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2009年4月

2009年4月20日 (月)

『 上善水如 』

 ボンド,ベトン・ボンド。
 久しぶりにペンをとるような気がします。
 少し間が空いたことを深く反省しています。
 この間に,季節は流れに流れ,桜が舞ったのも束の間,すでに夏が到来したかのような季節になりました。
 大阪の季節は,春と秋が極端に短いため,まるで夏と冬しかないように感じます。 

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第7回 JIS A 5308 : 2009 レディーミクストコンクリート
 
 スラッジ水と同様の大きな改訂は,レディーミクストコンクリート納入書です。
 平成22年4月1日から,この納入書に使用材料の単位量を記載しなければならなくなります。
 
 改正説明会ではこの納入書について,学識経験者から次のように説明があったと,記憶しています。
 『外国,例えばアメリカ合衆国において生コンは,アジテータ1車毎に “バッチチケット” と呼称する材料計量記録を添えて,納入するのが常識である。』

 近年,食品業界で,消費期限を偽装する“不祥事”が多発しました。(食品会社偽装の歴史
 食品偽装は,2002年の雪印食品の牛肉偽装がその第一歩でした。
 この後,人々の食品偽装について関心が薄れる頃に,繰り返し偽装が発覚します。
 食品会社偽装騒動の最中,“姉歯設計事務所”,“イーホ-ムズ”,“ヒューザー”という言葉を頻繁に耳にするようになりました。
 そうです。“耐震偽装事件”です。
 鉄筋数を減らして原価削減をおこない,建築物が有していなければならない耐震性を,犠牲にした事件です。(建設よろず相談

 あの “M社” を覚えていますか?
 現時点で偽装の最後を飾るのは,誠に残念ですが “生コン” です。
 昨年の夏,このコーナーに再三登場しました。  『破裂 』,『性善説・性悪説』,『爪跡
 この事件でM社は2つの過ちを犯しました。
 ひとつは溶融スラグを購入者に無断で使用したことであり,もうひとつはその生コンにJISマークを附したことです。
 M社の溶融スラグ使用が明るみになるころには,すでに学識経験者達は,納入書に記載する事をJIS規格で規定するよう提案していました。
 M社の事件はこの提案の実現を,あと押しする材料となったに違いありません。
 
 ところで,一般的な生コン会社が商品化している 「生コン標準配合表」 はどれくらいあるのでしょうか?
 粗骨材の最大寸法20㎜の普通コンクリートだけでも,呼び強度18~45で10通り,スランプ8~21㎝で 6通り,セメントの種類 N・BB・Hで 3通り,混和材の種類としてAE減水剤と高性能AE減水剤の 2通りとすると,これらを組み合わせ 360通りになります。
 さて,一般の人々が360種類の生コンがあるとは信じがたいことと思いますし,各種生コンは,ミキサー車から荷卸しされる状態を見ても違いは分かりません。
 ただし,生コンが比較的軟らかいか固いか位は分かるかもしれません。
 
 あらゆる商品は,ユニット毎に価格を設定してます。
 生コンは容積を基準にして商取引されますから,360種類の配合はどれも1m3 を基準として,種類毎に1m3 当たりの材料構成比を変えています。
 
 生コンの品質には,施工する際(型枠に生コンを収める)に要求される品質(フレッシュ性状)と硬化した後に要求される品質(特に強度)があります。
 このうち強度は,所定日数経過した後でしか評価できません。
 一般には,製造してから28日経過したときの強度を評価します。
 
 つまり,生コンは出荷する際,強度を保証できる “見込み” でJISマークを表示しています。
 もちろん,実験や過去の実績から強度が十分に補償できるような標準配合を設計します。
 このような背景から,JIS A 5308は生コン納入に先立ち,購入者に配合報告書(2009年版では,配合計画書)を提出するよう規定しています。
 
