2009年12月25日 (金)

『 咖喱 〔その3〕 』

ボンド,ベトン・ボンド
引き続き  “ 骨材 ”  に関する 「社内規格編成」 のウンチクです。

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今回は,砂利と砂のお話です。
前回,骨材はカレーライスの米と申し上げました。
阪神地区では,古くは川砂利を使っていましたが,現在ではすっかり砕石が普及しています。
環境問題等から採取が出来なくなったのか,関西では砂利を使用している生コン会社は地方にしかありません。
米で例えるなら,玄米に該当します。   200912251

この “ 玄米 ” には, 山砂利 ・ 川砂利 ・ 海砂利 があるようですが,ボンド自身は “ 海砂利 ” にお目にかかったことがありません。
 
なお,砂利を標準化している生コン会社は,舗装コンクリートの曲げ強度は注意しなければなりません。
なぜなら,気が遠くなるくらい長時間にわたり河川等を流れて “ まるみ ” を帯びた砂利は,砕石に比べてモルタルとの付着が悪くなるからです。
 
旧JIS制度では,普通コンクリートに関して,製品試験が JIS A 5308 に適合していれば表示認定取得となり,もれなく舗装コンクリートもセットで付いてきました。

200912252 ところが, 新JIS制度 の場合 ,舗装コンクリートを
標準化するならば,舗装コンクリートの製品試験を
行って,JIS A 5308 に適合しなければなりません。

一般に,舗装コンクリートは普通コンクリートに比べて出荷頻度が高くありません。
このため, 砕石や砂利を使用しているかに依らず,舗装コンクリートの製造に慣れている生コン会社は多くありません。

そこで,新JISへの移行審査やサーベイランスを受審する際には,試作等を実施してフレッシュ性状や曲げ強度を十分に把握しなければなりません。
フレッシュ性状は,試作回数を重ねれば十分に把握することができ,よい生コンを造るコツを掴むことができます。
 
曲げ強度も同様に,試作回数を重ねれば強度発現性を把握できます。
ところが砂利を使用する場合,所要の曲げ強度が得られないことがあります。
水セメント比を小さくしても,付着強度の問題から曲げ強度値が改善しないことがあり,骨材を再選定しなければならないかもしれません。
何度もいいますが,砂利を使用する場合,舗装コンクリートの曲げ強度には,十分注意し,性状を把握しておかねばなりません。
 
海砂 ・ 山砂 ・ 川砂 ・ 陸砂 等を総称して,『 砂 』 とします。
このうち阪神地区では,現在,海砂と山砂が普及しています。
川砂は,中国福建省で採取された輸入川砂が一時普及しましたが,現在は廃れています。
 
えっ ?  はい ! 
「 社内規格 」 の作り方でしたね。

ここで,アルカリシリカ反応性について考えてみましょう。
前回の復習ですが,砕砂のアルカリシリカ反応性評価は,同一産地・同一製造業者であれば,砕石の試験結果で判定が可能でした。
その生コン工場では,同一産地,同一製造業者の 山砂利・山砂 を標準化しています。
砕砂と同様,山砂利のアルカリシリカ試験成績表で評価してもよいのでしょうか?

・・・残念ながら,山砂利の試験成績表で,山砂を評価することはできません。
なぜなら,山砂の生成過程は,砕砂と大きく異なるからです。
砕砂 は, 岩石を破砕機にかけて砕き, 砕石を製造するときに発生する細かい粒を, 粒度調整して製造されます。
一方の 山砂は, 色々な岩石が風雨にさらされて堆積したり, 地殻変動の影響を受けながら,気が遠くなるほどの恐らく数万年という膨大な時間を経て,現在使用している状態(粒度)になったものです。
つまり,天然骨材と称される砂利や砂は,粒度構成が異なると,岩種も異なると判断しなければなりません。
従って,天然骨材を使用する場合,同一産地・製造業者であっても種類毎にアルカリシリカ反応性試験を実施する(製造業者から試験表を入手)必要があります。
 
