また,登録認証機関への届出書も平行して作成しているため,なかなか前に進みません。

**************************************************************************************************************************************************************************

 さて,2週間ほど前,名古屋方面の方から電話が入りました。

 『 JASS5 で軽量コンクリート 1種の定義が変わったの知ってるか?
  実際のとこ,大阪では軽量 1種の出荷どうしてるんや!・・・        』

 『 ????? ・・・ 』

 『 なんやっ! JASS5 読んでへんのか。
    ええか,ポイントは2つ。
    ひとつは,軽量2種の定義や。
    これまでの2種は,粗骨材100%軽量やったやろ。
    けど,今度から2種は,普通骨材を混ぜてもよいことになったんや。
    その代わり,軽量1種の粗骨材は今までどおり,軽量骨材100%やで。
    それからもうひとつ,
    その軽量1種やけどな,気乾単位容積質量の範囲が改訂されてるでぇ。
    いままで1.7~2.1 t/m3やったんが,1.8~2.1m3 になったんや !!!・・・』

 『 ・・・そんなとこが改訂されてたんですねぇ 』

 『 呑気(のんき)なっやちゃなぁー。
    だからな,大阪の建築工事で軽量1種をどう扱ってるか聞いてるんやがな 』

 『 ・・・すいません。調べますんで時間もらえますか。 』

**************************************************************************************************************************************************************************< /p>

 突然の電話で始まった軽量コンクリートですが,JASS5の2003年版と2009年版の違いを比較して見ましょう。
 まずは種類の比較です。
 表1 をご覧下さい。(見えにくい場合は,表をクリックしてください。)200906011  

 

 

 

 

 

 おやっ?
 軽量コンクリート2種の粗骨材は,主として人工軽量骨材とされていますから,普通骨材を混ぜてもよいのではないかと読み取れます。
 JIS A 5308:2009と比較すると,2種の粗骨材に普通骨材を混ぜた場合,JISマークを表示することができません。

 さて,次に気乾単位容積質量についてです。
 なお,JIS A 5308で軽量コンクリートの単位容積質量は,購入者と協議して指定を受ける事項であり,特に基準値を定めておりません。
 表2 をご覧下さい。

200906012  

 

 

 

 

 

 

 一般に気乾単位容積質量は,定義された推定式から推定値を求めます。

200906013  

 

 

 JASS5 :2009で軽量 1種は,あの“パッキャオ” のようにウェイト階級をアップしています。
 このため,単位セメント量が小さくなる調合,すなわち呼び強度 18 や 21 は 1.8 t/m3  を満足しないのではないかと考えられます。

 そこでAE減水剤使用の軽量1種について標準配合を確認したところ,推定気乾単位容積質量計算値が 1.8 を超えるのは,呼び強度 33 あたりからでした。
 この呼び強度の範囲では,推定気乾単位容積質量計算値が 1750~1820 kg/m3 でした。

 さて大変です。
 私たちの配合では, JASS5 :2009 の 軽量 1種に適合しないのではないかと考えられるからです。

 JASS5の間違いか?
 その願っていたところ,どうやら関東圏では呼び強度 18であっても 1.8t/m3 に適合するとのことでした。

 Why?・・・
 その答えは,使用している人工軽量骨材 の違いに原因がありました。
 関東圏では,日本メサライト工業株式会社 が製造している軽量骨材を使用しています。
 私たちの関西圏では,太平洋セメント株式会社が製造している軽量骨材を使用しています。
 両者の骨材の密度(絶乾状態)を比較すると,粗骨材は 「メサライトのほうが重く」 ,細骨材は 「アサノライトのほうが重たい」 ことが分かりました。

 軽量コンクリートの需要は,軽量 1種のほうが圧倒的に多いため,階級アップに対してはメサライトの方が有利です。
 しかし,残念ながらメサライトは関西圏で入手することができません。

 首都圏マターだけで基準が決定されたのではないかとの疑念もあり,怒りを感じますが,私たちなりに対策を立てる必要があります。

 調合を変更するという方法では,細骨材に密度の大きな 石灰石砕砂 や 高炉スラグ細骨材 を使用するという手段があります。
 しかし,供給の問題があり,これらの細骨材に変更できるかどうかは検討が必要になります。

 さて,もうひとつ。それは手品のからくりのような手法ですが,単位のマジックで何とか解決できるのではないでしょうか。

 推定気乾単位容積質量は単位が kg/m3です。
 一方,JASS5の種類では t/m3 を使用し,かつ,有効数字 2桁で表しています。

 この “からくり” を利用すると,推定値が 1750 kg/m3 は 1.8 t/m3 と表現することができます。

 説明責任が付きまといますが,実際の工事で施工者から指摘された場合,このからくりを利用したらよいのではないでしょうか?

