2009年9月 1日 (火)

『 健忘 』

ボンド,ベトン・ボンド。
なんて言いながら,いつもの調子は出ません。

まずはお詫びします。
民営化 』の最後では,あの特殊法人について再度レポートしますといったメッセージでくくっていました。

一方,あの記事を書いていたのが 盆休み前であったことと, 盆休みをこころゆくまで満喫したためか,『 終夏 』を書き終えるまですっかり忘れていました。

普段,子供には“ウソつきはドロボウの始まり” と諭していますが,言った本人が一番怪しかったようです。

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さて,元公団の▲験課の話の続きです。
前回は,「吹きつけコンクリートの配合作成」でしたが,今回は「通常のコンクリートの配合作成」です。
ひとつの配合を作成するための手順は以下の通りです。

  1. 試験練り用に準備された骨材の確認(表乾状態,粒度分布)
  2. 配合設計値の確認(目標スランプ・空気量,目標強度値の検証)
  3. フレッシュ状態の最適な単位水量・s/aの決定
  4. C/W-σ 関係式,水セメント比の決定

それでは,順番にご説明します。
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1. 試験練り用に準備された骨材の確認
   ここでは,次の試験により準備した骨材を評価します。
   細骨材: ① フローコーンによる表乾状態確認
② JIS A 1111 『 細骨材の表面水率試験 』
③ JIS A 1102 『 骨材のふるい分け試験 』
   粗骨材: ① 目視による表乾状態の確認
② JIS A 1102 『 骨材のふるい分け試験 』

 

200909011

 

細骨材表乾状態の評価は,フローコーンとチャップマンフラスコで表面水率を測定します。
民営化以前の約10年ほど前には,細骨材の表乾密度も測定していました。
現在では,フローコーンで表乾状態を確認したあと,チャップマンフラスコで想定した表面水率が ±0.2% を超えている場合にかぎり,表乾密度を測定するとのことでした。

さて,砕砂を使用する場合に何か疑問が湧きませんか?
氏変更 』 をご覧下さい!
JIS A 5005 が改正されて,砕砂のふるい分け試験は試料の調整方法が改訂されています。
▲験課によると,砕砂のふるい分け試験は JIS A 1102 で実施します。

細骨材のふるい分け試験を実施すると,ふるい目に粒が詰まりやすくなる寸法のふるいがでてきます。
これを放置して,試験の前後の試料の質量差が 1% を超えると再度試験をしなければならなくなりますから注意が必要です。

また,細骨材では 5㎜ふるいに留まる粒(5㎜オーバー)がある場合,粗骨材では 5㎜ふるいを通過する粒(5㎜アンダー)がある場合には,試料の再調整が必要となるますので,これまた注意が必要です。

砕石を使用する場合,砕石1505は 5㎜ふるいでふるって試験練り用としますが,砕石2010について同様で,この作業を怠って試料再調整となる生コン会社がありますのでまたまた,注意が必要です。

天然砂と砕砂や砕石2010と1505等,骨材を混合して使用する場合,細骨材と粗骨材のそれぞれの混合比率は,ふるい分け試験結果から決定します。

この混合比率は,生コン打設の都度,事前に工場でふるい分け試験を行って適正な比率にしなければなりません。

さらに, 5㎜アンダーと 5㎜オーバーについても補正しなければなりません。
この補正は,過大粒・過小粒の補正と呼ばれています。
操作盤の機種によって,操作盤の演算機能で対応できるものがあります。

生コン会社の大半は,この過大粒・過小粒の補正を行っていませんが,これは “かさ容積法” という配合設計方法を採用しているためです。

2. 配合設計値の確認(目標スランプ・空気量,目標強度値の検証)

これは,書面の確認です。
目標スランプ・目標空気量は,生コン会社から打設現場までの運搬時間や,ポンプ圧送距離によって決定します
(特殊法人の仕様書にある程度規定されています)。
また,目標強度を決定するための変動係数の設計値も仕様書に定められています。
通常は,JISコン(工場がJISマークを表示している製品)で使用している変動係数と異なりますので,仕様書をよく読んで対応する必要があります。

