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2009年10月

2009年10月25日 (日)

『 咖喱 〔その1〕 』

ボンド,ベトン・ボンド
今回より “ 原材料の管理 ” に関する「社内規格編成」のウンチクを語りたいと思います。 

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Br1    さて,今回のタイトルは何と読むかご存知でしょうか?
カリーと読みます。

また,何を指しているかわかりますか ?
そう,ハウス食品社で発売している レトルトカレー のひとつです。 Kikaku030

冒頭にも言いましたが 「原材料」 のお話です。
この 「 原材料 」 というワードを 「 食材 」 と考えるとイメージしやすくなるのではないでしょうか。

原材料が食材なら,レディーミクストコンクリートも何かに・・・。
レディーミクストコンクリートは最も普及した工業製品です。
ここでは,レディーミクストコンクリートを,
子供から大人まで広く好まれる “ カレーライス ” に例えます。

本コーナーは,漢字のタイトルがこだわりです。
そこで,漢字の付いたレトルトカレーがあったのを思い出し,それを拝借しました。

コンクリートは,どのような材料かをあらためて考えてみましょう。

その前に “ 城の石垣 ” をご覧下さい。 Kikaku0301
石垣は大きな石を適度な大きさに切り出して積み上げた
強固な土台です。
コンクリートは,石垣に類似しています。
それは,ある大きさの桝,例えば型枠に骨材を敷き詰め,
骨材のすき間を接着効果のあるセメントペーストで充填
して,ある強度を持たせた材料です。

一方,カレーライスは,米粒と米粒を味の付いたルーで繋いだ食べ物ですから,レディーミクストコンクリートと似ています。

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Br2   さあ,前置きがすっかり長くなりましたが,・・・
私たちの “カレーライス(レディーミクストコンクリート)” を 製造 ? する手順を綴った 「社内規格」 の作り方です。

カレールーをモルタルに,ご飯を骨材に例えて,お話を展開します。

レディーミクストコンクリートは,工事の内容や打設部位に応じて様々な “味” が要求されます。
激辛,辛口,中辛,甘口・・・。
それでは,味さえよければすべてヨシか ? というと,そういうわけではありません。
やはり,使う材料について JIS Q 1011 に管理方法(組み立て説明図)が, JIS A 5308 にそれぞれについて規格(パーツ)があります。

カレールーの材料は,セメント,水,化学混和剤,細骨材です。
細骨材については,次回骨材のところでお話をします。

表2 ,表3 ,表4 は,セメント,水,化学混和剤の解説表です。
表1 は,JIS Q 1011 の附属書A の「表の注記」と「表の注」です。

表1.JIS Q 1011 附属書A 「表の注記」と「表の注」   表はクリックすると拡大します。
Kikaku0305

表1 には,重要な事項が記載されており,納入伝票にJISマークを附して出荷する生コンに使用する材料については 「社内規格」 で規定するよう要求しています。

例えば,混和材料のなかには 「膨張材」 があります。
時折,「膨張材」 入りの生コンの引き合いがありますが,多くの JIS工場では,この生コンに JISマークを附さずに出荷します。
それは,現状では,その出荷頻度が比較的低いからです。
このように出荷頻度が高くない生コンを標準化し JISマークを附すと,生コン工場は管理が複雑となります。
需要や出荷量を考慮して標準化する生コンと,使用する原材料は十分検討しておく必要があります。

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Br5 カレー粉に該当する 「 セメント 」 について説明します。
もう一度,表1 をご覧下さい。
理解に苦しむ記述があります。
セメントの製造業者とは “ その品質に責を負う製造業者 “ という記述です。
分かりにくいですが,セメントのOEM を容認しているような表現です。
近年,セメント会社はセメント需要の低下に対応し,セメント製造工場を閉鎖しています。
このため,自社生産が追いつかない場合や,自社生産から撤退し低コストで市場への製品供給を試みた場合に導入する手法に関する記述なのかもしれません。

一方,表2 では,保管方法として “異なるセメントの製造業者のセメントを貯蔵する場合・・・” ,つまり,トイレ洗浄剤の注意事項 『 混ぜるな危険 』 に類似した記述もあります。