 今回の改正ではこれ以外に,納入書に単位量を記載することと,購入者からの要求があれば材料計量記録を提出しなければなりません。

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 なお,納入書に記載する単位量は,次のいずれかです。

 ①標準配合
 ②修正標準配合
 ③計量読み取り記録から算出した単位量
 ④計量印字記録から算出した単位量
 ⑤計量印字記録から自動算出した単位量

 改正原案では,上記の場合,材料計量値から算出した各単位量と標準配合の単位量の差は,製造工程の管理で定めている計量精度(動荷重)と同じ基準で管理するよう,規定していました。
 標準配合は,骨材を表乾状態として水や骨材の単位量を表しています。
 ところが,実際の生コン製造では,濡れた骨材を使用します。
 このため,骨材表面に付着している水を考慮して,所定の単位水量で練り混ぜるために,材料計量目標値を補正して製造します。

 一方,計量精度は,材料計量目標値と計量値の差について許容差を設定しています。
 この許容差は,コンクリートの品質に与える影響や,計量器の特性などから総合的に決定しており,水は1%,骨材を3%と定めています。
 例えば,計量値が計量目標値に対して,水+1%,骨材+3%であったとします。
 この状態は,動荷重に適合していますが,水に関して計量値から算出した単位量は,標準配合に対して不適合となります(事例1参照)。
 骨材の動荷重判定基準が,水より大きいことと,骨材が表面水を持っているためです。

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 また,計量値から単位量に計算するときの数値の丸め方で,納入書に記載する単位量が標準配合と比較して先の基準を外れることがあります(事例2参照)。

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 生コン業界が以上の矛盾点を強く訴えた結果(そう思っています),JIS改正原案作成委員会が再考し,の場合,記載した単位量と計量設定値の差が動荷重の許容差に適合することに変更しました。
 購入者の要望により提出する「材料計量記録」も同様です。

 さて,単位量について許容差の判定基準は変更されましたが,システムの問題があります。
 特に地方の生コン工場は,計量印字記録が十分に普及していないと聞きます。
 また,既存の印字記録は主に原単位管理等に利用されることが多く,1バッチ毎の計量値が印字されているだけであり,計量設定値は印字していません。

 出荷管理装置を導入し生コン納入書を印字している場合,納入書は出荷指令を出したときに作成されます。
 ③~⑤の条件による場合,アジテータ1車分の材料計量が完了した後でしか作成できなくなります。
 特に③と④を専用プログラムを導入せずに人がマニュアルでおこなう場合,納入書の発行に時間を要して生コン製造能力に影響します。
 プラントメーカによると,既存の操作盤に専用プログラムを追加しても,操作盤タイプによっては計量値を取り込むことが不可能な機種もあるとのことです。

 生コン出荷量が年々減少する傾向があるなか,多くの生コン工場が最小人数で工場を運営しています。
 要員数の問題からも,生コン工場は⑤のシステムを導入することが望ましいと思われます。
 そのためには,既存の設備の再点検が必要ですし,工場によっては新たな資本投下を検討しなければなりません。

 昨今,ETC導入に助成金が設定され,この機会にETCを設置するドライバーが急増しました。
 この結果,ETCの需要が大幅に増加し,機械待ちをしている方が沢山いると聞きます(実は,ボンドもそのひとりです)。

 生コン納入書に単位量を記載するのは,平成22年4月1日からです。

 ETCは,ドライバーが我慢すればすむ問題ですが,生コンJIS工場はそうはいきません。
 
 世の中,澄んだ水の如く透明性が要求されています。
 単位量の問題について,少なくともハードの問題は解決しなければなりません。

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200904205 4月18日(土)
家族の強い要望を受けUSJに行きました。
修学旅行の学生や
外国からの観光客で賑わい
         みなさん大変楽しんで
                              いらっしゃいました。
この世界もやっぱり
            “ヒト”がプロデュースしています。

               by ベトン・ボンド

2009年4月18日 (土)

採石現場視察研修- 西島採石株式会社訪問(その1)

