『 色調 』
ボンド,ベトン・ボンド。
今回は,前回の延長です。
このブログに初めてアクセスした方や内容を忘れた方は 『 模型 』 からご覧下さい。
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さて, 『 模型 』 の表2. 「社内規格」の項目例を見てください。
A1. 製品の管理の項目の中には,
「製品規格」 と 「製品検査規格」 以外に 「配合設計標準」 ,「標準配合変更及び修正基準」 , 「アルカリシリカ反応抑制対策の方法」 の 3項目があります。
これら 3項目は組み立て説明図(JIS Q 1011)〔『 模型 』の表3〕 のどの部分から発生したのかを説明します。
4. 配合には,注(3)があります。
これに該当する 注(3)を穴が開くほど眺めると,次の文字が目につきます。
Ⅰ) 標準配合を規定する
Ⅱ) 配合設計基準を規定する
Ⅲ) 標準配合の変更及び修正の条件・方法を規定する
Ⅳ) アルカリシリカ抑制対策の方法を明示
な~るほど!
Ⅰ)とⅡ)が「配合設計標準」に,
Ⅲ)が「標準配合変更及び修正基準」となり,
Ⅳ)が「アルカリシリカ反応抑制対策の方法」となるのか。
でも,どのような内容にすればいいの ?
そうですね。 「製品規格」 と 「製品検査規格」 には,JIS A 5308 というパーツがありました。
3項目のうち 「アルカリシリカ反応抑制対策の方法」 だけは,JIS A 5308 附属書B に該当するパーツがあります。
では,この 附属書B を丸写しにすればいいかというとそうはいきません。
例えば, 附属書B には,抑制対策の中に混合セメントを使用する方法が記載されていますが,高炉セメントC種やフライアッシュC種は販売されているかどうか不明です。
実際に,これらを常時製造販売しているセメント会社は聞いたことがありません。
混合セメントを使用する方法のうち, 1番現実的なのが高炉セメントB種の使用であり,可能性がゼロではないのが,フライアッシュセメントB種の使用ではないでしょうか。
「社内規格」 に高炉セメントC種やフライアッシュC種の使用を,「抑制対策」 として記載するのは如何なものかと思います。
その他の抑制対策(アルカリ総量計算,安全である骨材の使用)については, 附属書B の表現をそのまま 「社内規格」 に規定します。
さて,すこし脱線します(得意の悪口の始まりです)。
ある省の通達によると,アルカリシリカ抑制対策は以下の順位で行います
1) アルカリ総量による抑制
2) 混合セメントによる抑制
3) 安全である骨材の使用
土木工事では,高炉セメントB種を使用するコンクリート工事が,建築工事に比べて多いように感じます。
また,管理を任された役人のなかには,先の通達を遵守しようと躍起になる方が出現します。
高炉セメントB種を使用することが,既に抑制対策となっているにも拘らず,アルカリ総量計算の提出を求める方がいます。
あれっ? セメント試験成績表に高炉セメントB種の全アルカリ量は数値があったかな?
いいところに気がつきました。
高炉セメントB種 はベースセメントの全アルカリ量しか記載されていません。
そうか ! スラグの混合率で補正して計算すればええねん !
高炉セメントB種 のスラグの混合率は,試験成績表に40~45%と記載されてますね。
アルカリ総量は,確かにこの方法で計算できます。
しかし,意味のある計算結果なのでしょうか ?
混合セメントである高炉セメントB種やフライアッシュB種は,普通ポルトランドセメントに高炉スラグやフライアッシュを添加しています。
元のポルトランドセメントの全アルカリ量は,添加材によって薄められますが,これが抑制対策となっているのではありません。
『 コンクリート技術者のためのセメント化学雑論 』 (社団法人セメント協会発行) には,スラグやフライアッシュの 「ポゾラン反応が,アルカリシリカ反応を抑制する効果がある」 と書かれています。
つまり,高炉セメントB種を使用するコンクリートについて, 「アルカリ総量計算を要求すること」 はナンセンスなのです。
役人が管理を行ううえで実施すべきことは,書かれた内容を理解することなく,通達どおり実行することなのでしょうか ?