 一昨年頃から,JASS5の改正は大変注目されていました。
 それは,コンクリートの乾燥収縮やヤング係数に基準が設定されると噂されていたからです。

 現在,楽天 野村監督 が現役時代,2500本安打を記録したときのインタビューで長島選手や王選手を “ひまわり” にたとえ,ご本人を “月見草”  に例えました。

 JASS5の改正では,乾燥収縮が長島選手であり,ヤング係数が王選手でした。
 そして軽量 1種は,まるで野村監督 のように密かに改訂されました。

 建築物の耐久性向上(長島選手)や高強度化(王選手)やのほか,軽量化(野村選手)も今後の重大な課題ではないでしょうか。

002091

                                  社内規格の整備で頭が混乱しています

                                       by ベトン・ボンド

2009年5月18日 (月)

『 墨俣城 』

ボンド,ベトン・ボンド。
5月14日(木)の出来事です。
日本建築総合試験所から一通の連絡が!

どうやら,我々が取組んでいたプロジェクトM “Beyond 80” への一環である 「80N/㎜2 の高強度コンクリート生コン単独申請」 が,材料性能評価委員会を無事通過した模様です。

連絡内容によると,申請図書に最終の修正箇所はあるものの,完成図書を提出したのち,国土交通省の諸手続きを経て,認定書が公布されるとのことでした。
最近の傾向では,認定書の発行は,国土交通省に申請図書が提出された約2ヶ月後程度の時間を要している模様です。
つまり,現在は,認定書の発行を待っている状態です。

私たちは, 2年前の 2007年夏に実機実験を開始しました。
また私たちは,この実験をグループの理念通り,全員で取り組んできました。

Beyono801 Beyond802  

  

 

 

 

 

 

60N/㎜2 を超えてもポンプが容易なコンクリートを目指したこの実験は特殊であり,大げさに言えば,生コン単独取得は “前人未踏” の範疇でしたから,グループ力が試された課題であったように思います。

Beyond803  

 

 

 

 

 

 

模擬体作製等の実験を推進し技術図書の整備等を手がけた技術課の方々,その元で製造出荷をリードするとともに,残コン処理をした業務課の方々,運搬を担当したアジテータの運転手,ネバネバの生コンを圧送してくれた株式会社泉北近圧ポンプの方々,そしてなにより,朝から晩遅くまでコア採取を担当した貴方に大変感謝しています。

Beyond804 Beyond805

   

 

 

 

 

  

 

ところで認定書を受け取ったら, “Beyond 80” は完了なのでしょうか?
残念ながら !? ,そうではありません。

『新大阪駅から新幹線に乗って東京に行く』 を例にとって “Beyond 80”  を説明しましょう。

終着  “東京駅”  は,大手ゼネコンの物件への 100N/㎜2 を超える高強度コンの出荷です。
途中の “品川駅”  は,大手ゼネコンと共同で 100N/㎜2 を超える高強度コンの大臣認定を取得することです。
その途中の  “名古屋駅”  は,アストロン使用高強度コンの大臣認定生コン単独取得です。
そしてそのまた途中の  “京都駅”  が, 80N/㎜2 の大臣認定生コン単独取得です。

分かりますか?
私たちの  “Beyond 80”  は,新大阪をスタートして僅か30分程度の位置なのです。

皆さん, “ 墨俣城(すのまたじょう) ” をご存知ですか?
またの名を,墨俣一夜城 とよばれています。

織田信長が,美濃の国を攻略した際,その 橋頭堡(きょうとうほ) が必要とされ,築城したお城です。
織田信長は,築城を敵国である美濃の国の “墨俣” の地に決定しましたが,その場所が敵国内であるが故になかなかお城が築城できません。

織田家の名だたる家臣が,築城に挑戦しますがその都度,攻撃に合い失敗に終わります。
そして,大阪城でおなじみの秀吉が挑戦し,一夜にして築城したのがこの “墨俣城” です。

一夜で築城したことは,どうやら逸話のようですが,短期間で築城されたとすると,現在のプレハブ建築のような工法で築城されたお城といえます。
当時,織田信長の敵であった斉藤竜興の侍たちは,ごく短期間でお城が建てられたことに非常に驚き,結局,織田信長に降伏します。
このお城,完成時には外見だけでお城の内装は全くできていなかったようです。
つまり,戦略上から外見の完成を急いだお城で,内装などはゆっくり仕上げたようです。

私たちの “生コン単独大臣認定 80N/㎜2 ”  はこの墨俣城に似ています。
織田信長は,美濃の国を手中にした後, “天下布武” とのスローガンを掲げ,歴史のその名前を深く刻み,信長亡き後,秀吉は天下を統一しました。

東京駅に終着するための橋頭堡は,完成しつつあります。
あとは,ゆっくり時間をかけて内装 (生コン工場内の体制創り) を強固に,そして美しく仕上げなければなりません。

200905181

 

 

 

   私たちの “墨俣城” を大事にしていきましょう。

       打倒新型インフルエンザ!!
                by ベトン・ボンド

     Unicef

     

     Kataru2

     Kataru2

コピーライト

  • Copyright 2003-2015 Group HiRAC All rights reserved