再生骨材の転圧コンクリート舗装への利用に関する考察 <eyes of Bond>
R2S - 再循環,崩れない(slump)生コン,不人気(slump)なのは・・・?-
・ 再循環(Recycle)
人類の歴史は,構造物と共に続いています。
ピラミッド,万里の長城,パルテノン神殿,法隆寺,エンパイヤーステイトビル・・・。
私たち Group HiRAC は,生コンクリートを製造しています。
広義のコンクリート(セメント,モルタルを含む)は歴史が古い材料ですが,近代構造物築造に不可欠な鉄筋コンクリートは,誕生してから200年弱程度で,石や木に比べて以外に歴史の浅い材料です。
この鉄筋コンクリートは,19世紀フランスで誕生しました。
1848年,J.Mラムボーというフランス人が,鋼製の金網にモルタルを塗り固めた手漕ぎボート作りの特許取得が,鉄筋コンクリートの第一歩となりました。
この特許から 150年ほど経過した1995年。
日本では,建築廃材としてのコンクリート塊が 3,800万tに達した模様です。
豊かな地球環境を子供たちに,そして孫たちに残せるようリサイクル法に基づき 『建設副産物対策行動計画-リサイクルプラン21』 が策定されました。
私たち Group HiRAC は,コンクリートカヌー競技においてカヌーを自作して参加しました。
この活動は, “左ジャブ” すなわち鉄筋コンクリートの歴史への挑戦でした。
カヌーから 3年。
この度,『再生骨材を用いたRCCP製造』として “右ストレート” つまり,コンクリートの未来を切り拓くリサイクルへの挑戦に携わることができました。
〔参考1〕
コンクリートの歴史
建築材料のリサイクル
・崩れない生コン
2010年2月15日,大阪市大正区にある住友大阪セメント㈱セメントコンクリート研究所。
積み上げられたケースを開けると,再生骨材が保管されています。
“川砂利?!” いやいや,極僅かですかレンガのようなレキも含まれています。
近くで試験練りミキサが乾いた音をたてて動いています。
練混ぜているというより,まぶしているといった感じに見えます。
ミキサから排出されたその姿は,生コンというより土砂。
これが崩れない生コン,すなわち “ゼロスランプ生コン” との出会いでした。
私たちにとって馴染みのない “ゼロスランプ生コン” は,コンクリート製品やダム建設では使用されています。
日常,あまり気にしませんが,私たちは数多くのコンクリート製品に取り囲まれています。
貴方の家と隣の家の境にある塀は?
いつも踏みしめている歩道に敷き詰められたブロックは?
そうそう,あの電柱だって,ドブだってそもそも・・・
このようにコンクリート製品は,数多くの種類があります。
しかし,これらがすべてゼロスランプ生コンを用いて作られているわけではありません。
即脱方式と呼ばれる製造方法の場合にゼロスランプ生コンが使用されます。
即脱方式で製造されるの代表的なコンクリート製品は,インターロッキングブロックや空洞ブロックです。両者とも,即脱専用の特別なプラント設備が導入されています。
2009年8月30日以降,民主党政権においてダムは無駄の代名詞となりましたが,ダムコンクリート打設工法のRCD工法ではゼロスランプ生コンを使用します。
これはゼロスランプ生コンをブルドーザで敷ならし,振動ローラーで締め固めるという工法であり,単位セメント量の軽減(温度ひび割れ発生の防止)や工期短縮が図れるといった特徴があります。
ゼロスランプ生コンをレディーミクストコンクリート工場で製造する機会はほとんどと言ってよい程ありませんが,特定分野においては確かに存在し活用されているのです。
舗装は,路面の泥濘化(雨天時)や砂塵発生(乾燥時)を防止し,平坦性を良くすることやすべり抵抗性をもたせることにより,車両走行や歩行の快適性や安全性を向上させる役割を果たしています。
車両が通行する道路は,アスファルトかコンクリートで舗装されています。両者の特徴比較を表1に示します。
表1.アスファルト舗装とコンクリート舗装の比較
舗装の種類
メリット
デメリット
アスファルト舗装
・石油精製時の廃材(減圧残油)を有効利用
・早期開放性が優れている
・メンテナンスが容易(場所による)
・リサイクルが可能
・石油精製技術が向上に伴い廃材が発生にくくなってきた。
・たわみが発生しやすい
・設計寿命10年程度
・ヒートアイランド現象に悪影響
コンクリート舗装
・設計寿命が長い
・たわみ,耐摩耗性に優れている
・設計寿命20年
・メンテナンス費用が少ない
・ヒートアイランド現象に効果的
・早期開放性に劣る
・目地設計が必要
RCCP(転圧コンクリート舗装)は,従来のコンクリート舗装のデメリット『早期開放性』を改善した工法です。
ダム工法を舗装に取り入れた工法で,ゼロスランプ生コンをアスファルトフィニッシャーで敷き均し,耐圧ローラーで締め固めを行うことで早期開放性を改善しました。
アスファルト舗装のメリットのうち重要なのは,リサイクルが可能なことです。
アスファルト舗装の打換えでは,はつり取った古いアスファルトガラはダンプトラックで回収され再生アスファルトとして再びいずこかの路面舗装となります。
コンクリート舗装は,主に火災対策としてトンネル内に使用されています。
コンクリート舗装をアスファルト舗装に代わり広く普及させるためには,リサイクル率の向上が必要です。
再生骨材とは,廃コンクリートから骨材を回収し,再びコンクリート用として使用する骨材です。
今回,トレーニングした“右ストレート”は,近い将来アスファルト舗装をノックアウトするための秘策だったのです。
〔参考2〕
全国コンクリート製品協会
即脱プラント
ダム用RCD工法
舗装
転圧コンクリート舗装
・不人気なのは…?