私たちはこのような場面にでくわしたときには,説明する努力をしなければなりません。
随分長く,道を反れました。
Ⅰ) と Ⅱ) を含まなければならない 「配合設計標準」 の話に移ります。
この分野は,JIS Q 1011 に組み立て設計図に要求事項はあるものの,パーツは JIS A 5308 には存在しません。
さて, 「配合設計標準」 では,コンクリートの配合設計手順等を規定します。
もっと解りやすく言うと,例えば 24-18-20 N などの標準配合表が出来上がるまでの,手順を示します。
表.配合設計方法と準備事項
現場に 「配合計画書」 を提出する際には,よく 「配合計算書」 も添付します。
この 「配合計算書」 を文書で説明すると 「配合設計標準」 となります。
「配合計算書」 を眺めてください。
各々の計算過程の中に “当工場の実積による” と言った類のコトバが点在していませんか ?
このコトバが使用されている項目は,生コン工場の責任で決定しなければなりません。
複合材料であるレディーミクストコンクリートの諸品質は,使用材料の影響を大きく受けると言われています。
「製品規格」 は JIS A 5308のなかにパーツがあると説明しましたが, 「配合設計標準」 ではパーツ自身も生コン工場が造らなければなりません。
レディーミクストコンクリートの標準配合は,室内試験の結果を目安にして単位水量,かさ容積表(s/a法の場合はs/a表),セメント水比と圧縮強度の関係式を決定します。
なぜ室内試験の結果を目安にするかというと, 『 健忘 』 の最後にも書きましたが,生コンの使用材料の品質は一定ではなく変動するため,室内試験結果は,準備した材料の結果にすぎません。
そこで,室内試験結果と想定した材料変動から,安全を見込んで諸設計値を決定します。
例の公団は,室内試験により配合を決定していますが,事前に過去の実績 (同じあるいは類似の使用材料) を照合して,ある程度の単位水量や s/a を想定しています。
室内試験も重要ですが “ 実績に基づく諸設計値 ” が最も精度がよいと思います。
阪神地区の生コン会社は,協同販売上の理由から大阪兵庫生コンクリート工業組合の標準配合表を使用しています。
たとえば, 「配合設計標準」 では,大阪兵庫生コンクリート工業組合の 「標準配合設計」 を使うこともひとつの考え方です。
なお,建築学会仕様書(JASS5)等の仕様書は,標準的なかさ容積表や単位水量表を掲載していますのでこれらを参考にすることも,もちろん有効です。
次に
Ⅲ) 「標準配合の変更」 及び 「修正の条件・方法」 を規定するについてお話しします。
ここでは, 「変更」 と 「修正」 の定義を考える必要があります。
「変更」 とは,設計値の変更に伴い標準配合表をすべて変えてしまうことであり,これを実行すると操作盤に登録する配合(出荷管理装置に記憶させる配合)の更新(再度インプット)が必要となります。
「修正」 とは,例えば使用材料の特性値(密度,実積率,粗粒率等)が一時的に基準を外れたこと等により標準配合表自身の変更は行わず暫定的に配合を変更することを意味します。
このため,修正中に出荷する配合についてのみ暫定的に配合を変更します。
ただし, 「修正」 が慢性化すると標準配合変更を検討しなければなりません。
どのような現象が発生したときに標準配合を修正するか,または変更するかをよく検討しておく必要があります。
修正(変更)方法は,土木学会コンクリート標準示方書(RC)や建築学会仕様書(JASS5)を参考にします。
いずれにせよ,配合設計や修正・補正として規定する事項は,基本的に制約がなく,“ 模型造り ” というより “ 模型の色塗り ” という意味合いが濃いように思います。
皆様の 「社内規格」 に規定してある 「配合設計標準」 や 「標準配合の変更及び修正の条件」 は,色調が皆様の工場にマッチしていますか?
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運動会の季節です。
HiRAC応援団長
帽子が飛びそうになるのを
かぶりなおして疾走しましたが,
残念ながら 1位では なく 2位でした
(左から 2番目の白帽子)。
幼いわたちも
HiRACの一員
でちゅ!
今回の写真は少し照れています。
by ベトン・ボンド