『 猜疑 』
ボンド,ベトン・ボンド。
先週は,お休みしましたから,久しぶりにペンを取る気分です。
蒸し暑さはまだありますが,日差しは穏やかになってきた今日この頃です。
“ 秋 ” という季節は,我々生コン業界では,やや忙しいときではないでしょうか。
それもそのはずで,我々の業界は,全国統一監査という行事があります。
これは,生コン工場の品質管理体制や製品品質を,自主的にお互いに照査しあうというイベント(不適切な表現かもしれません)です。
生コンは,様々な “規格基準類 ” で制約を受けています。
最も基本的な規格は,工業標準化法によって定められている JIS であり,これは,生コンの製品としての諸品質が,ある一定の不良率以下となるよう管理するための “ おきて ” です。
生コンについてのJISは,1953年11月に制定された JIS A 5308 で,幾重の改正を経て現存の形になっています。
この他,建築基準法に基づく建築工事では,JASS 5 という基準に,道路公団( 現在NEXCO ) が管理するコンクリート工事は,施工管理要領という基準に,それぞれ適合しなければなりません。
1990年代になると,品質保証という概念をシステム化した,ISOが導入されるようになりました。
JISは,工業製品を対象としていますが,このシステムは工業製品に限らず,サービス産業等にも適用することができます。
当初は,このISOを取得すると “外資系の金融機関から融資を受けやすくなる ” や “JISよりランクの高いシステムを獲得して差別化を図る ” 等のメリットがあると言われていました。
しかし,ISOを取得する生コン会社が増加し始めた頃,全国生コンクリート工業組合連合会は,ISOは取得や維持管理に莫大な費用がかかるといったデメリットを克服するために,先の全国統一監査基準に,ISOの要求事項が取り入れられました(1997年と記憶しています)。
このため,生コン会社は,それぞれの規格や基準類に適合するように対策を講じなければならなくなりました。
ここで,“ 規格 ” や “ 基準 ” について考えてみましょう。
“ 何故,これを考えるのか? ”ということですが,これらの規格類には,生コン製造や建設現場の視点から見て,理想の姿が描かれているとしか思えない項目が存在するからです。
もっとも,法律に代表される規格や基準は,すべて完全ではありません。
誤解や曲解を恐れずに発言しますが,例えば,現在の日本国憲法第9条には,国際紛争を放棄するために陸海軍の軍隊を持たないと明文化しています。
過去に日本が関わった国際紛争は,いずれも日本から宣戦布告をおこなっていたため,自分たちが始めなめれば紛争は起きないと考えたのは自然なことかもしれません。
しかし,国際紛争は,イラクに侵攻されたクウェートのように相手から仕掛けられて発生する場合もあります。
また,自衛隊は実質的は軍隊であり, “ 軍隊 ” という呼称を言い換えた存在です。
阪神大震災以降,耐震性を向上させるために,鉄筋比を高くした部位や,鉄筋間隔を小さく配筋した部位が大変多くなってきています。
しかしながら,設計側は,コンクリートの乾燥収縮をおさえるためにスランプの小さなコンクリートを発注します。
このため,実際の現場では,鉄筋間にコンクリートが充填しにくくなり,施工側は生コン工場に,荷卸時のコンクリートのスランプは規格上限となるように要請します(8~18㎝の場合,許容差は±2.5㎝です)。
例えば,生コン工場では,指定スランプ18㎝のコンクリートの注文を受け,荷卸時に試料を採取して試験した結果が18㎝である場合,指定どおりのスランプで出荷しているにもかかわらず,施工者から “ 生コンが固くて,打設しにくい ” と指摘されるケースが多々あります。
このように,建物の設計は,耐久性のあるコンクリート構造物を造るためだけのコンクリートの調合設計を最重要視していて,“施工性=つくりやすさ”という観点が極端に欠如しているように感じます。
設計は確かに重要です。
しかし,設計(計算)だけで建物が完成するのではなく,実際に施工(手で作って)して出来上がります。
つまり,優れた設計を持つコンクリートは,施工(打設)可能なものでなければなりません。
この両者が乖離したままでは,本当に耐久性の優れた建物を創ることはできないのではないでしょうか?
設計は理論的です。
一方,施工は実践的です。
両者がぶつかり合ったとき,設計は曲がることがなく,逆に施工が様々な対応しています。
これからは,生コンの品質や,優れた建物を造るための規格や基準を順守するだけでなく,そのものの作成に携われる人物や組織を輩出しなければなりません。
グループHiRACから,このような人物や組織が誕生することを願ってやみません。
集合住宅の住民で草刈をおこないました。
スコールのような大雨が降ったせいか,雑草がいつになく繁殖していましたが,きれいにする事が出来ました。
秋は,収穫の季節です。
by ベトン・ボンド