 普段使用している粗骨材がどんな場所で作られているんだろうか?
 なかなか立ち入ることの出来ない採石現場を訪れた。
 現場は,兵庫県姫路市の瀬戸内海に広がる家島諸島にある。
 家島諸島は,兵庫県姫路市の沖合,南西18㎞に位置し,東西26.7㎞,南北18.5㎞のエリアに40余島の大小の島から成っている。
 それらの島々のうち,西島と男鹿島の2島が採石に特化した島である。

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 研修当日は,30歳代を中心とした若手グループと40歳代を中心とした中年グループに分かれて集合場所の姫路港に向かった。
 何故か溝渕工場長は,若手グループに同乗・・・
 車中は,さぞ賑やかだったことだろう・・・
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 40代の中年班の3名(木下・南・末吉)は,兵庫大阪 8時集合にも関わらず,7時45分には全員がそろい,早速,姫路港を目指し出発。
 姫路までの車中では,採石場の巨大な機械設備に興味を抱く南,アルカリ骨材反応と西島の砕石(安山岩)との関係に興味を持つ末吉,以前に男鹿島を訪れた経験のある木下は,採石場に全く興味を示さずひたすら好釣り場の話題に終始・・・
 こんな感じの 3人だったが釣りにかける木下次長の勢いが凄い!
 結局,車中では釣りの話題が中心となり,視察終了後には,明石か姫路で,釣行することに決定。
 釣り初心者の南氏も,勢いに負けて同行する羽目に・・・(結果は後ほど)

 予定よりずいぶん早く,姫路港に到着。
  9時半集合のところ,8時40分ごろ西島に向けて到着! 

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 木下次長・・・ 「魚影は濃そうやな~~~」
 南・・・・・・・・・ 「釣れますかね~」

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 木下次長は,早速情報収集・・・
 港内で釣りをしている人とコミュニケーション・・・
 この人当たりの良さは見習わなければ・・・敬服!
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 いよいよ西島へ・・・
 皆が漁船のような船で渡ると思い込んでいたに違いない!
 どうぞと導かれたのは・・・なんと豪華クルーザー(これには参加者全員驚き!)
 バブル時は1億5千万円以上したらしい代物である!

Nishijima03  
 山本工場長の操船で,いざ西島へ・・・
 
 船が走り出したその時!
 近くで釣りをしていた人にアタリが・・・
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 良型のチヌがかかっているようだったが魚の姿は見えず終い!
 この一瞬に冷静だった木下次長に火が付いたようだ。
 
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 どの辺が釣りのポイントか事情聴取中
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 採石場は,どうでも良いから・・・
 早く釣りしたいな~~ 
 あちこちで釣りをしている人を眺めながら羨ましそうな木下次長が印象的!

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 クルーザーはおよそ31ノットで快走・・・
 かなりバウンドしながら一路西島へ・・・

採石現場視察研修- 西島採石株式会社訪問(その2)

 約30分のクルージングだった。
 無事に西島上陸・・・

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 船着場には,たくさんの車が止まっているものの,
 全ての車にナンバープレートが見当たらない!

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 そう言えば,急遽不参加となった ???氏の言葉を思い出した。
 「治外法権の島を存分に楽しんできなさい・・・」
 その言葉の意図が理解できていなかったが瞬時で理解できた。

 入島後は,ナンバープレートの付いていない2台のワゴンに分乗し,島内見学に・・・
 

Nishijima10

 とにかく砂埃がすごい!花粉症の人には辛かったであろう。
 岩盤と砂埃・・・それ以外には何も無い!
 コンビニも自動販売機も何も無い!
 生活臭の全くしない島である。
 そんな想いにふけるのも束の間.
 お世話になっている西島採石(株)の事務所に到着。

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 事務所の中に入った途端,参加者のざわめきが。
 そこには生活臭のしない島に似合わない最新設備があった。
 まるで新幹線の指令センターのようだ!

