再起動 その1
こんにちは,BetonBondⅢ世です。
初代Bondが筆を休めてから数年経過し,時代背景が大きく動きました。
これからはBetonBondⅢ世が,機会のある都度,本ブログで声を上げることにします。
さて, 「レディーミクストコンクリート」 に関連する JIS規格 が改正され, JIS A 5308 : 2014, JIS Q 1011 : 2014 となりました。
猶予期間が過ぎる,2014年9月20日には移行は完了されたと思います。
ここで,分野別認証指針 JIS Q 1011:2014 について再確認してみましょう。
表はクリックすると拡大します。
なお,虎の巻欄として抜粋した生コンの規格である JIS A 5308 5.容積に関する規定 は,何ら改正されていません。
にもかかわらず,JIS Q 1011 A.3 製造工程の管理の改正は,多くの課題が発掘できるため順を追って記述したいと思います。
Ⅰ. JIS Q 1011 A.3 製造工程の管理
表A.3 『3.練混ぜ』 注(3) 4) の要約 製造工程の管理として,強度・スランプ・空気量等の品質試験を実施すると,その試験に要した試料の分だけコンクリートが減ります。
『 試験用試料採取分だけ減る 』 ことで, トラックアジテーター が 荷卸し地点に 到着したとき,積載容積が納入書記載量を下回る心配 (または可能性) がある場合は,対処せよと規定しています。
ちょっと待った ! 余った試料戻せばえーやん ! そう書いてあるやん。
おっしゃる通りです。
でも,強度試験用の供試体を作製した場合は,その分は残念ながら戻せません。
品質特性の各項目試験と必要な試料量を参考表Ⅰに示します。
(表中の青字部分は,戻すことができない試料量です)
表はクリックすると拡大します。
Ⅱ. 何故,今,このような基準が JIS Q 1011 で規定されたのか? 【背景の考察】
雪が深いエリアの経済産業局が実施する立入検査が,発端だと言われています。
そのエリアの生コン会社の 「社内規格」 は,『工程管理としてトラックアジテータから試料を採取した場合は,採取分だけ割増して製造する』 趣旨 の文章が入って (規定されて) いた とのことです。
当該エリアの生コン会社は,何故このような基準を 「社内規格」 に規定したのでしょうか?
どうも原因は,『生コン工場 品質管理ガイドブック』の初期版にあるようです。
このガイドブックは全国生コンクリート工業組合連合会が発行しています。
ガイドブック 平成4年版の P.204 に 『 3.4.4 サンプリングの重要性 』 の(3) に,運搬車からの生コン試料の採取に関して次の記述が確かに存在します。
※1 JIS A 5308 : 2014 の条項ではありません。
表はクリックすると拡大します。
このためか, そのエリアの 生コン会社だけでなく, 老舗の生コンJIS工場の 「社内規格」 にも同様の記述があったように記憶している という話をされた方もいました。
初代Bondから聞いたお話です。
初代は,師匠マスターO.A に工程試料採取の容積保障について伺ったことあったそうです。
Bond 『工程検査で試料採取するとその分容積が減りますが,わざわざ割増ししなくても
いいですね。』
O.A 『あのね。昔,K地区のJIS改正説明会の会場で同じような質問があったよ。
工程検査は品質管理するための試験なんで,このような質問はナンセンスでしょ
といった内容の回答があったように記憶しているよ。』 ※2
※2 おそらく平成4年頃の JIS改正説明会会場での質疑と思われます。
内容を詳細に記憶している方は本ブログ (info@hirac.jp) まで情報を提供ねがいます。
(マスターO.Aがどんな方が興味のある方は同ブログの BetonBond情報局 道標シリーズを参照ください)
ところで, 工程管理用試料採取するトラックアジテータの生コン製造は, 採取試料分の割増しをおこなうと 「社内規格」 に書いてあるだけでしょ。
それが何で問題になったん?
そうです。 本件は 「社内規格」 に規定してあったことが問題になったのではありません。
当該エリアの一部の生コン会社は, 「社内規格」 に規定しているにもかかわらず,実際にこの割増しをおこなっていないことが,経済産業局の立入検査で発覚したのです。
前回の JIS A 5308 と JIS Q 1011 改正(2009年版)のトピックスは,コンクリート製造における材料計量値を一定期間保存しなければならなくなったことでした。
当該エリアの経済産業局は立入検査の際,工程管理用品質特性試験をおこなったアジテータの材料 計量記録を照査した模様です。
この結果,対象の生コン会社が, 実際には 「試料採取分の割増し」 を行っていなかったことが 判明しました。
JIS Q 1011(2009年版)は,工程管理用試験試料を採取した後のアジテータの容積については何も記述していません。
このため本件は,JIS違反ではなく 「社内規格」 違反(「社内規格」を遵守していなかった)として処理されたと伺っています。
さらに,工程管理用試料採取時 の 容積保障に関するこの問題 は,その地域のみに留まらず JIS Q 1011(2014年版)に規定することで処置されました。
現在, レディーミクストコンクリート JISマーク表示認証 に関連する規格は, 皆さんお馴染みの JIS A 5308 と JIS Q 1011の 2つで特徴は以下の通りです。
表はクリックすると拡大します。
ここで重要なのは, 生コン規格 JIS A 5308 は,私たちと係わりのある ZENNAMA (全国生コンク リート工業組合連合会) が原案を作成していますが,生コンの JISマーク表示認証に関する運用について定めた JIS Q 1011 は経済産業省(公) であるということです。
平成17年3月30日付けの令第6号 『日本工業規格への適合性の認証に関する省令』 により JIS認証業務は,公の経済産業局から民間に移管されました。
この現行制度下において経済産業局は,立入検査のみの担当となりましたが, JIS Q 1011 を整備する権利を有していますから注意しなければなりません。
JIS A 5308 と JIS Q 1011 の改正に関して,改正説明会で募集した質疑には, 前者については ZENNNAMA が, 後者については経済産業省が回答しています。
ZENNAMAは長年に渡り,加盟する傘下生コン会社に対して独自の基準による監査(全国生コンクリート工業組合統一監査)を実施し続けています。
私達は,いつかこの監査基準が JIS Q 1011 として運営されるようになる等,JIS表示認証運用の規格についても自ら決定できるよう,自律した業界を目指すべきではないでしょうか。
ここで少し休憩します。
次回は,容積を保証するための具体的な措置について語ろうと思います。
以上,バスクリン (ジャスミンの香り) の湯をこよなく愛するBondⅢ世でした。
See You Next, Soon !