3. フレッシュ状態の最適な単位水量・s/aの決定

ここから,試験練り作業を開始します。
ここでは,中心となる配合の単位水量と最適 s/aを決定します。
あらかじめ▲験課には,中心配合の暫定配合を提示しなければなりません。
また,この暫定配合としては,JISコンの配合は採用してくれません。

JIS標準配合の単位水量やs/aは,所定の品質(特にスランプ)を保証するためにかなり安全に設計されています。

暫定配合の提示では,あらかじめ試験練りをおこない安全に設計された部分を削減しておく必要があります。

民営化されたとはいえ▲験課は,程度はともかく “ガサコン” を好みます。
この暫定配合を決定する試験練りは,施工者の立会いで行って,生コンの状態を見せながら,▲験課立会試験の作戦を練るのが理想的です。

さて,▲験課立会試験では,目標スランプが得られる単位水量を決定し,練りあがった生コンの状態(スランプ値,形等)から中心配合の最適 s/a候補をさがします。

中心配合について最適な単位水量と s/aが確立すると,その単位水量を固定して中心配合の s/a候補値から ± 3% 生コンの状態を確認して最適 s/aを決定します。

JIS A 1101 によるスランプ試験は,スランプ値は 0.5㎝単位としています。
ところが最適 s/aをさがすことが目的であるため,スランプ値は 0.1㎝単位で測定します。

s/a候補値から ±3%をおこなうと,
大抵図のように右下がりの結果と
なります。

図をご覧下さい。
これは,s/a候補値を 41%として
います。
ところが,スランプが最大になる
s/aは39%付近です。

 200909013

民営化前は,この試験結果に基づき有無を言わさず,最適s/aを 39%としていましたが,民営化後は,曲線からだけでなく施工者の意見も聞きながら,妥当なs/aを決定しているようです。
あるいは,民営化の理由ではなく,担当者によるのかもしれませんが,以前の考え方は最適 s/a を ピンポイントと考えていたようですが,最近はある範囲に存在していると考えているように感じました。

4. C/W-σ 関係式,水セメント比の決定

最適s/aが決定すると,暫定値と差がない場合でも,再度中心配合を試験練りして,再現したフレッシュコンクリートの性状が所定の品質にあるか確認します。

この再現試験で,フレッシュ性状が所定の品質であると,供試体を採取します。
なお,この再現試験からスランプは,JIS A 1101に従って 0.5㎝単位で報告します。

次にC/W-σ 関係式を作成するために水セメント比を ±5%とします。
このとき,フレッシュコンクリートの品質を一定にする(スランプを合わす)ために,中心配合の粗骨材量はそのままスライドして使用します。
一般に生コン工場は,施工者・運搬距離・季節等の影響下でも所定強度を確保できるよう安全を見込んで配合設計を行います。
このため,目標より高い圧縮強度が得られた場合,それほど神経質になりませんが,そうは問屋がおろしません。

目標強度(配合強度)に対して 10%を超える場合は,C/W-σ 関係式から適正な水セメント比に変更しなければなりません。

強度はともかくとして,最適 s/a や単位水量をスムーズに決定するためには,準備している細骨材と粗骨材を如何に均質にしておくかが重要となります。

配合決定のための試験練り手順を纏めると以下のフローとなります。

      200909012

実際の出荷を考えるとき,生コンの配合設計は以下の理由で,JISコン のように過剰な安全を見込んでいるほうが合理的であると思います。
骨材は分離しやすい(1m程度の高さから落下するだけでも分離すると言われている)。
ゆえにサイロやストックヤードで保管された骨材を均質に保つことは不可能。
標準配合は,必ず所定の品質が得られるのではなく,所定品質が得られやすい配合。

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000875

 

 

 『健忘』を払拭するために,今回も !? 力を込めました。
 多少偏見が加わっていますが,
              何かの参考になれば幸いです。
              by ベトン・ボンド

 

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