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 日頃,言うことを聞かないプラントの制御盤と格闘している木下次長。
 この時ばかりは,じっくりと見聞していたようだ。

Nishijima14 Nishijima15   

 プラントの制御盤もこんな風にならないかな~
 ちなみにこの設備だけで数億円もしたらしい。凄い設備投資である。

 さていよいよ,採石現場へ向かうことに・・・
 事務所から車で10分程度走っただろうか・・・
 昔,仮面ライダーが格闘するシーンでよく見た光景が一面に

Nishijima16 Nishijima17 Nishijima18 Nishijima19 

 突然,岩盤が崩れ出すこともしばしばあるとの説明に,
参加者は誰一人として崖下には近づけない。

Nishijima20 Nishijima21
 

 ここでは岩石を手に取り,熱心に観察していた源君の姿が印象的だった。
 この後,気に入った岩石をおみやげとして持ち帰った。
 この探求心には一同敬服・・・

 でも持ち帰った岩石をどうするつもりでしょうね?

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 何も無い島と言いましたが・・・

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 島の中腹からの眺めは絶景!
 いよいよ島ともお別れ!

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 乗船前に全員で記念写真を・・・
 このあと,お隣の坊勢島に立寄りおみやげの新鮮魚介を積み込み姫路港へ

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 新鮮な大きな海老に大きなカレイに大きなサザエ・・・
 本当に美味しかった。

 ありがとうございました。

 姫路港までの帰路は源船長の操舵で・・・
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 乗ってる方も怖かったが操船している本人が一番怖かったようだ!

 無事に姫路港に着岸後,姫路市街の和食店で豪華な懐石弁当の昼食。

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 工場長の長~い挨拶に眠たそうな木下次長の姿が・・・

Nishijima28 Nishijima29  

 宴の締めくくりは,木下次長が・・・

 西島採石の上西専務,山本工場長,泰陽技研の庄野専務,井上主任
 ありがとうございました。

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 この後,中年グループ3人は釣り餌を購入し,姫路港へ・・・
 日の暮れる7時頃まで頑張ったが竿頭は南名人で小アジが4匹
 カッコだけは一流釣士のK氏は小さなヒトデを数匹ゲットしただけの残念な結果に。
 最後に私自身も出番なし!

 帰りの車内では「やっぱり島に渡って釣らなあかんな~」と反省会をしながら帰路についた。

                                 記事: 末吉信也出荷室長

2009年4月 4日 (土)

第9回技術連絡会について

第9回技術連絡会を,下記の要領で開催します。

開催日時: 2009年5月1日(金曜日) 9:00 ~ 12:00

開催場所: 堺臨海生コン2階会議室(予定)

今回は,三宅啓司係長,源和貴係長,豊嶋重夫係長の発表の他,
特別講演として 「 乾燥収縮低減型高性能AE減水剤 ・ スラッジの再利用について 」 や
「 知ってるようで知らない 『 経理 』 のお話 」 などを予定しています。

『 造花 』

ボンド,ベトン・ボンド。
先週の続きです。
スラッジ水を標準化するための準備についてお話します。

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第6回 JIS A 5308 : 2009 レディーミクストコンクリート

スラッジ水を標準化するためには以下のとおり,数々の準備が必要となります。
・ 管理方式及び専用製造設備の導入
・ 専用検査設備の導入
・ スラッジ固形分率の目標値の決定
・ 決定した固形分率での配合検討(配合修正方法の確立)
・ 製造工程の管理方法の確立
・ 関連製造設備の管理(濃度計,演算機能の校正)

a) 管理方式及び専用製造設備の導入

 『定スラッジ固形分率法における固形分率の管理方法』には, “バッチ濃度調整方法” と
“連続濃度測定方法“ の2種類があります。
 両者の大きな違いは,スラッジ水槽の数です。
 “バッチ濃度調整方法” は,所定の濃度に調整するために専用の調整槽が必要です。
 つまり,スラッジ水槽が2つ以上必要になります。
 この方法は,ある一定量のスラッジ水,すなわち,
水槽の容量により定まる範囲内でほぼ
一定の濃度に調整できるといったメリットがあります。
 “連続濃度測定方法” は,スラッジ水槽が一つあれば,スラッジ水固形分率を管理できる
方法です。
 この方法は,スラッジ水槽は一つですみますが,スラッジ水濃度計を設置しなければなり
ません。
 一般に濃度計は,スラッジ水を水槽から生コンプラント貯蔵ビンに送る配管に設置します。
 濃度計で感知したスラッジ水濃度によって,生コン製造1バッチ毎にスラッジ水と地下水,
工業用水又は上水道水(以下,清水と呼ぶ)の計量割合を変えて固形分率を確保します。