その他,天然骨材は,“ 粘土塊 ”・“ 塩化物量 ”・“ 密度1.95g/㎝3の液体浮く粒子 ”,“ 有機不純物 ” を試験しなければなりません。
なお,JIS Q 1011:2009 では,天然骨材の “ 密度1.95g/㎝3の液体浮く粒子 ” と “ 安定性 ” 試験の頻度が変更されました。
JIS Q 1011:2005 や個別審査事項の頃は,両試験とも試験頻度は 『 購入者の指示の都度 』 とされていました。
ところが現在は,12ヶ月に1回に変更されていますので,社内規格においても頻度を変更すると共に試験を実施しなければなりません。    
    200912253
組立説明図は,咖喱〔その2〕 表2 を,
骨材の受入検査方法は,
JIS Q 1011 表A-2-1 を参照して下さい。

 

表2-3.天然骨材の基準値等   表はクリックすると拡大します。

Kikaku0309
 
 
さて,コマを進めます。
骨材に関しては,組立説明図(JIS Q 1011)よりパーツ(JIS A 5308)に引っかかる箇所があります。
骨材を混合して使用する場合についての記述です。
まずは,『咖喱〔その2〕』表2. をご覧下さい。
 
関西では,骨材枯渇問題が深刻です。
瀬戸内海の海砂採取禁止,中国砂輸出禁止,・・・ etc
このため,複数骨材を混合して使用する生コン工場が多いです。
 
骨材を混合して使用する場合は,混合の仕方によって受入検査方法が異なります。
つまり,何と何を混合するのか,いつ混合するか,が重要になります。
混合の例を表2-4 に示します。
 
表2-4.骨材を混合して使用する場合の制約   表はクリックすると拡大します。

Kikaku0310

 
“ いつ混合するか ” についてです。
つまり,『 あらかじめ混合したもの 【骨材業者が混合したもの】 を購入する 』 か,『 コンクリート製造時別々に計量する【別々に購入して生コン工場計量器で混合する】 』 かです。
 
前者は,品質を含む混合の責任は骨材業者にあります。
以前 『 折衝 』でもお話しましたが,骨材業者のJIS取得は増加しているものの,数は決して多くありません。
砕石・砕砂は固有のJIS規格がありますが,山砂・海砂・川砂・砂利にはそれがありません。
JIS A 5308 の附属書として規定されています。
JIS工場でない骨材業者が,混合方法や混合率の保証をするとしても,何を根拠にしてよいか分かりません。
この場合,残念ながら混合品質の担保等は,直接骨材の製造に関与していない生コン会社が負担しなければならないのではないでしょうか。
規格としては少し矛盾を感じます。 200912254

JIS A 5308 の附属書A には,異種類混合・同一種類混合で
あっても,混合前に確認しなければならない品質項目が規定
されています。
しかし,生コン工場には混合された骨材が納入されるために,
混合する前の骨材を入手して,品質の確認を実施しなければ        骨材製造プラント
なりません。
ただし,骨材を保管するサイロやヤード,バッチングプラントの貯蔵ビンに余裕がない場合は,これらのことを踏まえて,『 あらかじめ混合した 』 骨材の購入を検討しなければなりません。

同一種類混合,異種類混合について受入検査で必要な項目を表2-5 に示します。
 
表2-5  受入検査として必要な項目   表はクリックすると拡大します。

Kikaku0311  
 
 
 
同一種類混合の特徴をキーワードで表すと “ 二人三脚 ” です。
絶乾密度・吸水率,安定性以外の項目が,混合前は基準に不適合であっても混合後に適合していれば使用できます。
 
