2009年6月 1日 (月)

『 月見草 』

ボンド,ベトン・ボンド。JASS5,軽量骨材についてです。
 現在,JIS A 5308  レディーミクストコンクリート と JIS Q 1011 改正に対応した 『社内規格』 を整備しています。
 その  「社内規格」  の整備は, 用語 の変更などの細かい部分までを対象にしていますので,「修正-印刷-点検」のサイクルを繰り返し実行しています。
 また,登録認証機関への届出書も平行して作成しているため,なかなか前に進みません。

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 さて,2週間ほど前,名古屋方面の方から電話が入りました。

 『 JASS5 で軽量コンクリート 1種の定義が変わったの知ってるか?
  実際のとこ,大阪では軽量 1種の出荷どうしてるんや!・・・        』

 『 ????? ・・・ 』

 『 なんやっ! JASS5 読んでへんのか。
    ええか,ポイントは2つ。
    ひとつは,軽量2種の定義や。
    これまでの2種は,粗骨材100%軽量やったやろ。
    けど,今度から2種は,普通骨材を混ぜてもよいことになったんや。
    その代わり,軽量1種の粗骨材は今までどおり,軽量骨材100%やで。
    それからもうひとつ,
    その軽量1種やけどな,気乾単位容積質量の範囲が改訂されてるでぇ。
    いままで1.7~2.1 t/m3やったんが,1.8~2.1m3 になったんや !!!・・・』

 『 ・・・そんなとこが改訂されてたんですねぇ 』

 『 呑気(のんき)なっやちゃなぁー。
    だからな,大阪の建築工事で軽量1種をどう扱ってるか聞いてるんやがな 』

 『 ・・・すいません。調べますんで時間もらえますか。 』

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 突然の電話で始まった軽量コンクリートですが,JASS5の2003年版と2009年版の違いを比較して見ましょう。
 まずは種類の比較です。
 表1 をご覧下さい。(見えにくい場合は,表をクリックしてください。)200906011  

 

 

 

 

 

 おやっ?
 軽量コンクリート2種の粗骨材は,主として人工軽量骨材とされていますから,普通骨材を混ぜてもよいのではないかと読み取れます。
 JIS A 5308:2009と比較すると,2種の粗骨材に普通骨材を混ぜた場合,JISマークを表示することができません。

 さて,次に気乾単位容積質量についてです。
 なお,JIS A 5308で軽量コンクリートの単位容積質量は,購入者と協議して指定を受ける事項であり,特に基準値を定めておりません。
 表2 をご覧下さい。

200906012  

 

 

 

 

 

 

 一般に気乾単位容積質量は,定義された推定式から推定値を求めます。

200906013  

 

 

 JASS5 :2009で軽量 1種は,あの“パッキャオ” のようにウェイト階級をアップしています。
 このため,単位セメント量が小さくなる調合,すなわち呼び強度 18 や 21 は 1.8 t/m3  を満足しないのではないかと考えられます。

 そこでAE減水剤使用の軽量1種について標準配合を確認したところ,推定気乾単位容積質量計算値が 1.8 を超えるのは,呼び強度 33 あたりからでした。
 この呼び強度の範囲では,推定気乾単位容積質量計算値が 1750~1820 kg/m3 でした。

 さて大変です。
 私たちの配合では, JASS5 :2009 の 軽量 1種に適合しないのではないかと考えられるからです。

 JASS5の間違いか?
 その願っていたところ,どうやら関東圏では呼び強度 18であっても 1.8t/m3 に適合するとのことでした。

 Why?・・・
 その答えは,使用している人工軽量骨材 の違いに原因がありました。
 関東圏では,日本メサライト工業株式会社 が製造している軽量骨材を使用しています。
 私たちの関西圏では,太平洋セメント株式会社が製造している軽量骨材を使用しています。
 両者の骨材の密度(絶乾状態)を比較すると,粗骨材は 「メサライトのほうが重く」 ,細骨材は 「アサノライトのほうが重たい」 ことが分かりました。

 軽量コンクリートの需要は,軽量 1種のほうが圧倒的に多いため,階級アップに対してはメサライトの方が有利です。
 しかし,残念ながらメサライトは関西圏で入手することができません。

 首都圏マターだけで基準が決定されたのではないかとの疑念もあり,怒りを感じますが,私たちなりに対策を立てる必要があります。

 調合を変更するという方法では,細骨材に密度の大きな 石灰石砕砂 や 高炉スラグ細骨材 を使用するという手段があります。
 しかし,供給の問題があり,これらの細骨材に変更できるかどうかは検討が必要になります。

 さて,もうひとつ。それは手品のからくりのような手法ですが,単位のマジックで何とか解決できるのではないでしょうか。

 推定気乾単位容積質量は単位が kg/m3です。
 一方,JASS5の種類では t/m3 を使用し,かつ,有効数字 2桁で表しています。

 この “からくり” を利用すると,推定値が 1750 kg/m3 は 1.8 t/m3 と表現することができます。

 説明責任が付きまといますが,実際の工事で施工者から指摘された場合,このからくりを利用したらよいのではないでしょうか?

 一昨年頃から,JASS5の改正は大変注目されていました。
 それは,コンクリートの乾燥収縮やヤング係数に基準が設定されると噂されていたからです。

 現在,楽天 野村監督 が現役時代,2500本安打を記録したときのインタビューで長島選手や王選手を “ひまわり” にたとえ,ご本人を “月見草”  に例えました。

 JASS5の改正では,乾燥収縮が長島選手であり,ヤング係数が王選手でした。
 そして軽量 1種は,まるで野村監督 のように密かに改訂されました。

 建築物の耐久性向上(長島選手)や高強度化(王選手)やのほか,軽量化(野村選手)も今後の重大な課題ではないでしょうか。

002091

                                  社内規格の整備で頭が混乱しています

                                       by ベトン・ボンド

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