『 本末転倒 』
ボンド,ベトン・ボンド。
さて,GWが終了した途端に,暑かったり,肌寒かったり,季節が不安定な今日この頃です。
前回お伝えしたとおり,レディーミクストコンクリートについて,もうひとつだけお話しをします。
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第8回 JIS A 5308 : 2009 レディーミクストコンクリート
プラントミキサに関わる規定です。
まずは,JIS A 5308 が規定している内容を確認してみましょう。
■ JIS A 5308 : 2009 8.1.3 ミキサ (抜粋) | |||||
ミキサは,次による。 | |||||
a) | ミキサは,固定ミキサとし,JIS A 8603 に適合するものでなければならない。 | ||||
ただし,公称 容量がJIS A 8603 の表1(ミキサの種類及び公称容量)に規定する値に | |||||
適合しないミキサの場合は,JIS A 8603の4.(性能)※ に適合することが確認されたもの | |||||
を用いる。 | |||||
※ JIS A 8604 4.(性能)の表2 に品質項目と基準値が示されています。 | |||||
■ JIS A 5308 : 2009 同解説 (抜粋) | |||||
3.5.1 ミキサ (本体の8.1.3) | |||||
ミキサについては従来,関連規格である JIS A 8603 が引用されていなかったが,規格 | |||||
の整合化及び設備の信頼性を維持するため, “ ミキサは,固定ミキサとし, JIS A 8603 | |||||
に適合するものでなければならない。” こととした。 | |||||
レディーミクストコンクリート工場の中には,使用しているミキサの容量が JIS A 8603 の | |||||
表1 に規定されている値 ( 0.5,0.75,1.0, 1.5,2.0, 2.5,3.0 m3 ) と適合しないミキサを | |||||
用いる場合 (例えば,2.75 m3,や 6 m3 のもの) もある。 これは,高強度コンクリートや | |||||
高流動コンクリート,舗装コンクリート (転圧コンクリートも含む) など,コンクリートの練混ぜ | |||||
量を,ミキサ容量より小さくすることが必要な場合の練混ぜ効率を配慮したこと,及びミキサ | |||||
の技術開発によって大容量の練混ぜが可能となったミキサが使用されていることの結果で | |||||
ある。 このように,公称容量が規格と整合しない場合には,ミキサの性能を確認して,その | |||||
内容が JIS A 8603 の 4. (性能) に適合すれば使用できることとした。 この場合,性能の | |||||
確認は,ミキサの製造者が発行する性能に関する証明書類によってもよい。 | |||||
次に,JIS A 8603 : 1994 の 表1 と 表2 を示します。
さて,肝心の JIS A 5308 8.1.3 の解釈です。
ボンドは,この部分について次のように理解していました。
a)の “ ただし ~ を用いる。” の表現から,JIS A 8603 の 表1 の規定にないミキサを設置している生コン工場は,同規格 表2 の適合性を確認しなければなりません。
表1 に規定のないミキサとは, 3.0m3 を超える容量の 大型ミキサ, らせん軸ミキサ, ダッシュタイプで例えば容量が 1.7m3 のミキサを指します。
ところが各登録認証機関は,この部分を次の通りに解釈している模様です。
・ 主文は, 『 ミキサは,固定ミキサとし,JIS A 8603 に適合するものでなければならない。』 であり,すべてのプラントミキサが適合しなければならない。
・ 生コンJIS工場のミキサは,練混ぜ性能が示す 表2 に適合しなければならない。
・ この確認は,プラントメーカーの成績表でもよい。
ご存知の JIS A 5308 は,昭和28年(1953年)に制定されました。
一方, JIS A 8603 は,昭和45年(1970年)に制定されています。
JIS A 5308 は,十数年間 JIS A 8603 を無視してきましたが,なぜか今回,この規格を引用しました。
次に JIS A 8603 の改正履歴を確認してみましょう。
JIS規格の内容の理解に苦しむとき,その解説を読むと解決することがあります。
つまり,JIS A 8603 の解説を探さなければなりません。
生コンJISハンドブックをめくってみましょう。
・・・ 残念ながら掲載されていません。
気を取り直して,JISCホームページで JIS A 8603 を閲覧してみましょう。
・・・ 残念ながら解説は閲覧できません。
JIS A 8603は,昭和45年(1970年)に制定され,昭和52年,昭和60年及び平成6年に改正されています。
平成6年以前のコンクリートミキサに関する規格には,次の3つが存在していました。
JIS A 8601 (ドラムミキサ)
JIS A 8602(可傾式ミキサ)
JIS A 8603(強制練りミキサ)
平成6年(1994年)の改正では,当時にはほとんど製造されなくなった ドラムミキサ が廃止され,可傾式ミキサと強制練りミキサがひとつに統合されました。
また,平成6年の改正以前は,ミキサ練混ぜ性能の基準は,モルタル単位容積質量差と単位粗骨材量の差だけだったようです。
しかし,ミキサ専門委員会で審議されて,圧縮強度・スランプ・空気量の基準が加わった模様です。
JIS A 5308 2. 引用規格には,『 引用規格は,その最新版を適用する 』 と明記されていますから,ミキサの規格についても最新版の規格を引用するようになったのかもしれません。
しかし,納得できません。
平成6年に練混ぜ性能に加わった圧縮強度・スランプ・空気量の基準値はどのようにして決定されたのでしょうか。
再び JIS A 8603 の解説です。
どうやら基準値は,平成5年6月~8月にかけて全国生コンクリート工業組合連合会技術部が 66個のプラントミキサで実施した試験結果を取り纏めて決定されたもののようです。
つまり,生コンの品質を確保するための必要な基準ではなく,当時に調査したプラントミキサの能力について,まとめた数値だったのです。
ところで,ミキサの練混ぜ性能試験は,生コンの分野別認証指針である JIS Q 1011 A.4 で 年1回実施するよう規定されています。
従来実施していた練混ぜ性能試験と JIS A 8603 の適合性で実施する試験は何が違うのでしょうか。
生コン工場では,生コンの練混ぜ時間を独自に決定します。
生コン工場では,モルタル単位容積質量差と単位粗骨材量の差が基準を満たす範囲で,諸条件 (指定スランプ,コンクリートの種類や配合等) により練混ぜ時間を決定します。
一方, JIS A 8603 の適合性は, 製造条件 (配合,練混ぜ時間,練混ぜ量) を一定にして,均一な生コンが製造できるかどうかを判断します。
前者は生コン工場で独自に設定した製造条件が適切かどうか判断する検査であり,後者は,ミキサ自身が所定能力を有しているかの検査です。
つまり,前者は生コン工場が担保しなければならない事象であり,後者はプラントメーカが担保しなければならない事象ではないでしょうか。
平成21年3月,プラントメーカーは挙って,この JIS A 8603 適合性の証明書を発行するのを拒みました。
各登録認証機関が解釈しているように,使用しているミキサについて JIS A 8603 への適合が主文であるとするならば,生コン工場は,プラントメーカに対して,設置したミキサの 「基準適合証明書」 の発行を要求しなければなりません。
ご存じのように,平成17年(2005年)にJIS制度が大きく変更され,工場審査方式から製品認証方式になりました。
現存の JIS工場は,すべて,新制度に移行する際に,製品試験を行いました。
登録認証機関自身が製品試験結果で表示認証をしています。
新たなミキサを導入する場合ならともかく,JIS認証工場に対して,JIS A 8603 への適合性を何故いまさら,重要視するのか大変疑問であり, 『 本末転倒 』 だと思います。
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官から民に移管されたJISは,本当に規制緩和になっているのか
大変怒りを感じています。
by ベトン・ボンド