2009年7月30日 (木)

『 民営化 』

ボンド,ベトン・ボンド。

2005年に民営化されたある「特殊法人」のお話しです。
この企業が,特殊法人(以下 Dとします)であった頃,
D 内のS 課に対して大変苦い思い出があります。
D が発注した工事では, S 課は工事開始に先立ち
出荷予定の生コン会社の材料の評価と生コン配合の
作成を行います。
かつて,このS課が好んで設計したのは,単位セメント
量や単位水量及び細骨材量を極力小さくした生コン,
すなわち  “ガサガサした”  状態の施工性を軽視した
コンクリートでした。
当時のS課は,生コンの施工性は施工者の技能問題
であるとしていました。 コンクリートの欠点は,当時も
今も大きく変わっていません。

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耐久性という観点からは,コンクリートに発生しやすい “ ひび割れ ” の発生をいかに少なくするかは永遠のテーマです。
このS課は,ひび割れ発生の主因は“生コンの配合”であると考えていた模様で,ガサガサした生コン配合を好んだようです。

-平成10年頃のS課立会いの配合決定試験練りの様子です-

S課職員は生コンのスランプゲージを細目で見ながら,とにかく首を縦に振りません。
このため,練り落とす生コンがどんどんガサガサになっていき,施工者は生コン会社の技術者と目くばせしながら,青白くなっていきます。
コテで生コンを撫ぜながら,施工者がつぶやきます。

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「こりゃ……打てへんがな……」

意を決した施工者は訴えます。
「この生コンでは施工できません。」

これを受けたS課職員は,表情を変えることなく淡々と講義を行います。
『よいコンクリートとは,ウンチク・ウンチク………………』

一方,施工者と生コン会社の技術者たちは,時計と講義する S課職員の顔を見比べながら,頭を クルクル回転させ,落としどころを思案します。
   “ こんなことしてたら,試験練り,今日中に終わらへんかもしれへん。
     ガサコン配合を一旦飲むか。打設するトキに対応は考えよっ “
そうです。現場を預かる両者は “ 段取り力 ” が極めて優れているのです。

施工者と生コン会社の技術者は,おだやかさを繕って言います。
「分かりました。S課の指示に従います。」

すかさず,S課職員は淡々と答えます。
『はい。しかし,生コンを製造する方と施工する方の責任で配合を決定しなければなりません。』

「………,さぁ次のバッチでも計量しよか……」

DのS課立会いのもと,理想の配合を決定したにも拘らず,実構造物は供用開始後にひび割れが発生しやすく,その補修に莫大な費用が必要になっているとのうわさでした。200907302

Dは,小泉政権時代に民営化され,「特殊会社」となり社名が新たになりました。
10年のトキを経て,民営化された新たな会社Nの立会いで,コンクリートの配合を決定する機会を得ました。

以前と同様,配合作成の手順は同じでした。
その手順は次の通りです。

  ①使用骨材の確認試験
      細骨材:表乾状態の確認 (表乾コーンによる)
             表面水率測定,ふるい分け試験
      粗骨材:表乾状態の確認(目視),ふるい分け試験

  ②試験練り
   a) 暫定配合の検証     -単位水量の決定
   b) 中心配合の決定     -最適単位水量,S/aの決定(最適候補 S/a ± 3%の確認)
   c) 水セメント比の検証  -圧縮強度とセメント水比の関係把握
                                                 (最適候補 C/W ± 5%の強度確認)

このときに決定する予定のコンクリートは,“吹き付けコンクリート“でした。
このコンクリートは,掘削したトンネル内部や,法面の固定に用いられます。

文字通り,急結剤を添加しながら,壁面にコンクリートを専用の機械で吹き付けるために,ワーカビリティ等の評価が通常のコンクリートと異なり,N社職員立会いで配合を作成するには,特殊なコンクリートです。

配合は,最小セメント量が規定(370kg/m3以上)されていることや,吹き付け時に“ダレ”が発生しないように配慮する必要があります。
このため,上記の b) や c) は実行しましたが,配合決定の説明上行ったに過ぎず,配合決定上あまり意味のある行為ではなかったように思います。
一般のコンクリートの配合決定については,別の日に試験練りを行う予定ですが,民営化してからも,基本的な作業は変わっていないようでした。

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次回の試験練りでお伝えしますが,旧D公団が民営化した現在,“ ガサコン “ を作ることだけに力点を置いているわけでないように思いました。

200907303  一体,梅雨は何時明けるの?
  祝! プロジェクトM 京都通過!
  by ベトン・ボンド

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