セメント製造業者自身がOEM をおこなう場合は,責任はセメント製造業者にありますが,生コン工場のセメントサイロで複数の製造業者のセメントを保管する場合には,品質に係る責任の所在がかなり曖昧となる気がします。

表2.セメント 表はクリックすると拡大します。
Kikaku0302  

いずれにせよ,複数のセメント製造業者のセメントを,同時に標準化する場合は,商流問題等に加え,セメントサイロの保有数等の設備条件を十分考慮しなければなりません。

さて,具体的な 「社内規格」 はどうするのかについてです。
一般にセメントの受入検査は,月 1回,セメント製造業者が発行する試験成績表を確認します。
セメント試験成績表は,品質項目に対して,平均値・標準偏差・最大値・最小値等の様々な数値が記入されています。
「社内規格」では,「原材料規格」や「受入検査規定」として,セメント試験成績表の何を確認するのかを規定します。

確認する品質項目は,セメントの規格 『JIS R 5210 ~ JIS R 5214 』 をそのまま適用します。
代表的なセメントの規格を表2-1 に示します。
表2-1 に示す項目に関して,セメント試験成績表の平均値が適合しているかどうか確認します。

おやっ? 組立説明書には,次の不思議な表現があります。
“ 品質及びそのばらつきにを確認する ” 〔表2 下線〕

このため,標準偏差や最大値(または最小値)についても基準を設定しなければなりません。
セメント試験成績表で標準偏差は,「比表面積」・「圧縮強さ」に数値が記入されています。
管理基準値は,セメント製造業者と協議等をして決定します。

旧JIS制度の公示検査で,ある検査機関は,「圧縮強さ」は,平均値と標準偏差から圧縮強さの最低値を推定し,その最低値が JIS R 5210 ~ JIS R 5214 の圧縮強さに適合することを確認するよう要請していました。

このため,関西地区では,セメントの「圧縮強さ」に関して,平均値・標準偏差及び最低圧縮強さに,それぞれ受入基準値を設定しています。

また,「圧縮強さ」は,製造業者が発行するセメント試験成績表で確認する以外に,6ヶ月に1回及び製造業者変更の都度,第三者試験機関に試験を依頼して確認しなければなりません。

この試験は,セメントの種類及び出荷基地毎に実施しなければなりません。
ただし,特例措置(?)が用意されています。

セメントは,ひとつの出荷基地から複数の生コン工場に出荷されています。
この特性を利用できるように,JIS Q 1011では “同一セメントの製造業者の同一出荷場所から供給を受けている 複数のレディーミクストコンクリート の工場 の間では, 代表的試料について共同で確認してもよい ” と記載されています。

ただし,この記述があるために,セメントは製造業者だけを規定するだけでなく,出荷基地も 定めておかなければなりません。
ところで,セメントの出荷基地ですが,セメント製造工場も出荷基地としての機能があるために,セメント製造工場を記載している生コン工場が存在します。
このため,生コン会社の「社内規格」には,セメント製造工場も規定しなければならないと勘違いをされている方があります。
繰り返しますが,規定しなければならないのは,セメント製造工場ではなく,「セメント出荷基地」です。
この第三者試験機関は,セメント協会や生コンクリート協業組合協同試験所等が該当します。

また,生コンの配合は,所要品質に対して各材料の容積割合を変えて設計しています。
このため,セメントは種類に依らず,品質基準として密度の基準も規定しておく必要があります。
この密度の基準値は,同様にセメント製造業者の推奨する数値で決定します。

最後にセメントは意外と多くの種類が規定されていますが,関西で標準化の対象となるセメントは,ポルトランドセメントの 3タイプ(普通,早強,低熱)と高炉セメント B種の合わせて 4つです。
なお,高強度コンクリートの表示認証を受けている場合,登録認証機関によっては, セメントの基準値を, 高強度コンクリート製造マニュアル と整合させなければなりません。

表2-1.代表的なセメントのJIS規格 表はクリックすると拡大します。
Kikaku03021

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Br4    次に水のお話です。
カレーライスは食べ物ですから,作る際に使用する水は,飲料水だけが使われます。
ところが,レディーミクストコンクリートの練混ぜ水は,「上水道水」以外に各種の水を使用することができます。

