『 構造体コンクリート その1 』
ボンド,ベトン・ボンド。
ここ3回程度,組織的な仕事という観点から考察した事項を述べてきました。私たちHiRACは,生コンを製造することが主な仕事です。
そこで,そろそろコンクリートのお話をする順番かと思い,“構造体コンクリート”について語ってみます。
私たちは,法治国家である日本国に暮らしています。法治国家であるということは,文字通り法律が国を治めらて,統治していることを意味します。
つまり,ありとあらゆる事象について“きまり”が定められています。一体いくつの“きまり”があるかは不明ですが,住宅やマンション,オフィスビル等は,『建築基準法』に従って建設されています。
建築基準法は,第1章~第7章(第1条~105条)及び別表1~別表4で構成されています。http://www.architectlaw.net/
建築基準法に基づきJASS5では,建築物のコンクリート強度について次に基準があります。
・構造体コンクリートの圧縮強度は,設計基準強度以上とする。
・使用するコンクリートの圧縮強度は,構造体補正強度以上とする。
構造体コンクリートの圧縮強度の規定は,昭和56年6月1日建設省告示第1102号(最終改正 平成12年5月31日建設省告示第1462号)があります。
http://apple.webdos.net/~prearch/news/houreisyuu/kokuji/S56-1102.html
また,構造体コンクリートの圧縮強度とは,構造体中で発現しているコンクリートの強度であると定義されており,概念的なものを意味しているようです。
この言葉から,例えば,構造体コンクリートとして柱を作った場合,完成した柱からコア供試体を採取すればよいと考えるひとが多いのではないでしょうか?
しかし,構造体を代表する部分はどこか(どの部分からコアを採取するか)や,構造体が置かれた環境条件の影響をどのように考慮するか等の問題や,せっかく完成した構造体を破壊する等の問題があり,コンクリートの圧縮強度を数値で表すのは困難であるといわれています。
建築工事では,工事現場で採取したコンクリートで作製した供試体の強度で構造体コンクリートの評価をしています。
また,環境条件に対しては,供試体を工事現場内の水槽で養生(現場水中養生)するか,供試体ラップフィルムで包んで気中で養生する方法(現場封かん養生)で対応します。
現場水中養生は,管理材齢を28日とした場合に用いられる方法であり,現場封かん養生は管理材齢が28日を超え91日以内とする場合に用いられる方法です。
さて,JISA5308レディーミクストコンクリートの強度管理基準は次のとおりです。
a)養生方法:標準水中養生
b)管理基準:
・1回の試験結果が,呼び強度の強度値の85%以上
・3回の平均値が呼び強度以上
一方,建築学会が定めるJASS5では,使用するコンクリートと構造体コンクリートの圧縮強度はそれぞれ次の基準で管理します。
【使用するコンクリート】
1)養生方法:標準水中養生
2)管理基準:
・材齢28日における3回の試験結果の平均値が,
Fc(設計基準強度)+
⊿T(構造体コンクリートと供試体の強度との差を考慮した割増し)+
T(予想気温による強度の補正値)以上
・材齢28日における3回の試験結果の最小値が,
0.85(Fc+⊿T+T)以上
【構造体コンクリート】
1)養生方法:現場水中養生
2)管理基準:
・材齢28日における3回の試験結果の平均値が,Fc+⊿T 以上
JIS A 5308は,生コンを製造する側の基準,JASS5は,生コンを購入する側の受入基準と考えると,両者で多少異なることが分かります。
ここで私たち生コン製造側で慣れ親しんできた“呼び強度”は,
Fc(設計基準強度)+
⊿T(構造体コンクリートと供試体の強度との差を考慮した割増し)+
T(予想気温による強度の補正値)
に相当します。
身近でない法律や,わかりにくい記号が並びましたから,皆さん読み疲れしてきたのではないかと思いますので,今日はペンを置きます。
次回は,生コン購入側が“構造体コンクリート”の知識不足から発生したと思われるクレームのお話をします。
次回,乞うご期待!
愛娘が寝返りを打てるようになりました。-ベトン・ボンド-