『 暗黒面Ⅰ 』
ボンド,ベトン・ボンド。
生コンの受領書に使用材料の単位量記載にまつわるお話です。
このお話は大変な誤解を招く危険性がありますが,勇気を振り絞ってペンを取ります。
**************************************************************************************************************************************************************************平成7年に発生した阪神大震災は,例えば,阪神高速道路の一部が倒壊したことや,崩壊したマンションがかなりあったように,私たちが携わる生コンが使用された鉄筋コンクリートが大きな打撃を受けました。
特に細長い部材(建築物の柱や梁)に使用された鉄筋コンクリートは座屈 が発生しました。
この現象は,むずかしい用語で “ せん断破壊 ” と呼ばれ,建物に深刻なダメージを与え人命にも大きく影響するといわれています。
阪神大震災以降,建物の設計は,鉄筋コンクリートの座屈(せん断破壊)を防止するための対策が行われるようになりました。
梁部材には,あばら筋(スターラップ),柱には帯筋(フープ)を細かく配筋して補強するようになりました。〔なぜ鉄筋をいれるのか〕
つまり,以前に比べて内部の鉄筋が細かく(鉄筋と鉄筋の間隔を狭くして)配置されるようになり,いわゆる,生コンが打設しにくい設計になっています。
5月のある日,数社のゼネコン技術者と食事する機会がありましたが,この技術者たちは口をそろえてこう言いました。
“ 施工しにくい,つまり,打込みにくい生コンは,良い生コンとは言わない。 ”
そこで透かさず,くちばしの黄色い “Mr.ロボット刑事k” が口をはさみます。
“ でも,ゼネコンは打てないスランプのオーダーを止めませんよねぇ。おかしいですよねー ”
その技術者達は,声を絞って寂しそうに応えます。
“ うん。でも,こんなスランプじゃ打てないと設計に言い返すと,工事を止められるんだよねぇ。
工期延長は現場の責任なんだよ・・・。ヤツらは現場のこと,解ってないんだよ! “
心の叫び……<だから上限いっぱいのスランプを要求すんのかよ!!!!>
ゼネコンさんの内情は詳しく解りませんが,どうやら建物を「造る側」よりも「設計する側」のほうが権限が大きいようです。
あるいは,「造る側」が「設計する側」にうまく説明できないのかもしれません。
しかし,このギャップに対して,生コン工場が安易に 「スランプ上限出荷」 で対応することが問題の解決策になるとは思えません。
“ STAR WARS ” は,ジョージルーカス監督の有名な映画です。
この作品に,フォース(理力)という不思議な力を,理性で制御する 『 ライトサイド(ジェダイ) 』 と感情のまま開放しようとする 『 ダークサイド(暗黒面) 』 との争いが描かれています。
全作品(2部6作品)を通じて,安易な道とされている暗黒面に取り込まれた哀れなオトコの物語です。
私たち生コン業界は,土木建築業界の 「施工側」 と 「設計側」 の隔たりを目の当たりにして,ダークサイドな解決法(スランプ上限出荷)を是としてはなりません。
平成22年4月から JIS A 5308 が規定する “ 納入書への単位量記載 ” は,設計側と対話する機会になるかもしれません。
今回は,主に建築工事のお話でした。
次回は,『 暗黒面Ⅱ 』 として土木工事でお話したいと思っています。
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そろそろ梅雨かな?
過ごしにくい季節を迎えます。
by ベトン・ボンド