飲料水として一般家庭で使用される 「上水道水」 は,試験をせずに使用できますが,この旨を 「社内規格」 に規定しておかなければなりません。

「スラッジ水」を標準化している場合,「あらかじめ定めたスラッジ固形分率」を確保するために,「上水道水」や「上水道水以外の水(地下水,工業用水等)」で希釈して使用します。
このため,JIS A 5308 附属書Cでは,「スラッジ水」の品質試験に使用する試験試料の条件が定められているため,この部分を 「社内規格」 に規定しておく必要があります。

表3.水 表はクリックすると拡大します。
Kikaku0303

やはり,カレールーのお話は長くなりますね。
ここまでで目が疲れてしまった方は,少し休憩してください。

Br3 最後に化学混和剤についてです。
この化学混和剤は,カレールーでは,にんにくやペッパ等の香辛料に該当します。
香辛料は決して大量に使用されませんが,使わないとモノ足りない味になります。

セメントと同様,化学混和剤は JIS A 6204 としての規格が存在し, JIS A 5308 もこれを引用しています。

化学混和剤の受入検査は,セメントと同様,製造業者が発行する試験成績表の確認となりますが,その頻度は 1回/ 3ヶ月です。
JIS Q 1011 ではこれ以外に,入荷の都度,銘柄(種類)を確認するよう規定しているため,この旨を, 「受入検査規定」 で明記しなければなりません

混和材料は,化学混和剤以外にも,多数 JISとして規格化されていますが,市場に十分安定した量で汎用していないため,これらを標準化している生コン工場は少ないように思われます。
なお,2009年に改正された JIS A 5308と JIS Q 1011では,共に JIS規格で規定されていない混和材料についての記述が追加されました。

JISで規定されていない混和材料は,例えば,「収縮低減剤」が該当します。
怒鳴り声が聞こえます。
『ちょっと待った ! 「収縮低減形」の高性能AE減水剤があるやんけ ! 』

残念ながら,「収縮低減剤」 自身は JISとして規格化されていません。
そこで,化学混和剤メーカーは,高性能AE減水剤のJIS基準に適合する条件で,「収縮低減剤」を高性能AE減水剤に添加して商品化しました。
このため,「収縮低減剤」 と高性能AE減水剤(収縮低減タイプ)を比較すると,収縮低減効果は前者のほうが圧倒的に大きいと言われています。

近年,コンクリートの乾燥収縮に対する関心が大変高くなってきており,「収縮低減剤」 を使用しないとコンクリートの収縮率が,要求事項を保証できない地域がでてくると思われます。
特に建築工事は,建築基準法第37条により,構造体に使用するコンクリートは, JIS製品若しくは大臣認定を受けたものとされています。
このため,地域によっては 「収縮低減剤」 を標準化する生コン会社が現れるかもしれません。
JIS規格のない混和材料の使用は,購入者から指定を受けなければならないという条件がありますが,いずれこの種の混和材料を標準化しなければならない時代が訪れるような気がしています。
従って,実際には具体的な商品を標準化していない工場であっても, JIS規格のない混和材料の概要を 「社内規格」 で規定しておくほうが良いと考えています。

表4.化学混和材 表はクリックすると拡大します。
Kikaku0304

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長い文章にお付き合い下さって誠にありがとうございます。
次回は,骨材についてのお話をします。

言い忘れましたが,セメントのJIS規格が近々改正される模様です。
興味のある方は,日本工業標準調査会第25回土木技術専門委員会配付資料 をご覧ください。

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この文章を書く間に,日没はますます早くなり,季節は確実に冬に向かっています。 

