『 造花 』
ボンド,ベトン・ボンド。
先週の続きです。
スラッジ水を標準化するための準備についてお話します。
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第6回 JIS A 5308 : 2009 レディーミクストコンクリート
スラッジ水を標準化するためには以下のとおり,数々の準備が必要となります。 | |||||
・ 管理方式及び専用製造設備の導入 | |||||
・ 専用検査設備の導入 | |||||
・ スラッジ固形分率の目標値の決定 | |||||
・ 決定した固形分率での配合検討(配合修正方法の確立) | |||||
・ 製造工程の管理方法の確立 | |||||
・ 関連製造設備の管理(濃度計,演算機能の校正) |
a) 管理方式及び専用製造設備の導入 | |||||
『定スラッジ固形分率法における固形分率の管理方法』には, “バッチ濃度調整方法” と |
バッチ濃度調整方法
連続濃度測定方法
いずれの管理方法が導入できるかどうかについては,今ある製造設備を検証して,不足 している場合は,設備投資が必要になります。 また,どちらの管理方法を導入しても,水の計量は,スラッジ固形分率を一定にするため にスラッジ水と清水の累加計量となります。 このため,操作盤はスラッジ水濃度により,スラッジ水と清水の比率を自動的に演算する 機能がある方がよいと考えられます。 |
b) 専用検査設備の導入 | |||||
JIS Q 1101 : 2009 では,スラッジ固形分率を管理するため,工程の管理において適切 な頻度で,スラッジ水濃度を測定するよう規定しています。 スラッジ水濃度の測定には,全生工組連では精密法(ZKT-104 )と簡易法(ZKT-105) を 試験方法として定めています。 製造工程の管理としては,質量から濃度に換算する簡易法を用いることが合理的ですが この試験を行うためにはピクノメーターが必要になります。 | |||||
c) スラッジ固形分率の目標値の決定 | |||||
JIS A 5308 : 2009 は,スラッジ固形分率上限値が3.0%を超えないような目標値を各社 で設定して生コンを製造するよう規定しています。 この目標固形分率に基づいて生コンを製造しますから,この項目が最も重要です。 しかし,実際には,これは大変困難なことなのです。 なぜなら,先週の 『 残渣 』 でも書きましたが,現在多くの生コン工場では出荷量に波が あり,ゼロm3 の翌日に800m3 の出荷となることが珍しくなくなり,スラッジ生成量と消費量 のバランスがとりにくいからです。 目標固形分率の値を大きく設定すると,産業廃棄物となるスラッジの生成量は少なくなり ます。 しかし,スラッジの収支バランスが悪くなるなどの条件がそろうと,出荷中にスラッジ水が 消費されてしまうことで,所定濃度の確保が困難となり,出荷の途中 から清水のみでしか 製造ができなくなる場合がありえます。 固形分率目標値を小さく設定すると,先の例は発生しにくくなると思われます。 反面,スラッジ水生成量が消費量より多くなる場合には,公害防止の観点から,フィルタ ープレスで上澄水とスラッジに分離するなどの適切な処理が必要になります。 それでは,目標固形分率を複数設定しておけばよいのでは とも考えられます。 この策は大変優れていますが,生コン工場の配合管理が複雑になります。 いずれにせよ,標準化を計画する生コン工場は,諸条件 (スラッジ水濃度の変動等) を 考慮して,スラッジ固形分率の目標値を決定しなければなりません。 | |||||
d) 決定した固形分率での配合検討(配合修正方法の確立) | |||||
一般に,スラッジ水を練混ぜ水として使用した場合,フレッシュコンクリートの性状に影響 |
e) 製造工程の管理方法の確立 | |||||
スラッジ水を練混ぜ水として使用する場合,JIS Q 1101 :2009 では,製造工程の管理で次の項目が必要になります。 | |||||
・ 製造工程(1.配合)-管理項目 c) スラッジの固形分率およびスラッジ水濃度 | |||||
測定頻度 | |||||
① | バッチ濃度調整方法 | : | 1回以上/日かつ濃度調整の都度 | ||
② | 連続濃度測定方法 | : | 使用の都度 自動濃度計で測定 | ||
③ | スラッジ固形分率 | : | 使用の都度,スラッジ水の濃度(通常密度から求める) | ||
とスラッジ水の計量値から固形分量を求め, | |||||
それをはかり取ったセメント量で除して求める | |||||
スラッジ固形分量は,使用したスラッジ水の濃度と計量値から算出します。 このスラッジ水濃度測定方法は,前述の b) を参考にしてください。 濃度測定検査の目的が,JIS Q 1011 : 2009 「製造工程の管理 1.配合」によるもので あることから,迅速に結果が得られる簡易試験方法の導入が必須です。 従って,簡易試験方法の検討と検証が別途に必要になります。 | |||||
「連続濃度測定方式」は,連続でスラッジ濃度を測定して生コンの現場配合を自動で補正 | |||||
・ 材料の計量-計量方法 | |||||
スラッジ水を使用する場合には,区分の異なる水(清水)を累加計量します。 動荷重検査における水の計量値は,“最初の材料の計量値(スラッジ水)”を目視で確認し,次に“累加した材料の合計値(清水)”について合否判定をおこなわなければなりません。 なお,「連続濃度測定方法」は,スラッジ水濃度値が変動すると,水の計量目標値が同様 に変化するため,動荷重検査記録についても注意が必要になります。 | |||||
f) 関連製造設備の管理(濃度計,演算機能の校正) | |||||
・ 製造設備 | |||||
スラッジ水濃度によるスラッジ固形分率の補正を自動演算機能のある操作盤で行う場合, 骨材の表面水率補正装置と同様,その精度を確認しておく必要があります。 | |||||
・ 検査設備 | |||||
スラッジ水濃度を測定する試験器や試験装置は,その精度を 3ケ月に一度確認する必要 があります。 |
さて,HiRAC の皆さん それでもスラッジ水をつかいますかぁ~。
もちろん,JIS A 5308 の改正で使えるような規格になりましたが,管理面からとても気軽に
使えるシステムでないことがわかると思います。
今回,JIS A 5308 は環境問題を考慮したとのことですが,ことスラッジ水の使用に関しては,まるで造花です。
芸術品としては華やかに見えますが,なんとも風情(実利)がありません。
花見のシーズンが到来です。
なかには,お酒好きの方等 “花よりダンゴ” と考える人もありますが,やはり造花のさくらの下では心が満たされないのではないでしょうか?
スラッジ水の有効利用は,生コンの工業規格よりも,工事仕様書等で使用部位を限定する等(重量ブロック,地中杭等)の対策をとる必要があるのではないかと考えています。
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当初 5回位で,JIS A 5005 と JIS A 5308 の主要な改正部分は説明できると思っていましたが,なかなか進みませんね(話がくどいですね?)。
遵守しなければならない 5項目はすべて前回までに記載しました。
社内規格を除く 4項目を遵守するためのツールが, 5項目である「社内規格」です。
社内規格を整備するためには,関連規格を理解しなければなりません。
規格を理解するには,ひとりで規格書を読んでいるだけでは足りません。
解釈を深めるために,仲間と議論するフィールドが必要です。
HiRAC の月例会議や各種ミーティングがそのフィールドとなるよう願ってやみません。
このコーナーも生まれて1年経ちました。
祝1周年!! 妄想はまだまだ続きます。
by ベトン・ボンド