生コンクリートは,バッチャプラントが又は操作盤が勝手に練り混ぜるのではありません。
バッチャプラントや操作盤を駆使して,ヒトが5感と第6感を働かせながら練混ぜています。
これまでの経験から申し上げますと,固練り・軟練り,スランプフロー及びゼロスランプであれ,それぞれでバランスというかハーモニーみたいなものがあります。
通常,生コンクリートを製造しているオペレーターは,スランプやスランプフロー試験結果とチャンネルを合わせながら,そのハーモニーみたいなものを感覚として掴みます。
スランプやスランプフローは,大変優れた試験方法です。
この試験は,器具が単純であり大掛かりな装置や,壊れやすい精密な計器を一切使用しません。
このため,実行しやすい簡単な試験です(コーンへの生コンの詰め方や,コーンを3秒で引き抜く等にはコツが要りますが…)。
オペレータは,試験係が行うスランプ試験を直視して,たった今,練混ぜた生コンクリートの感覚と所要スランプを照合しながら6感を磨きます。
現在の生コン工場が,舗装コンクリートから高強度コンクリートで13種類もあるスランプ・スランプフローを製造できるのは,ひとえに試験方法が簡単だからではないでしょうか?
VC試験,再生骨材RCCPの状態を評価する試験方法です。
200Vの電源を必要とするがっしりした振動台,生コン試料をつめる容器,生コン容器設置後に表面に被せる透明のスリット板……。
試験器具もたいそうなら,測定は極めて難しい試験でした。
実際は,舗装する路面にスランプゼロ生コンを敷いた上にタイヤローラーで踏み固める工法です。
踏み潰した後の路面は,平坦であり(凸凹しない)でモルタル分を程よく表面に浮き上がらせなければなりません。
VC試験は,加圧振動させた生コン中のモルタルが容器上面の透明円板に引付くまでに要する時間を測定します。
詳細は,当ウェブの動画をご覧ください(https://hirac.lekumo.biz/main/2010/02/post-28b1.html)。
加圧振動の影響でスリット部分からモルタルが滲みでてきますが,このときの時間がVC値となるわけではありません。
透明円盤へのモルタルの付着が均等に分布し,スリット部分から細骨材が数粒浮き上がった時間を計ります。
何分,計測結果に個人差がでやすい試験ですから,測定結果は,3人がそれぞれ計測し最後に平均した時間を測定結果とします。
加圧振動中。
……測定者の3人はVC振動台を真ん中にして,片手にストップウオッチを握り締めて互いの頭を付け合せながらスリット板とニラめっこしています。
測定者が頭をかがみこんでいるため,たとえ明かりをつけてもスリット板が日陰となり,
透明円盤へのモルタル付着度合いが余計見えにくくなります。
最後まで,付着度合いを見極めることができないヒトもいました。
さて,今回は修正VC値と称する値で評価しています。
私達の耳に,『修正』というコトバがひっかかり,例えば,測定値(ストップウオッチの読み値)を換算し,この換算値で評価するのかなと考えていました。
一般にVC試験は,加圧振動させた生コン中のモルタルが容器上面の透明円板一面に付着する時間を計測します。
ところがRCCPの場合,透明円盤一面の時間では施工性に富んだワーカービリティーを評価できないため,修正と呼称される透明円盤の半分の付着時間で評価するようになった模様です。
どうやら,事前に工事現場でのタイヤローラの締め固めしやすさと,修正VC値の関係を把握して基準値が規定されたようです。
つまりVC試験は,タイヤローラ仕上げやすさを考慮したRCCPを評価するための適切な試験なのです。
挑戦者(再生RCCP)が王者(アスファルト舗装)をノックアウトするためには,パンチだけはなくフットワークが必要ではないでしょうか。
フットワークとは何か?
生コン製造者が開発するRCCPのワーカビリティーを評価する簡易な試験方法です。
科学的根拠のない無責任な空想かもしれません。
RCCPは生コンというより土砂に近いため,そのワーカビリティは,スランプ試験のように糊状の評価ではなく,湿り気というか湿分で評価できないでしょうか?
例えば,コンクリートブロック製造会社は,ブロック製造に使用する生コンを手で握りしめた後の状態(3本程度のひび割れが発生していたら良好)でワーカビリティの良否を判断しています。
これは,生コン会社で細骨材の表乾状態を,触手で判断する作業と類似しています。
それなら,チャップマンフラスコを使って再生RCCPのコンシステンシーを評価できないものかな?……。
産・官・学が連携して,再生RCCPをアスファルト舗装の地位に押し上げようとしています。このうち官・学は,トレーナーとコーチです。
リングで試合をするのは,産である私達生コン会社です。私達のトレーニングと探求は,今始まったばかりです。
最後に,鹿島道路株式会で工学博士や技術士を持つ技術者の方々へ。
本件について,私達と一緒に汗を流してご指導下さいましたこと深く感謝申し上げます。