 Kikaku0306   世の中はそろそろクリスマス商戦に突入か?
                                  by ベトン・ボンド

リタイヤ

Kojin13 きのう,久しぶりに野球をテレビ観戦した。

Kojin13 パリーグのクライマックスシリーズである。

   自らの去就問題でマスコミを賑わしていた,野村監督の戦い方を見たかったからである。
   結果,1勝3敗で,監督を去ることになった。

Kojin13 実のところ,嫌いではないが苦手な監督の一人である。
   でも,時折発するコメントの,仕事にかけた時の深さにハッとさせられる。

      先入観は罪、偏見は悪 
      安打多くして,得点少なし
      戦いに勝つは易し、勝ちを守るは難し
      人生の最大の敵,それは「鈍感」である
      勝ちに不思議の勝ちあり,負けに不思議の負けなし

_05 ノムさん22分間最後のボヤキ 』 が,日刊スポーツに掲載されていた。

      ・ 仙台のファンの人、ごめんなさいね。

      ・ ビッグゲームはチームの力が一番出る。
          チームへの指導,教育がもろに出る。 嫌なことをやってくる。
          ここまでくると力の差はない。 メンタルな部分の差だ。
          それがうちはできない。 日ごろの教育の大事さをしみじみ思う。

      ・  相手のスキを突く,気配を感じる。 空気を読む。 それがオレの大好きな無形の力だ。
          言葉でやんや言ってきても,全然,選手たちが理解できなかった。

      ・  こういう教育は誰がやるのか。 その辺が定かでない。

      ・  こっちはだれにするか迷う。
          信頼,信用していないのが以心伝心伝わる。
          監督は選手を生かさないといけないのに殺してしまった。

      ・  教え子が野球界にいるのは,やっぱり縁だね。 喜ばしいこと。
          人間何を残すかで評価されるけど,人を残すのが一番。
          少しは野球界に貢献できたかなという心境だ。

Kojin13  ひまわりと称した長島選手との確執が伝えられるが,
     『 球界全体を活性化させるため 』 の戦略だったと知る人は少ない。

Kojin13  『 人を残すのが一番 』 - 身近では,聞かない言葉である。

 月見草のボヤキは聞けなくなる。

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2009年10月11日 (日)

『 色調 』

ボンド,ベトン・ボンド。
今回は,前回の延長です。
このブログに初めてアクセスした方や内容を忘れた方は 『 模型 』 からご覧下さい。

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さて, 『 模型 』 の表2. 「社内規格」の項目例を見てください。
A1. 製品の管理の項目の中には,
「製品規格」 と 「製品検査規格」 以外に 「配合設計標準」 ,「標準配合変更及び修正基準」 , 「アルカリシリカ反応抑制対策の方法」 の 3項目があります。

これら 3項目は組み立て説明図(JIS Q 1011)〔『 模型 』の表3〕 のどの部分から発生したのかを説明します。

4. 配合には,注(3)があります。
これに該当する 注(3)を穴が開くほど眺めると,次の文字が目につきます。

Ⅰ) 標準配合を規定する
Ⅱ) 配合設計基準を規定する
Ⅲ) 標準配合の変更及び修正の条件・方法を規定する
Ⅳ) アルカリシリカ抑制対策の方法を明示

な~るほど!
Ⅰ)とⅡ)が「配合設計標準」に,
Ⅲ)が「標準配合変更及び修正基準」となり,
Ⅳ)が「アルカリシリカ反応抑制対策の方法」となるのか。
でも,どのような内容にすればいいの ?

そうですね。 「製品規格」 と 「製品検査規格」 には,JIS A 5308 というパーツがありました。

3項目のうち 「アルカリシリカ反応抑制対策の方法」 だけは,JIS A 5308 附属書B に該当するパーツがあります。

では,この 附属書B を丸写しにすればいいかというとそうはいきません。
例えば, 附属書B には,抑制対策の中に混合セメントを使用する方法が記載されていますが,高炉セメントC種やフライアッシュC種は販売されているかどうか不明です。
実際に,これらを常時製造販売しているセメント会社は聞いたことがありません。

混合セメントを使用する方法のうち, 1番現実的なのが高炉セメントB種の使用であり,可能性がゼロではないのが,フライアッシュセメントB種の使用ではないでしょうか。
「社内規格」 に高炉セメントC種やフライアッシュC種の使用を,「抑制対策」 として記載するのは如何なものかと思います。

