2008年6月 1日 (日)

『 構造体コンクリート その3 』

ボンド,ベトン・ボンド。

またまた,構造体コンクリートのお話しです。
今日は,高強度コンクリート編です。
近年,マンションやビルに使用されるコンクリートの設計基準強度が高くなってきています。

その理由は次の2点によると思われます。
  ・ 建物の高層化
  ・ 居住空間を広くする設計による柱・梁のスリム化

建築物のコンクリート工事は,“ JASS5 ” という仕様書に基づいて運営されます。
同仕様書では,設計基準強度36N/㎜2を超えるコンクリートを 『 高強度 』 として定義しています。   http://t-ohshita.com/2005/04/20050403-1200.html

コンクリート強度は,水とセメントの質量割合に左右されますが,高い強度を得るためには,水に対してセメント量を多くします(W/Cを小さくします)。

セメントは水と出会うと,発熱を伴う化学変化(水和反応)を起こして硬化します。高い強度は,セメント量を多くすると得られるわけですから,高強度のコンクリートになるほど発熱量は大きくなります。

ここからは,学説の説明です。
高強度コンクリートを使用した部材は,初期にセメント水和熱で高温状態となり,構造体コンクリートに影響を及ぼすといわれています。

復習しますが,一般に建築物の構造体コンクリートは,工事現場で採取したコンクリートで作製した供試体を工事現場内の水槽で養生(現場水中養生)してその圧縮強度で評価します。

これは,対象となる建物の構造体コンクリート強度が,置かれた環境の影響を受けることを考慮したためです。

ところが,“ JASS5 ” は,こう主張しています。
『 高強度コンクリートを打設した部材は,環境の影響に加えて,部材自身の初期温度(セメントの水和発熱)を考慮する必要があるため,現場水中養生をしても構造体の評価はできないぞ 』

例えば,夏期に普通セメントを使った水セメント比30%程度のコンクリートで柱を打設すると,柱内部は,100℃近くまで上昇します。

つまり,柱内部は水が沸騰するくらいの温度になるわけです。
この影響を考慮しない限り,構造体コンクリートの評価はできません。

もっとも,造った柱からコアを採取し,コア強度を測れば構造体の評価は可能です。
しかし,対象の柱を一部破壊することになります。

一方,高強度コンクリートは,コア採取箇所を補修する適当な補修材がないとも言われています。
従って,JASS5では,高強度コンクリートは標準水中養生強度で構造体を評価しようと考えました。
つまり,設計基準強度36N/㎜2を超えるコンクリートを使用する場合,生コン工場の実機ミキサでコンクリートを練混ぜ1×1×1mの模擬柱を作成し,標準水中養生28日の供試体強度と,打設後91日に模擬柱から採取したコア強度の差を把握して調合設計を行います。

普通セメントを使用する場合,28日標準水中養生強度と91日コア強度を比較すると,前者のほうが大きくなります。
水セメント比30%程度の普通セメントを使ったコンクリートの夏期の28日標準水中養生強度と91日コア強度の差は,使用する骨材や練混ぜ条件等の影響を受けますが,9~13 N/㎜程度であるといわれています。

高強度コンクリートの調合は,この28日標準水中養生強度と91日コア強度の差をS値と称して,調合強度に上乗せして設計します(以下参照)。

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コンクリートの調合強度は、標準水中養生した供試体の材齢28日における圧縮強度で表すものとし、次の式①及び式②を満足するように定める。

   mF ≧Fc +mSn+2σ       〔mF≧Fr+2σ〕          ・・・ 式 ①

   mF ≧0.9(Fc+mSn)+3σ    〔mF≧0.9Fr+3σ〕      ・・・ 式 ②

 ここに、 mF: 材齢m日におけるコンクリートの調合強度(N/)

     mSn: 標準養生材齢m日における圧縮強度と構造体コンクリート

                    の圧縮強度の材齢n日における推定値との差(N/)

        Fc: 圧縮強度の基準値(設計基準強度)

        σ : 標準偏差(N/)

        Fr: 指定強度(N/)

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まとめると,建築物に使用するコンクリートは,構造体コンクリート強度を保証しなければなりません。

構造体コンクリート強度は,一般のコンクリートについては,28日現場水中養生した供試体で評価し,高強度コンクリートの場合は,28日標準水中養生を行った供試体で評価します。

ただし,一般のコンクリートと高強度コンクリートは調合設計が異なります。

   本当にコンクリートの強度は難しいですね。           - ベトン・ボンド -
 
あっ そうそう!
昨年,JISA1111「骨材の表面水率測定方法」が改正され,容積法の場合は,目盛を0.5ml まで読むこととなりました。
ところが,0.5ml まで読めるチャップマンフラスコは存在していませんでしたが,関西機器社が開発した模様ですので購入しておく必要があります。

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