2009年7月17日 (金)

『 蛇口 』

ボンド,ベトン・ボンド。
生コンの出荷量が激減しています(全盛期の約半分くらいまで落ち込んでいます)。
また,その量は落ち込んだまま,回復する兆しがありません。   〔 全国生コン出荷量推移

もはや,生コンは不要な材料なのでしょうか ?
いやいや。生コンは出荷量 “ ゼロ ” とはなりえない材料です。

大阪市内では,数は少ないかもしれませんが,建設用クレーンを目にすることができます。
しかし,生コン需要は明らかに減少しています。
「生コン工場数」が,「生コン需要」に見合っていないと言われています。

生コン工業組合連合会は,この状況を重要視しており,来年 2010年から 5年かけて 1,200の生コン工場を廃棄すると発表しました。  〔 生コンクリート産業の構造改革の基本方針(案)

一方,この発表を受けて “ 経済産業省 ” も JIS規格の運用状況の検査や環境規制を強化する等を検討し,各種施策を後押しすると表明した模様です。   〔 セメント新聞記事

生コン工業組合連合会の発表はうなずけますが,経済産業省の表明はあまり快く思いません。
解釈が間違っていなければ,JIS 制度は高い壁を築くことが出来る性格ではないからです。

JIS製品とはどのような製品であるか御存知ですか?
それは,ある品質について不良率が一定の値以下となるように管理された製品を意味します。

例えば,生コンはスランプや空気量の製品検査結果について,ヒストグラムを作成して管理しています。< br />ヒストグラムは,製品を造りこむ工程が安定状態にあるかどうか判断するために作成します。
安定状態は,視覚的にデータの分布に偏りがないかどうかや,工程能力指数を算出して総合的に判断します。

一般に JIS 工場の工程能力指数は, 1.0 以上が望ましいといわれています。
工程能力指数が1.0 であるとき,規格の上下限を超える確率は 0.54% となります。
つまり,JIS工場に生コンを注文すると,例えばスランプは,地域や工場が違っても規格上下限を外れる確率が 0.54%以下に品質管理された製品を購入することができます。

JISマーク表示制度は,製造工場のランク付けではなく,このように品質管理された工業製品を広く普及することが目的でした。
このため JIS取得を申請する工場は,一定の条件,すなわち,「製品試験が JIS 規格に適合し,将来にわたり組織的な品質管理ができること」を満たしていれば,製品等にJISマークを表示できる権利を取得することができます。
特に生コンのJIS工場は,昭和50年代に爆発的に増殖しました。

新JIS制度になってから,新規取得件数は把握していませんが,旧JIS制度時代,官は生コン工場へのJIS認定をし続けたため,生コンJIS工場数は増え続けました。

あの省庁は,生コン工業組合連合会の方針の後押しを表明するまえに,事態の経過説明を行う必要があるのではないでしょうか?

お話しついでにもう一つ。
平成17年10月より,JIS認証制度が 「工場審査」 から 「製品認証」 に変更され,表示認証に関わる審査等の責任は,官から民に移行されました。
認証審査は,民であればどこでも JIS認証を行えるかというとそうではなくて,国に登録した機関のみが実施することができます。

生コンのJIS規格への適合性を認証できる登録認証機関は,4社程度だったように思います。
国が認可しているにも拘らず,各登録認証機関で認証審査等に必要な料金(審査,変更届等)は,大きく異なっています(7万円~120万円)。
このため,4つ登録認証機関の認証審査数(契約数)は均等にならず,審査費用の安い機関に集中しています。
この省庁から,未だに登録認証機関で審査費用が大きく異なることに関する説明がなされていません。

先にJIS制度は, 「工場審査方式」 から 「製品認証方式」 に変わったと言いましたが,これにより原材料を変更する場合の報告や製造設備変更後の臨時認証審査等の煩わしい手続きがかなり増えて大変混乱しているように感じます。

平成16年頃からその省庁は,新JIS制度に関して,IQCブロック会議や品質管理標準化大会等で盛んに説明を実施してきました。
どの説明会でも「工場審査方式」から「製品認証方式」に制度が変わることを強調して説明していましたが,何故変わるのかについての説明はなかったように思います。

何故変わったのか?
それはTBT協定において,戦略的に日本工業規格(JIS)が国際規格(ISO等)に敗北したためであり,国際規格が日本工業規格より勝っていたわけでないと聞きました。

日本工業規格は大変よく出来た規格ですが,国際競争の波に勝つことができず,日本はJISの運用を変えなければならなかったのです。
制度が変わった背景の主因は,標準化の戦略的な敗北なのです。
説明会で講演した方たちは,経緯を明確にしたうえで,敗北のお詫びをすべきではなかったのでしょうか?

ITは何の略がご存知ですか?
それは, “ インターネットタブ ” の略です。

私たちは,インターネット接続環境が整ったパソコンがあれば,あたかも水道の蛇口をひねるかのようにあらゆる情報を目にすることができます。

かつて,最新技術情報は省庁を通じてしか知ることができませんでした。
ところが,このインターネットの普及により最新技術情報は,省庁より早く入手できるようになりました。

このコーナーの 『 暗黒面Ι 』 に登場したあるゼネコンの技術者は吐き捨てるように言いました。
「 本当は,マンション建設はあんまり受注したくないんですよ。
   だってねぇっ。……
   例えば,マンションを購入した方のなかには,室の不具合をみつけると,
   施工会社名を明らかにして,インターネットで配信するヤツがおるんですよ。
   こうなったらネット上で散々悪口が広がって,本当に販売件数が減ってしまう。
   そうするとディベロッパは,施工者に空き部屋を買わすんですよ…。
   だからあんましマンション建設を受注しないようにしてるんですよ………。」

情報不足で従来の役割が果せなくなっているあの省庁は,JISのハードルを高くして生コン工場の集約を促したり,新規参入を制限しようとしています。
過去に散々増やしておきながら,何故いまさらこのような活動をするのか理解できません。
工場集約等は官より市場に委ねる方が効果があるように思います。

私たち生コン会社は,建物建設を請け負う方々だけを意識しているように感じますが,エンドユーザーとなる,例えばマンションの購入者の目線も視野にいれて仕事すること大切ではないでしょうか(油断するとインターネットであることないこと色々たたかれてシゴトが無くなりますぞ)。

 

Kisetunatu3

 

 

   そろそろ梅雨明け!。
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   兵庫県出身のBOXING世界チャンピオン
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          ベトン・ボンド

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