その他の抑制対策(アルカリ総量計算,安全である骨材の使用)については, 附属書B の表現をそのまま 「社内規格」 に規定します。

さて,すこし脱線します(得意の悪口の始まりです)。
ある省の通達によると,アルカリシリカ抑制対策は以下の順位で行います
1) アルカリ総量による抑制
2) 混合セメントによる抑制
3) 安全である骨材の使用

土木工事では,高炉セメントB種を使用するコンクリート工事が,建築工事に比べて多いように感じます。
また,管理を任された役人のなかには,先の通達を遵守しようと躍起になる方が出現します。
高炉セメントB種を使用することが,既に抑制対策となっているにも拘らず,アルカリ総量計算の提出を求める方がいます。

あれっ? セメント試験成績表に高炉セメントB種の全アルカリ量は数値があったかな?
いいところに気がつきました。
高炉セメントB種 はベースセメントの全アルカリ量しか記載されていません。

そうか ! スラグの混合率で補正して計算すればええねん !
高炉セメントB種 のスラグの混合率は,試験成績表に40~45%と記載されてますね。
アルカリ総量は,確かにこの方法で計算できます。
しかし,意味のある計算結果なのでしょうか ?

混合セメントである高炉セメントB種やフライアッシュB種は,普通ポルトランドセメントに高炉スラグやフライアッシュを添加しています。
元のポルトランドセメントの全アルカリ量は,添加材によって薄められますが,これが抑制対策となっているのではありません。

『 コンクリート技術者のためのセメント化学雑論 』 (社団法人セメント協会発行) には,スラグやフライアッシュの 「ポゾラン反応が,アルカリシリカ反応を抑制する効果がある」 と書かれています。

つまり,高炉セメントB種を使用するコンクリートについて, 「アルカリ総量計算を要求すること」 はナンセンスなのです。
役人が管理を行ううえで実施すべきことは,書かれた内容を理解することなく,通達どおり実行することなのでしょうか ?
私たちはこのような場面にでくわしたときには,説明する努力をしなければなりません。

随分長く,道を反れました。
Ⅰ) と Ⅱ) を含まなければならない 「配合設計標準」 の話に移ります。
この分野は,JIS Q 1011 に組み立て設計図に要求事項はあるものの,パーツは JIS A 5308 には存在しません。

さて, 「配合設計標準」 では,コンクリートの配合設計手順等を規定します。
もっと解りやすく言うと,例えば  24-18-20 N  などの標準配合表が出来上がるまでの,手順を示します。

表.配合設計方法と準備事項
 
Kikaku0201  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
現場に 「配合計画書」 を提出する際には,よく 「配合計算書」 も添付します。
この 「配合計算書」 を文書で説明すると 「配合設計標準」 となります。

「配合計算書」 を眺めてください。
各々の計算過程の中に  “当工場の実積による”  と言った類のコトバが点在していませんか ?
このコトバが使用されている項目は,生コン工場の責任で決定しなければなりません。

複合材料であるレディーミクストコンクリートの諸品質は,使用材料の影響を大きく受けると言われています。
「製品規格」 は JIS A 5308のなかにパーツがあると説明しましたが, 「配合設計標準」 ではパーツ自身も生コン工場が造らなければなりません。

レディーミクストコンクリートの標準配合は,室内試験の結果を目安にして単位水量,かさ容積表(s/a法の場合はs/a表),セメント水比と圧縮強度の関係式を決定します。

なぜ室内試験の結果を目安にするかというと, 『 健忘 』 の最後にも書きましたが,生コンの使用材料の品質は一定ではなく変動するため,室内試験結果は,準備した材料の結果にすぎません。
そこで,室内試験結果と想定した材料変動から,安全を見込んで諸設計値を決定します。

例の公団は,室内試験により配合を決定していますが,事前に過去の実績 (同じあるいは類似の使用材料) を照合して,ある程度の単位水量や s/a を想定しています。
室内試験も重要ですが  “ 実績に基づく諸設計値 ”  が最も精度がよいと思います。

