『 不退転 』
ボンド,ベトン・ボンド。
ある生コン会社(以下A社)は,特殊なコンクリートを出荷しています。
A社が存在するエリアは,久しぶりの大型物件でにぎわっています。
いま,出荷している物件は建築工事ですから,この特殊コンクリートは,建築基準法の制約を受けます。
A社は,来る日に備え,大臣認定の評価を受ける準備を進め,安定供給できる材料を選定して物件が確定する前に余裕を持って評価を受けました。
万全の体制を持って,この物件に望んだはずでした。
ところが,標準水中養生した材齢28日の圧縮強度が,指定強度に達成しないという事態が発生しました。
5つの生コン会社が納入したこの物件のコンクリートの受入検査は,従来と同様,現場代行試験業者によって実施されました。
5社中A社を含む2社で指定強度割れが発生し,1社は,指定強度には達成しているものの強度が低い状態が継続していた模様です。
一方,各社の自社管理では,指定強度を下回るデーターは発生していない様子です。
このため,施工者は,生コン会社と現場代行試験業者の検査設備の整備状態等を現場確認する等の調査を行いました。
調査の結果から,指定強度不足については,構造体からコアを採取し,コア強度を測定して躯体の強度を確認するとされました・・・。
一応,A社では一件落着(?)ムードとなりました。
何故?
A社の本音は,概ね次のとおりです。
① 代行業者の試験結果は,指定強度に対して90%程度であることから,日が経つにつれて 強度は発現するだろう
② 施工者も施主に対して,強度不足とはいえないだろうから生コン会社を支持するだろう
ここで,一つの疑問があります。
強度不足を受けたA社は,技術担当等部署が,施工者と折衝しました。
この折衝は,一時的ですが何とか凌いだようです。
技術担当部署の一人は,生コン製造のオペレーターの技量に不平・不満を抱いているとの噂があります。
A社は,強度不足が発生した案件について,全社をあげて要因抽出や再発防止等の施策をとることもせず,普段とおり出荷作業をおこなっています。
A社は,特殊コンクリートを製造するための工場体制を確立する機会を逸しました。
ときを経て,同じようなクレームを繰り返す恐れがあります。
この物件に納入した,ある会社のお話です。
A社同様,同じ物件に特殊コンクリートを納入していますが,現場代行試験結果は,5工場のうち,強度の平均値が最も高く,十分に品質管理していると評価できます。
この会社の技術責任者は,ボンドの友人です。
彼は,会社の体制が,自分の理想とかけ離れているため, “ 想い ” を伝えるために努力をしているようです(少し疲れ気味ですが)。
例えば, 『 面白くないから,ヤケ酒しに行こうよ 』 と 『 健康のため,明日から一緒にマラソンしようよ 』 という項目で人を勧誘する場合,どちらの方が簡単ですか?
また,体に良いのはどちらですか?
体に良いのは “ マラソン ” で,誘いやすいのは “ ヤケ酒 ” です。
つまり,一般に “ よい ” されている行為や事象は,実行する事がより困難なのです。
会社の体制創りは,咄嗟にできあがるのではなく,大変な時間と労力が掛かるのです。
しかし,やりとげなければならない事象です。
A社の体制は,取り付く島がありませんが,友人の会社の従業員たちは,“聴く耳”を確実に持っています。
友人へ
不退転の姿勢を貫いてください。
貴方の言動に,そして姿勢に“こころ”を動かされる人達が現れてきます。
理想の体制が出来上がる日は,すぐそばまで来ています。
時間の流れは,本当に不思議です。
by ベトン・ボンド