異種類混合のキーワードは “ 切磋琢磨 ” です。
混合前の品質は,粒度と塩化物量以外はすべて,それぞれの種類の基準に適合していなければなりません。
 
混合後の試験結果は,混合前の試験結果から計算で推定することができます。
つまり,同一種類混合の場合も混合前の骨材について,それぞれ(表2-6では海砂と川砂)試験し,混合後の試験結果を計算して評価します。
このためボンドは,同一種類混合であっても混合前をそれぞれ試験評価する方法を推奨します。
 
塩化物量試験は,同一種類混合・異種類混合ともに混合後の試験値が必要です。 200912255
塩化物量は,JIS A 5002 〔構造用軽量コンクリート骨材〕 5.5 の試験方法 で測定
します。
試料の量は,普通骨材の場合,JIS A 5308 附属書Aに 1,000g と規定しています。
試験は,図に示す手順で行います。
ポイントは,試料をはかりとって広口ビンにいれて乾燥するという箇所です。
 
乾燥は試料をはかり取った後に実施します。 Kikaku0312
湿潤状態の細骨材を 1,000g はかります。
つまり,図1.試験手順の ⑤では 乾燥前の1,000gより少なくなるはずです。
乾燥後の試料を 1,000g 採取して,塩化物
試験を実施する生コン工場がありますが,
これは誤りです。
 
細骨材の塩化物量は,0.15㎜以下の粒子に多く含まれるといわれています。
絶乾状態になった細骨材をはかりとる操作を行うと,この粒子が飛散し,正確な試験結果が得られなくなる可能性があります。
このため,試験手順では湿潤状態の試料を
計量し,広口ビンに入れて乾燥するのです。
 
おい ! コラっ !
ほれやったら,混合後には試料の調整すらできひんやないか !
【ロン毛のペルー・ボンドさん 久々登場 ? 】
 
そのとおりです。
〔海砂+山砂〕であれ〔海砂+砕砂〕であれ,塩化物量試験をおこなうために混合状態の
試料を調整することは大変困難です。
混合前にそれぞれ試験を実施し,混合後を
割合に応じて計算するほうが合理的です。
 

かなり紙面を使いましたので,そろそろ筆をおきましょうか。
 
200912256  おいおい,ちょっと待ったれや!
 まだ粒度の説明してへんやないか!!
 咖喱〔その2〕表2. 観てみぃ
 うちも,海砂と砕砂を標準化して材料計量時
 混合してつこおてるけど,混合後の 0.15㎜
 粒度範囲は 0~10 にしてるで・・・
 これは間違いなんか ?
 「社内規格」変更せんとあかんのか ?
 【ロン毛のペルー・ボンドさん 再登場】

 

大変するどい質問です。
海砂と砕砂を混合した骨材の,0.15㎜粒度範囲を,0~10 と 「社内規格」 に記載してあるのは間違いではありません。
答えは “ 規制緩和 ” です。
実は,1996年版 JIS A 5308 附属書1 には以下のように記載されていました。

Kikaku0313

そして,1998年版 JIS A 5308 で,現在の記述となりました。
『0.15㎜ふるいを通るものの質量百分率(%)は,コンクリート製造時に各骨材を別々に計量して用いる場合は,混合後の細骨材に対し 2~15% とする。』

1996年までは,混合骨材〔海砂+砕砂〕の 0.15㎜粒度範囲を 0~10で管理していたのです。
規制が緩和されても,十分に適合する品質項目の場合は,社内規格値をわざわざ緩和するための改正をする必要はありません。

このため,海砂+砕砂の 0.15㎜粒度範囲は,0~10で管理可能と判断し, 「社内規格」 を変更しなかったのです。
けっして,改正し忘れではありません。
ペルーさん,納得していただけましたか?

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今回の『咖喱〔その3〕』は,作成に 1ヶ月かかりました。
結果,胸焼けするようにくどい文章になったことをお詫び申し上げます。
いよいよ次回から,製造工程の管理のお話になります。 どうかお付き合い下さい。200912257

 

                  メリー,メリークリスマス!      

                         by ベトン・ボンド

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