阪神地区の生コン会社は,協同販売上の理由から大阪兵庫生コンクリート工業組合の標準配合表を使用しています。
たとえば, 「配合設計標準」 では,大阪兵庫生コンクリート工業組合の 「標準配合設計」 を使うこともひとつの考え方です。
なお,建築学会仕様書(JASS5)等の仕様書は,標準的なかさ容積表や単位水量表を掲載していますのでこれらを参考にすることも,もちろん有効です。

次に
Ⅲ) 「標準配合の変更」 及び 「修正の条件・方法」 を規定するについてお話しします。
ここでは, 「変更」 と 「修正」 の定義を考える必要があります。

「変更」 とは,設計値の変更に伴い標準配合表をすべて変えてしまうことであり,これを実行すると操作盤に登録する配合(出荷管理装置に記憶させる配合)の更新(再度インプット)が必要となります。

「修正」 とは,例えば使用材料の特性値(密度,実積率,粗粒率等)が一時的に基準を外れたこと等により標準配合表自身の変更は行わず暫定的に配合を変更することを意味します。
このため,修正中に出荷する配合についてのみ暫定的に配合を変更します。
ただし, 「修正」 が慢性化すると標準配合変更を検討しなければなりません。

どのような現象が発生したときに標準配合を修正するか,または変更するかをよく検討しておく必要があります。
修正(変更)方法は,土木学会コンクリート標準示方書(RC)や建築学会仕様書(JASS5)を参考にします。

いずれにせよ,配合設計や修正・補正として規定する事項は,基本的に制約がなく,“ 模型造り ” というより “ 模型の色塗り ” という意味合いが濃いように思います。

皆様の 「社内規格」 に規定してある 「配合設計標準」 や 「標準配合の変更及び修正の条件」 は,色調が皆様の工場にマッチしていますか?

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Kikaku0202

 運動会の季節です。
 HiRAC応援団長
 帽子が飛びそうになるのを
 かぶりなおして疾走しましたが,
 残念ながら 1位では なく 2位でした
 (左から 2番目の白帽子)。
 
Kikaku0203 

 

  幼いわたちも
  HiRACの一員
  でちゅ!

 

                     今回の写真は少し照れています。
                            by ベトン・ボンド

2009年10月 4日 (日)

『 模型 』

ボンド,ベトン・ボンド。
今回より, 「社内規格」 の編成の仕方について偏見を語りたいと思います。

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さて,JIS工場は品質管理を行ううえで,まず 「社内規格」 を整備しなければなりません。
生コンは JIS取得の歴史が比較的深く,生コンJIS工場の 「社内規格」 は既に形態が完成していることから,1から作るという経験を積むことが困難となっています。

例えば,JIS A 5308が改正されたとき,改正箇所に該当する頁を探して変更することはあっても作り直すことはまずありません。

さて,あのナゾナゾを思い出して下さい。
JIS工場が遵守しなければならない項目は 5つありました。
氏変更 』,『 折衝 』,『 春一番 』,『 急告 』,『 残渣

これら 5項目と 「社内規格」 の係わりを “ 絵 ” にして見ましょう。

Kikaku0101 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり,品質管理された生コンを製造するための準備とその審査方法は以下の通りです。

表1.準備内容と審査方式

Kikaku0102  

 

 

 

 

「社内規格」 の内容を大きく分類すると, 「 統括的事項 」 と 「 個別事項 」 の 2つの分野から成立しています。
統括的事項は,いかに工場を運営するかといったシステム的な色が濃いため,よりましな内容はあっても完璧な状態はないと考えられます。
そこでこのシリーズでは,まず個別事項から進めて行きたいと思います。
個別事項は,JIS Q 1011の附属書Aとして 6つに大別されて記載されています。
それぞれから出現する 「社内規格」 の項目例を表2に示します。

                                     表2.個別事項と社内規格項目例

Kikaku0103 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて,次になぜこのような 「社内規格項目例」 となるのかも含めて説明します。
今回は,A1.製品の管理から始めます。