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バッチ濃度調整方法 

 

 

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連続濃度測定方法

 いずれの管理方法が導入できるかどうかについては,今ある製造設備を検証して,不足
している場合は,設備投資が必要になります。
 また,どちらの管理方法を導入しても,水の計量は,スラッジ固形分率を一定にするため
にスラッジ水と清水の累加計量となります。
 このため,操作盤はスラッジ水濃度により,スラッジ水と清水の比率を自動的に演算する
機能がある方がよいと考えられます。

b) 専用検査設備の導入
   JIS Q 1101 : 2009 では,スラッジ固形分率を管理するため,工程の管理において適切
な頻度で,スラッジ水濃度を測定するよう規定しています。
 スラッジ水濃度の測定には,全生工組連では精密法(ZKT-104 )と簡易法(ZKT-105) を
試験方法として定めています。
 製造工程の管理としては,質量から濃度に換算する簡易法を用いることが合理的ですが
この試験を行うためにはピクノメーターが必要になります。
           
c) スラッジ固形分率の目標値の決定
   JIS A 5308 : 2009 は,スラッジ固形分率上限値が3.0%を超えないような目標値を各社
で設定して生コンを製造するよう規定しています。
 この目標固形分率に基づいて生コンを製造しますから,この項目が最も重要です。
 しかし,実際には,これは大変困難なことなのです。
 なぜなら,先週の 『 残渣 』 でも書きましたが,現在多くの生コン工場では出荷量に波が
あり,ゼロm
3 の翌日に800m3 出荷となることが珍しくなくなり,スラッジ生成量と消費量
のバランスがとりにくいからです。
 目標固形分率の値を大きく設定すると,産業廃棄物となるスラッジの生成量は少なくなり
ます。
 しかし,スラッジの収支バランスが悪くなるなどの条件がそろうと,出荷中にスラッジ水が
消費されてしまうことで,所定濃度の確保が困難となり,出荷の途中 から清水のみでしか
製造ができなくなる場合がありえます。

 固形分率目標値を小さく設定すると,先の例は発生しにくくなると思われます。
 反面,スラッジ水生成量が消費量より多くなる場合には,公害防止の観点から,フィルタ
ープレスで上澄水とスラッジに分離するなどの適切な処理が必要になります。

 それでは,目標固形分率を複数設定しておけばよいのでは とも考えられます。
 この策は大変優れていますが,生コン工場の配合管理が複雑になります。

 いずれにせよ,標準化を計画する生コン工場は,諸条件 (スラッジ水濃度の変動等)  を
考慮して,スラッジ固形分率の目標値を決定しなければなりません。
           
d) 決定した固形分率での配合検討(配合修正方法の確立)
 

 一般に,スラッジ水を練混ぜ水として使用した場合,フレッシュコンクリートの性状に影響
を及ぼすといわれています。
 このため,
フレッシュコンクリートに与える影響を把握して,それを修正する「基準」を設定
する必要があります。
 この配合修正基準は,定めたスラッジ固形分率の目標値について,室内や実機の試験
練りを行って「修正方法」を確立しなければなりません。

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e) 製造工程の管理方法の確立
   スラッジ水を練混ぜ水として使用する場合,JIS Q 1101 :2009 では,製造工程の管理で次の項目が必要になります。
    ・ 製造工程(1.配合)-管理項目 c) スラッジの固形分率およびスラッジ水濃度
     測定頻度
    バッチ濃度調整方法 1回以上/日かつ濃度調整の都度
    連続濃度測定方法 使用の都度 自動濃度計で測定
    スラッジ固形分率 使用の都度,スラッジ水の濃度(通常密度から求める)
          とスラッジ水の計量値から固形分量を求め,
          それをはかり取ったセメント量で除して求める
   
