2008年7月 7日 (月)

Mr.Bond の 劣化診断

6月30日の記事でグループの皆さんへ出題した劣化診断について,ボンド氏より報告書が届きましたのでご紹介します。 

コンクリート診断士の学習で参考にしてください。

また,意見がありましたらご連絡下さい。

Shin01  

 

 

 

 

 写真1

 

Shin02  

 

 

 

 

 写真2

 

Shin03  

 

 

 

 

 写真3

 

 

1.劣化内容

    写真1~写真3よると,このRC柱は,コンクリートの浮き及び剥落が生じており,鉄筋が一部露出している。

    露出した鉄筋表面は錆が発生しているが,断面欠損については確認できない。

    なお,写真では,漏水や錆汁及びゲル滲出は確認できない。

    また,露出した鉄筋に座屈や変形(曲部)は認められず,鉄筋内部のコンクリート崩れも発生していないため,阪神大震災被災による損傷の可能性は低いと思われる。

    しかし,コンクリートの浮き・剥離及び露出した鉄筋表面が錆びていることから,緊急に補修する必要があると判断する。

2.劣化要因の推定

    構造物が置かれた環境(運河の近くに存在)と劣化内容から,飛来塩分による塩害,コンクリートの中性化によるものと推定される。

    また,構造物は建築されてかなり年数が経過していると思われることを考慮すると両者が複合して劣化に至ったとも考えられる。

    一般にアルカリシリカ反応による劣化が発生したコンクリート構造物は,拘束が少ない場合は亀甲状のひび割れが発生し,柱等のように軸方向鋼材で膨張が拘束される場合には,軸方向に大きいひび割れが発生する。

    このため,アルカリシリカ反応による可能性についても検証する必要があると考える。

3.要因を特定するための手法

  1 書類調査

柱の設計図面,使用したコンクリートの情報使用材料,調合及び品質記録),供用された後の補修の有無及び補修履歴について,設計図書や管理記録類の調査をおこなう。

  2 コア採取及び試料分析

     鉄筋位置より深い箇所までコアを複数採取する。

   ① 塩化物量試験

      得られたコアの一部を等間隔でスライスし,それぞれを分析試料として,可溶性塩化物量と全塩化物量を測定する。

       測定結果を,JIS A 5308 によるコンクリートの塩化物含有量の規定値(0.30/m3)や発錆限界塩化物イオン量(1.2/3)と比較をおこなう。

     また,コンクリート表面からの距離と塩化物量の関係を図示し,構造物中の塩化物量濃度分布を把握する。

   ② 中性化深さ

     コアを割裂し,割裂面に1015㎜間隔でフェノールフタレイン1%溶液を噴霧し,中性化した箇所の面積を測定して中性化深さを把握する。

   ③ アルカリシリカ反応

     コア破断面に酢酸ウラニル溶液を塗布し,UVライトを照射してアルカリシリカゲルの存在を確認する。

     アルカリシリカ反応を起こしたコンクリートは,圧縮強度の低下と著しく弾性係数が低下するといわれているため,コアの強度と弾性係数を測定し,設計基準強度との比較をおこなう。

     採取したコアを,促進養生試験により残存膨張量を測定し,既存のコンクリートが有害な膨張量を残存しているかの判断をおこなう。

3.補修方法

   劣化要因により補修方法が異なるため,劣化要因別に列記する。

  1 塩害

    塩害とした場合,露出鉄筋に著しい断面欠損が発生してないと思われるため,柱劣化過程を加速期と判断する。

    このため,鉄筋の腐食進行を低減するために電気防食をおこない,浮きが生じた箇所及び,限界値を超えた塩化物イオンを含むコンクリートを除去して断面修復を行う。

  2 中性化

    塩害と同様,劣化過程を加速期と判断する。浮きが生じた箇所及び,中性化している部分のコンクリートを除去して断面修復をおこなう。

    車の排ガス等の影響が懸念される場合等,表面被覆を施し,コンクリート表面からの腐食性物質の侵入を防止する。

  3 アルカリシリカ反応

    ゲル滲出等の現象が確認できないため,アルカリシリカ反応による柱の劣化の可能性は低いと思われる。

    アルカリシリカ反応による場合には,劣化過程を加速期又は劣化期と判断する。

    劣化したコンクリート部分を除去し,断面修復をおこなう。コンクリートの弾性係数が著しく低下している場合には,FRP・鋼板接着やRC巻立て補強を実施する。

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