その前に……。本日のキーワードです。

模型(プラモデル)を憶えていますか?
男性の方々は子供の頃に経験があり,あるいは大人になっても趣味にしている方がいるかもしれません。

Kikaku0104 ボンド自身,小学生の頃に “ガンダム” のプラモデルを作った記憶があります。
 その記憶によると,プラモデルは紙箱に入っていました。
 箱の表面には,船,車,ロボット等の,模型の対象となったモノが描かれて
 います。
 箱を開けると,各パーツと組み立て説明が入っています。
 組み立て説明図に従って,各パーツを組み立てて色を塗ると完成します。

実は,個別事項に関する 「社内規格」 の作成は,模型(プラモデル)作りとよく似ています。

JIS Q 1011 付属書A の各項目は,ガンダムにたとえると,顔や胴体等に相当する,各部分毎の組み立て説明書です。
対応する JIS A 5308 の諸内容が各パーツとなります。

模型は色を自由に塗ることができます。
社内規格作成で模型の色に該当するのは,内容の記載方法等です。
図や表を活用してもよいし, 「社内規格」 を社内の法律と位置付けをして六法全書のように文字ばかりで表現してもかまいません(ボンドは前者を支持します)。

そのようにして完成した 「社内規格」 を遵守すると,品質管理された生コンが完成します。

では, 「製品の管理」 に関する 「社内規格」 を編成する方法を表3に示します。

表3.製品の管理―組み立て説明図とパーツ―   表はクリックすると拡大します。

Kikaku0105

赤字部分は 「製品規格」 に,青字部分は 「製品検査規格」  になります。
JIS Q 1011 に該当する項目は,それぞれ 「社内規格」 で規定しておけよという項目です。
JIS A 5308 の該当する部分には,規定すべき項目に該当する内容です。

あれっ? 「製品規格」って JIS A 5308 の本文を丸写しするんじゃないの?
確かにそのように考えている登録認証機関や審査官もいます。
しかし,表3 を踏まえると「製品規格」に,原材料や設備などに関する記述が必要でしょうか?
また,すべて丸写しすると,次のリスクを背負うことになります。

原材料や設備に関連する内容は, 「製品規格」 以外の章,すなわち 「原材料規格」 や 「設備規格」 でも同じ内容を記述しているはずです。
つまり,今年(2009年)の 3月のように JIS A 5308 や JIS Q 1011 が改正されたとき,該当する項目について 「製品規格」 は改正したが, 「原材料規格」  の方は忘れていたなんていう 事態に,おちいる可能性があります。

正しいのはどちらかと問われると答えに窮しますが,ボンドは JIS A 5308 本文のなかから,JIS Q 1011 の製品の管理で品質項目に該当する部分を 「製品規格」 としているタイプを好みます。

なお,表3には分類すらされておりませんが,JISマークの表示に関する告示事項(生コンの場合,納入書に外径10㎜のJISマークを附す等)について規定する必要があります。

さて, 「製品検査規格」 についての注意事項ですが,購入者と協議のうえ指定した(受けた)事項の検査について,規定しなければならないことを見過ごすケースをよく見かけます。

また, 「製品検査規格」 は検査を行うための試験方法について定めていますから,JIS A 5308 9.試験方法の内容を注釈等で記載しておくとよいでしょう。

今回はかなり紙面を使いました。
ここまで読まれた方も大変疲れたと思います。

お読みくださった貴方が生コン JIS工場に従事しているなら,ご自分の会社の 「社内規格」 を開いて,今一度, 「製品規格」 と 「製品検査規格」 を眺めてみてください。
そして,左側に JIS A 5308 を右側に JIS Q 1011 をおいて,よく見比べてください。

「社内規格」 は,ただ JIS規格 を丸写ししただけのものではありません。
たとえ誤字があろうとも,作成者たちが, 「 よりよい製品を製造するために 」 想像力を働かせ, ひと文字ひと文字を 刻んだ傑作なのです。

表2の 「社内規格項目例」 をみると, 「製品規格」 と 「製品検査規格」 以外 に 3つの項目が
あります。
何故か ? ,そしてそれらはどこから生まれたか ? については,次回とします。

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001481_m  

 

 

 

 最近,文章を創るのに大変時間が掛かるようになりました。
 深まりつつ秋とともに,トシを感じます。
                          by ベトン・ボンド

     Unicef

     

     Kataru2

     Kataru2

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