アイコンタクト
今日,知人である,QMS主任審査員と会った。
要件は, 『 CPD 』 いわゆる継続的な能力開発 ( Continuing Professional Development ) のことであったが,ついつい世間話やISOに関することで2時間程度話し込んでいた。
『 資源の少ない日本が,このように成長したのは,努力で身につけた能力と
その勤勉さからであった。
それを支えてきたのは,教育だ。今一度教育を考え直さなければいけない。』
彼が審査で多くの時間をさくポイントは, 『 マネジメントレビュー 』 と 『 教育・訓練 』 である。
『 教育訓練の結果の評価,力量の評価は給与明細書だよ ! 』
いつも通りの持論を唱えたあと,『しかし,若い者にも,ガッツのあるやつがいる』 と付け加えた。
睨み付けるような目で,考えながらしゃべる彼にはいささか似合わない言葉である。
話は針路を示す 『経営者のコミットメント』 の重要性から,いつもどおり 『コミュニケーション』 へと続き,最後に私の無力さを再確認してお開きになる。
『 マネジメントで大切なのは,和をもって貴しだな 』
今回は,話題が豊富だ。「聖徳太子の十七条憲法」がでてきた。
ものごとに,『自分だけが正しいということは,あり得ない』 というのである。
ここで,花山勝友著 『 高僧伝 聖徳太子(集英社発行) 』 による現代語訳を紹介する。
一に曰く | |
第一に示しておきたいことは, | |
人には調和が何よりも貴重であり, | |
他の人々に逆らわないようにすることが大切である, | |
ということなのである。 | |
人はそれぞれ好むグループがあるし, | |
心が充分鍛えられているような者は少ないものだ。 | |
従って仕えるべき上司や両親の命令にそむいたり, | |
まわりの人だちと意見を違えたりもすることになるのだ。 | |
しかしながら, | |
もし上の者の心が穏やかで, | |
下の者の心が素直で有れば, | |
たとえどんなことを議論したところで, | |
必ずお互いに理屈が通じるようになるから, | |
世の中で達成できないことは | |
何もなくなってしまうのである。 | |
参考に,10条と17条も記載しておく
十に曰く | |
第十に示しておきたいことは, | |
心の怒りを無くし, | |
外側に怒りを出すことをやめ, | |
そして他の人たちが | |
自分と違う意見を持っていることに対して | |
腹を立ててはいけない, | |
ということなのである。 | |
一人びとりにはそれぞれの心があって, | |
その心が拠り所とするものは同じ訳ではない。 | |
相手が正しいとすれば自分が間違っているのであり, | |
自分が正しいとすれば相手が間違っていることになる。 | |
自分がいつも偉いということはないし, | |
相手がいつも愚かであるということもない。 | |
お互いに平凡な人間にしかすぎないのだ。 | |
一体誰が正しいとか間違っているとかを | |
決めることが出来るということなのだろうか。 | |
ちょうど,丸い輪には端がないように, | |
お互いに賢いこともあれば愚かなこともあるのだ。 | |
したがって, | |
たとえ相手がどんなに腹を立てても, | |
自分の方が間違っていないかどうかを | |
まず考えるべきなのである。 | |
そして, | |
たとえ自分が正しいのではないかと思ったとしても, | |
他の人々の意見を聞いて | |
同じように行動すべきなのである。 | |
十七に曰く | |
第十七に示しておきたいことに, | |
物事を決断するときには一人でしてはならない, | |
ということなのである。 | |
必ずみんなと一緒に | |
相談してから決定すべきなのである。 | |
小さな問題の場合は | |
そんなに重要ではないから, | |
必ずしもみんなで相談しなくてもよいだろう。 | |
しかしながら, | |
重要な問題について議論する場合には, | |
少しでも間違った結論に | |
到達する恐れがあってはならないのである。 | |
だからこそ | |
多くの人々と一緒に議論することによって, | |
正しい結論に到達できるように | |
するべきなのである。 | |
私たちは,宗教の話でも,道徳の話でもなく,マネジメントの話をしたのだ。
Group HiRAC の諸君。
先入観をなくして,穏やかな心で,もう一度読んでもらいたい。
マネジメントの考え方には,新しいものはないのである。
「難しいことを,あわてることなく,簡単にこなす者」
それが,プロだとお互いに言ってきた。
一人の世界なら,自らの努力で目標を達成出来るだろう。
しかし,私たちはチームの中で生きている。
単純なその時だけの打合せで,プロとしての仕事が出来るのだろうか?
サッカーで 「アイコンタクト」 という言葉が使われる。
その場限りのコミュニケーションで, 「アイコンタクト」 は生まれない。
すばらしいプレーが生み出されたのなら,個人の能力によるプレーに過ぎない。
日常の「コミュニケーション」こそが,「アイコンタクト」を生み出し,チームを勝利の歓喜に導く。
羅針盤が方向を指し示さなくても,起こっている現象にとらわれることなく生き抜く力を身につけ,そして,私たちも,新しいステージに向かって,スマートに 「アイコンタクト」 したいものだ。
誰でもない,君が灯をつけろ! フーテンの熊