     スラッジ固形分量は,使用したスラッジ水の濃度と計量値から算出します。
 このスラッジ水濃度測定方法は,前述の b) を参考にしてください。
 濃度測定検査の目的が,JIS Q 1011 : 2009 「製造工程の管理 1.配合」によるもので
あることから,迅速に結果が得られる簡易試験方法の導入が必須です。
 従って,簡易試験方法の検討と検証が別途に必要になります。
   

 「連続濃度測定方式」は,連続でスラッジ濃度を測定して生コンの現場配合を自動で補正
するシステムです。
 JIS A 5308 : 2009 は,平成22年4月から購入者の要求があれば,材料計量印字記録を
提出するよう規定しています。
 現在,
使用されている印字記録装置では,スラッジ水と清水の計量値は印字するものの,
スラッジ水濃度は印字しないものがほとんどと思います。
 「連続濃度測定方法」を用いて印字記録の提出に対応するためには,検知される濃度の
記録方法を検討するか,印字記録計の改造が必要になります。

    ・ 材料の計量-計量方法
    スラッジ水を使用する場合には,区分の異なる水(清水)を累加計量します。                            
動荷重検査における水の計量値は,“最初の材料の計量値(スラッジ水)”を目視で確認し,次に“累加した材料の合計値(清水)”について合否判定をおこなわなければなりません。
なお,「連続濃度測定方法」は,スラッジ水濃度値が変動すると,水の計量目標値が同様
に変化するため,動荷重検査記録についても注意が必要になります。
           
f) 関連製造設備の管理(濃度計,演算機能の校正)
    ・ 製造設備
    スラッジ水濃度によるスラッジ固形分率の補正を自動演算機能のある操作盤で行う場合,
骨材の表面水率補正装置と同様,その精度を確認しておく必要があります。
    ・ 検査設備
    スラッジ水濃度を測定する試験器や試験装置は,その精度を 3ケ月に一度確認する必要
があります。

 さて,HiRAC の皆さん それでもスラッジ水をつかいますかぁ~。
 もちろん,JIS A 5308 の改正で使えるような規格になりましたが,管理面からとても気軽に
使えるシステムでないことがわかると思います。
 
 今回,JIS A 5308 は環境問題を考慮したとのことですが,ことスラッジ水の使用に関しては,まるで造花です。
 芸術品としては華やかに見えますが,なんとも風情(実利)がありません。

 花見のシーズンが到来です。
 なかには,お酒好きの方等 “花よりダンゴ” と考える人もありますが,やはり造花のさくらの下では心が満たされないのではないでしょうか?

 スラッジ水の有効利用は,生コンの工業規格よりも,工事仕様書等で使用部位を限定する等(重量ブロック,地中杭等)の対策をとる必要があるのではないかと考えています。

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 当初 5回位で,JIS A 5005 と JIS A 5308 の主要な改正部分は説明できると思っていましたが,なかなか進みませんね(話がくどいですね?)。
 遵守しなければならない 5項目はすべて前回までに記載しました。
 社内規格を除く 4項目を遵守するためのツールが, 5項目である「社内規格」です。
 社内規格を整備するためには,関連規格を理解しなければなりません。
 規格を理解するには,ひとりで規格書を読んでいるだけでは足りません。
 解釈を深めるために,仲間と議論するフィールドが必要です。
 HiRAC の月例会議や各種ミーティングがそのフィールドとなるよう願ってやみません。
 
 
                    

Jisa530804 

 

 

   このコーナーも生まれて1年経ちました。
   祝1周年!! 妄想はまだまだ続きます。
                     by ベトン・ボンド

Sorry!!!   原稿は予定通り届いていたのですが,更新が遅れていました。  Group HiRAC 

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     Kataru2

     Kataru2

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